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ワクチン技術の共有、やらないのかできないのか…米政府は様子見

登録:2021-04-29 03:19 修正:2021-04-29 08:42
ホワイトハウス「コロナワクチンの特許停止を考慮…決定はまだ」 
30日、WTO会議で停止を論議…インドなどが提案 
製薬会社の反発とワクチン開発過程の条項がネック 
「米政府が所有するワクチン特許を使用すべき」の声
27日、米カリフォルニア州ロサンゼルスで、1人の女性がコロナワクチン接種会場の周辺を通り過ぎている=ロサンゼルス/AFP・聯合ニュース

 新型コロナウイルスワクチンの製造と生産を全世界で共有しようという要求について、米国は様子見の状態だ。

 米ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は27日(現地時間)、コロナワクチンの全世界での生産と供給を最も安く最大化する方策の考慮には、ワクチンの知的財産権停止も含まれるとしつつも、まだ決まっていないと述べた。サキ報道官は「それを行うには多くの別の方法もある」とし「現在、知的財産権停止はその方策の一つだが、我々は何が最も適切なのかを評価しなければならない」と述べた。サキ報道官また、米国の官僚たちが米国においてワクチンの既存の製造を促進した方が効果的かどうかも研究している、と付け加えた。

 米国のこのような姿勢は、全世界レベルの人命がかかっている緊急事態の解決において指導力を確保しなければならないとの計算もあるが、製薬会社の反発やワクチン開発過程で結んだ契約条件などの現実的制約も原因となっている。

 ひとまず米政府は、この問題に前向きな態度を示している。通商代表部のキャサリン・タイ代表は前日、ファイザーとアストラゼネカの役員との会合で、ワクチンの生産や配給における重大な格差の是正に向け、開発途上国に役割を与える解決策に関心を持っている、と述べている。タイ代表は、医薬品へのアクセスにおける先進国と開発途上国の格差は「全く受け入れられない」とし、医薬産業が危機の時代には犠牲になる必要があると述べた。

 これは国内外で高まっている圧力によるものだ。米国の複数の議員と非営利団体がワクチンの特許の一時停止をバイデン政権に働きかけている。インドと南アフリカはすでに昨年10月、開発途上国がコロナワクチンを生産できるように製薬会社の知的財産権を停止しようとの提案を世界貿易機関(WTO)に行い、100以上の国の支持を得ている。しかし、米国などの先進国は交渉を阻止している。WTOは30日に関連会議を開き、この問題を論議する。

 国際製薬団体連合会は昨年末の声明で、知的財産権を弱めることは危険で反生産的だとして反対の意を示した。製薬会社などは、知的財産権の停止はワクチンの安全性を落とすうえ、新たな場所にワクチンの生産施設を建てることは、既存の生産場所での生産促進に必要な資源を奪うことになると主張する。

 米政府はひとまず、自国の生産能力拡大に焦点を絞り、余剰ワクチンを他国に援助する方策を模索してきた。しかしこれさえも、ワクチン開発の過程で結んだ契約条件が障害となっている。「ヴァニティ・フェア」の報道によると、ドナルド・トランプ政権時代に米政府と製薬会社が共同で参加したワクチン開発計画である「オペレーション・ワープ・スピード(超高速作戦)」の契約には、「政府はこの計画に則り提供されるいかなる製品や物質の使用と許可も、米国の外では使用できない」との条件がある。つまり、米国政府が余剰ワクチンを売ったり供与したりすることを禁止する条項だ。このため、バイデン政権は今年3月18日に発表したメキシコとカナダへの4億回分のアストラゼネカのワクチンの供給も「貸与」のかたちで行い、契約条件違反を免れた。

 だが、米政府の資金と技術が投入されて開発されたワクチンの使用において、米政府の態度は消極的だとの批判も激しい。モデルナとファイザーのワクチン開発に使われた主要な技術を開発した米国立衛生研究所の科学者バーニー・グレアム氏は「フィナンシャル・タイムズ」に対し、「政府の研究所から出たすべてのものは非排他的な使用契約なので、その使用がある特定の会社によって妨げられることはない」と述べ、コロナワクチンで米国政府が保有する特許を利用するよう求めた。

 グレアム氏をはじめとする専門家によると、コロナウイルスのスパイクタンパク質をワクチンで安定化させる技術に関する、いわゆる「070特許」は、国立衛生研究所のワクチン研究センターが開発したものだ。モデルナとファイザーのmRNA方式のワクチン技術において中核となるこの特許の使用料を、米政府はモデルナに要求していない。米政府がこの特許を使用しないのは、おそらく関連する製薬会社に協力を求めるための道徳的カードとして使うつもりのようだと、同紙は専門家たちの話として伝えた。

 現在、ワクチン接種は、先進国の国民は4人に1人が受けたのに対し、開発途上国の国民は500人に1人も受けていない。こうした傾向が続けば、開発途上国のワクチン接種は2024年まで延びるだろうとCNBCは報じている。「ニューヨーク・タイムズ」は24日、「世界にはさらに多くのコロナワクチンが必要だ」と題する長文の社説で「世界人口の16%を占める富裕国が、販売されたすべてのワクチンの53%を占めている」と述べ、米政府の積極的な措置を求めている。また、米国内で特許を停止してワクチン技術と資源を共有し、より多くの生産能力を構築し、より安くて便利なワクチンの開発に再び国家資源を投入すべきだと述べている。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/993021.html韓国語原文入力:2021-04-28 16:21
訳D.K

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