来週中にアストラゼネカ製コロナウイルスワクチンの接種を受けることになっている60~74歳の高齢層の一部は、ワクチン不足のため接種が延期されることが予想される。ワクチン接種の予約件数が現在の備蓄量より多いためだ。防疫当局は「絞り出す注射器」で得られる残余ワクチンを活用するほか、事前予約者が同意すればジョンソン・エンド・ジョンソン社(同社の医薬品部門のヤンセンファーマ)製の残余ワクチンも動員することを決めた。高齢層の接種の締切日である19日まではこのように接種を実施するものの、未接種者が発生すれば6月末か7月初めへと接種を延期する方針だ。
アストラゼネカのワクチンを接種するソウルのある受託医療機関は9日に「来週(14~19日)のアストラゼネカのワクチン接種の事前予約者は1783人だが、今週病院に配送されてきたワクチンの量は87バイアル(瓶)」と明かした。1バイアルはもともとは10人分だが、いわゆる「絞り出す注射器」と呼ばれる最小残留型(LDS)注射器を用いれば11~12人まで接種が可能となる。この医療機関は、来週の平日と土曜日に予約を入れている1783人の半分にも満たない870人分しか受け取っていないことになり、87~174人分ほどが得られる残余ワクチンを活用するとしても、接種可能な人数は最大で1044人だ。残りの739人には延期を通知しなければならないということだ。
この医療機関の説明によれば、これまでコロナワクチンは1週間分の接種量が1週間前に病院に配送されてくるのが一般的だった。しかし今月7日に管轄の保健所が「ワクチンが不足している。しかし、今後さらに物量が来る可能性があるので、ひとまず配送された物量で接種を実施するように」と伝えてきたという。
ソウルの別の医療機関も、今月8日に保健所から「現在、量に余裕がないため、ワクチンの追加供給は難しい」との通知を受けた。この医療機関の関係者は「9~11日に予約を入れている74人の接種に7バイアル使用すれば、ワクチンが底をつく」とし「来週の60人あまりの予約者に接種するワクチンは、現在のところない」と述べた。
これは、接種の初期とは異なり、アストラゼネカのワクチンの予約率が高くなったことで発生したものだ。防疫当局も、高齢層の予約を締め切った時点で、このような状況を概ね見込んでいた。コロナ予防接種対応推進団は、60~74歳の予約率が80%を超えた4日に、4~19日の約552万人の予約者に対し、残りのアストラゼネカのワクチンの量は約501万回分だと明かしている。手もとにあるワクチンの量に対する超過予約が50万件に達していたことになる。これに加え、障害者・高齢者訪問・報勲人材の介護従事者、社会必須人材など追加で1次接種を実施しなければならない人も、少なくとも13万人にのぼるとともに、療養病院・施設従事者などの2次接種も同時に進めなければならない。前日だけで、療養病院・施設関係者の2次接種は1万件以上行われている。アストラゼネカのワクチンはCOVAXから6月中にさらに83万5000回分を受け取ることになっているが、日程ははっきりしていない。
これについて韓国政府は、LDS注射器を用いて10~20%が追加で得られるアストラゼネカのワクチンを活用することに加え、10日に予備役などに対する接種が始まるジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンにも残余が生じれば、ワクチンの種類が変わることになっても事前予約需要を満たしていく方針だ。しかし当面は需給不均衡が発生しうるため、一部の予約者は6月中に接種が受けられない可能性もある。コロナ予防接種対応推進団のホン・ジョンイク予防接種管理チーム長はこの日のブリーフィングで「50万回分の差は、LDS注射器の使用によって残余量が生じる可能性があるため、十分に埋められる」とし「残余ワクチンで解消できなければ、地域ごとに保健所が保有しているワクチンを迅速に補充する作業もしつつ、予約者にできる限り接種する」と説明した。
政府は、高齢層の未接種者が発生した場合は、来週中に新たな接種日程を通知する計画だ。ホン・チーム長は「すべての医療機関の残余量が予約者に回らない可能性があるため、接種を受けられなかった方には別途案内し、日程も迅速に決める」と述べた。医療機関が未接種者の接種日程を個別に取り消す必要はない。接種していない人の接種日程は6月末か7月初めとなると予想される。
しかし接種現場では、このような混乱による不満が医療機関に向けられることを懸念している。ある病院関係者は「1日数百人を接種するだけでも手いっぱいなのに、残余ワクチンが発生する度に事前予約者の日程を繰り上げ、いちいち今来られるか聞かなければならない」とし「(疾病管理庁の)指針が気まぐれに変わることで発生する抗議は、病院がすべて引き受けている状態だ」と批判した。