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韓国は米国から新型コロナワクチンを借りられるか

登録:2021-04-21 06:08 修正:2021-04-21 16:04
チョン外交部長官、国会懸案質疑で 
「米国と協議…今のところは容易ではない」
チョン・ウィヨン外交部長官が今月20日午前、国会で開かれた外交統一委員会全体会議で質疑に答えている/聯合ニュース

 チョン・ウィヨン外交部長官が米国といわゆる「ワクチンスワップ」について「真剣に協議している」と述べ、これを通じたワクチン受給の可能性に加え、韓国政府のワクチン外交に関心が集まっている。

 20日の国会で取り上げられた「ワクチンスワップ(Vaccine Swap)」は、新型コロナワクチンの受給で困難を抱えている韓国が米国から不足分のワクチンを支援してもらい、後で返済する形だ。これに先立ち、野党「国民の力」のパク・ジン議員も「韓国が米国でワクチンまたはワクチン原料の緊急支援を受け、その後韓国製薬会社でワクチンを生産して米国に返す」という構想を提案したことがあるが、現在政府が検討している内容はより包括的だという。政府は昨年、パク議員の提案を検討した結果、実現の可能性がないと判断したという。世界的にワクチンが不足していた時だった。

 政府側の取材内容を総合すると、政府のアプローチが変わり始めたのは、5月ごろに米国がある程度ワクチン供給を増やすだろうという見通しが示されてからだ。バイデン政権は3月初めに「5月から成人の誰でもワクチン接種を受けられるようにする」という方針を明らかにした後、4月初めには「5月末までに米国成人の大半が1回目のワクチン接種を完了する」計画を明らかにした。19日(現地時間)現在、米国疾病対策センター(CDC)は、米国の成人1億3230万人が新型コロナワクチンを1回以上接種したと集計しているが、これは米国の成人の半数以上に当たる数値だ。しかも米国が確保した新型コロナワクチンは合わせて12億ドーズ(7億5千万人分)で、米国成人2億6千万人分の3倍を上回る。

 政府がワクチンスワップをより積極的に検討し始めたほかの理由としては、アストラゼネカやモデルナ、ファイザーなど新型コロナワクチンの有効期間が6個月という点に加え、米国が余ったワクチンを廃棄処分することはないだろうという期待もあったという。政府当局者は「ワクチン開発会社と契約を結ぶ際、他国への譲渡を防ぐ条項がある。余ったからと言って他国に渡すわけにはいかず、全量廃棄処分しなければならない」と説明した。ところが、バイデン政権が3月、自国では使用許可が出ていないアストラゼネカなどワクチン400万ドーズをメキシコとカナダに貸すことにした事実が確認された。ワクチン開発会社が定めた「廃棄」条項を米政府が解除する役割を果たしたのだ。これを受け、政府も今年3月にアントニー・ブリンケン米国務長官が韓国を訪れた時と、今月17~18日にジョン・ケリー大統領特使(気候変動問題担当)が訪韓した時に、それぞれワクチン供給における協力を打診したという。米ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は先月18日のブリーフィングで、米政府は「譲渡可能なアストラゼネカ製」のワクチン「700万ドーズ」を保有しており、「モデルナやファイザーなど」のワクチンも「追加分」を持っていると明らかにした。さらに、欧州やアジアなどともワクチン需給と関連した議論を続けていると伝えた。政府当局者は「韓国も、ワクチン自体が不足しているというよりは早く確保する必要があるため、まずは米国のワクチンを借りて、後から入ってくる韓国側のワクチンで返せばいい」と述べた。

 肯定的な兆しにもかかわらず、チョン長官の国会外交統一委員会の発言で確認された米国側の反応は芳しくないようだ。

 チョン長官は「米国も今年の夏までにはいわゆる集団免疫に必ず成功させるという意志が非常に強く、そのためには現在確保しているワクチンの量にもそれほど余裕があるわけではないと説明した」とし、「その後(集団免疫形成後)は(韓国への供給を)優先的に検討できるが、現段階では容易ではないという立場を伝えてきた」と述べた。新型コロナワクチン需給に対する韓国政府の協力要請に「現段階では難しい」という立場を明らかにしたのだ。米国が今夏の集団免疫の形成を目標にワクチン原料および関連装備の輸出統制を緩めていない点や、ワクチンの効果を高めるためにワクチンを追加接種する「ブースターショット」接種の可能性が提起された状況などが米国側の反応を裏付けている。「ブースターショット」の必要性についての判断は、晩夏から初秋ごろに行われるとされ、当分、米国を通じたワクチン協力は難しいかもしれない。こうした脈絡から、韓国政府だけでなく、多くの国々が半年以降の状況を見据え、一方では“ワクチン自立”計画をめぐり相互協力も模索しているという。

 ひとまず政府は個別製薬会社と追加分を導入するための協議とともに、今年5月の韓米首脳会談を契機にワクチン協力の成果を出せるよう、外交力を集中するものと見られる。チョン長官は「(かつて)米国の要請により、診断キットとマスクの国内需要が逼迫していた状況にもかかわらずかなりの量を送った。そうした事実もわれわれが米国に指摘している」とし、「韓米首脳会談開催前までもっと肯定的な結果が出るよう最大限努力する」と述べた。「困った時の友こそ真の友(a friend in need is a friend indeed)」というチョン長官の言葉通り、ワクチンをめぐり韓米間の“友愛”が現実化するかどうかは不透明だ。

キム・ジウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/991853.html韓国語原文入力:2021-04-2020:00
訳H.J

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