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[寄稿]信頼ではなく不信感招いた日本政府のトリチウム「キャラ化」

登録:2021-04-21 07:55 修正:2021-04-21 10:05
オ・チョルウㅣソウル科学技術大学講師(科学技術学)

 日本政府が福島第一原発汚染水の海洋放出を決定する際に公開した広報動画とチラシには、放射性物質のトリチウムがいわゆる“ゆるキャラ”化されて登場する。親しみやすく天真爛漫にさえ見える。放出する水に含まれるトリチウムの安全性を強調するために考えられたのだろう。しかし、海洋放出に対する多くの人の不安を考えれば、そのかわいらしさは別世界から舞い降りた超現実的な存在のような印象を与える。

 日本政府と東京電力は汚染水を浄化処理したいわゆる「処理水」の安全性を再三強調してきた。東京電力が運営する「処理水ポータルサイト」のQ&Aコーナーでは、処理水が「複数の設備で放射性物質の濃度を低減する浄化処理を行い、リスク低減を行った上で、敷地内のタンクに保管している」ものとして説明されている。海に放出される水はもはや「汚染水」ではなく、浄化された水「処理水」になる。

 「人体と環境に被害を及ぼさない」いわゆる処理水は、62種の放射性物質を化学的・物理的方法で沈殿・吸着・ろ過する「ALPS」という多核種除去設備による浄化を経たものだ。ALPS処理の前と後を示す説明資料によると、悩みの種だった汚染水がきれいな処理水に変身する。トリチウムのキャラクターは、このように処理された水の安全性を最終的に保証する象徴といえる。

 日本政府は国際法と慣行に添った決定であることを強調し、また「海洋汚染を招くことがないよう万全を期す」と重ねて約束した。しかし、その約束された未来は我々に信頼感を与えることなく、現在の状況に対する様々な疑問を抱かせる。

 処理水が本当に安全なら、陸上処理方法はなぜ排除されており、その判断はどれほど真剣に行われたのか。ALPSの性能は誰がいかにして検証するのか。原子力と医学・海洋生態系の専門家の声はバランスよく反映されたのか。人体と環境への影響の評価はいかなるものか。まだ疑問は残る。科学技術の解決策には大小の不確実性を伴う問題が付き物だ。それらは何であり、どうやって扱われたのか。東京電力と駐韓日本大使館サイトの資料を見ても、具体的な証拠やデータ、情報がなかなか見当たらない。

 昨年11月、「ネイチャー」に「エビデンス(に基づく)コミュニケーション」という新しいコミュニケーション方法を提案する論文(「Five rules for evidence communication」)が掲載された。不信と論争の中で危険状況を管理する疎通をする際、「保証されていない確実性や出来すぎた話、偏った発表は避けるべき。説得するよりも情報提供に努めるべき」ということだ。不確実性に関する情報も必要である。信頼はこのように透明な証拠とデータのうえに蓄積される。

 トリチウムの“ゆるキャラ化”に対する批判が高まったことを受け、日本政府は翌日、それが登場する動画やチラシの公開を休止した。私たちには、安全であるはずという宣言や広報のための科学でなく、実質的証拠とデータを透明に示すことで、人々に安心感を与える責任ある科学が必要だ。

//ハンギョレ新聞社
オ・チョルウㅣソウル科学技術大学講師 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/991799.html韓国語原文入力:2021-04-21 02:36
訳H.J

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