「自由の機会は世代ごとに比例して分かち合われなければならない。温室効果ガス削減の負担は、未来世代に一方的に移転されてはならない」
ドイツ連邦憲法裁判所は29日(現地時間)、ドイツの気候変動法の一部を違憲とする決定を下した。2030年以降の温室効果ガス削減に関する内容が十分でないとして、これを「未来世代の基本権侵害」と判断したのだ。この判決は、ドイツの環境保護団体ブント(BUND)、未来のための金曜日、グリーンピースなどが起こした違憲訴訟で下された。彼らの主張は、韓国政府の不十分な気候変動対策を問題視して違憲訴訟を起こした韓国の青少年の主張に似ている。国際的に判例が少ない中、今回のドイツ連邦憲法裁判所の決定は、韓国の憲法裁判所の判断にも影響を及ぼし得ると評価される。
ドイツの気候変動法は、国の温室効果ガス排出量を2030年までに1990年に比べ55%削減し、この目標に合わせて各部門に年間排出量を割り当てることを規定している。これについてドイツ憲法裁は「(2050年の)カーボン・ニュートラル(炭素中立)を達成するには不十分。パリ協定で定められた気候変動抑制目標を達成するには、2030年以降に、より急激に温室効果ガスを削減しなければならなくなる」と判断した。そしてドイツ連邦議会に「2030年以降の温室ガス削減をどうするのかを具体化した条項を、年末までに用意せよ」と注文した。
ドイツ憲法裁は今回の決定文で「基本法(ドイツ憲法)は、現世代が生命の自然的基礎を慎重に扱い、後の世代がそれを保存できない状況に置かれないようにしている」と述べた。憲法裁は説明資料で、「人間の生活のほとんどの側面が温室効果ガスの排出を含むため、排出量を減らすことはあらゆるタイプの自由に影響を与える。削減の負担を2030年以降に先送りすることは、若い世代の自由を侵害するもの」と述べた。2050年にカーボン・ニュートラルに到達するには、現在の2030年までの削減目標が低すぎるため、2030年以降の未来世代の負担が重くなり得るとの判断だ。
訴訟を起こしたドイツの環境団体と法律専門家たちは「これまでのドイツの気候訴訟で前例のない歴史的判決だ。今回の判決は、気候変動への対応行動を大きく強化させるだろう」と歓迎した。未来のための金曜日の活動家としてこの訴訟に参加したルイザ・ノイアーバウアー氏は英国「ガーディアン」などの外国メディアに「想像できないほど、多くの人々にとってすばらしい日」と述べた。弁護団からは「憲法裁がドイツ政府の横っ面をぴしゃりとはたいた」という評価が出た。
韓国の専門家の間でも、これまでの国外の気候関連の判決と比べて前進していると評価されている。オランダとアイルランドの最高裁判所、フランスの裁判所など、世界の主要国の司法機関は、気候変動は政治と政策の領域ではなく国民の基本権侵害にかかわる司法の領域であるとのコンセンサスを形成してきた。今回のドイツ憲法裁の判決は、国が現在の世代と未来の世代を気候変動から同様に保護できなければ基本権の侵害となることを認めたことが、特に新しい。
そのため、今回の判決が韓国の気候訴訟にどのように影響するかも注目される。現在の世代が温室効果ガスを十分に減らさないことは未来世代の基本権の侵害となり得ると指摘したドイツ連邦憲法裁の論理は、昨年3月に同様の理由で訴訟を起こした韓国の青少年たちに前向きなシグナルとして受け止められている。青少年の法律代理人を務める気候ソリューションのユン・セジョン理事(弁護士)は「2050年カーボン・ニュートラルを宣言していながら、2030年の国の温室ガス削減目標を上げない韓国の状況は、ドイツと似ている。削減目標という具体的領域で憲法的審査を行ったということが、最も大きな進展」と評価した。青少年たちと韓国政府からそれぞれ意見書の提出を受けた憲法裁判所は、国内外の研究資料を収集するなど、審理を進めている。