福島第一原発事故で生じた放射性物質を含む汚染水を希釈して海に放出するという日本政府の決定に、隣国である韓国、中国、ロシアをはじめ、台湾、太平洋の16の島しょ国、国連の専門家らの懸念の表明が相次いでいる。一方、この問題に決定的な影響を及ぼしうる国際原子力機関(IAEA)と米国は事実上、日本の決定を支持する立場を明らかにしているほか、多くの国は傍観している。
韓国政府は、日本が汚染水の放出を決定した当日の13日、真っ先に強い反対の立場を明らかにした。韓国政府の立場は、19日の国会の対政府質問でのチョン・ウィヨン外交部長官の発言から再確認できる。チョン長官は汚染水の放出に関して、日本政府に対し、十分な科学的根拠の提示▽韓国政府との事前の十分な協議▽IAEAによる検証過程への韓国の専門家の参加の保障の3つを要求していると明かした。この3つの条件が整えられ、汚染水の放出がIAEAの定めた国際基準に適合するなら「あえて反対することではないと思う」と付け加えた。現在のところは提供された情報が不十分で、汚染水の安全性を判断する根拠がないため反対しているということだ。
韓国とともに日本の汚染水放出決定に強く反発しているのは中国だ。中国外交部は、日本が汚染水の放出決定を発表した13日に「談話文」を発表し、「(日本は)一方的に汚染水処理を決定した」とし、「極めて無責任で、国際健康安全と周辺国の国民の利益に深刻な損害を与える」と批判した。外交部の趙立堅報道官は、日本による汚染水放出決定について「国際安全基準に則ったもの」との立場を示した米国も批判した。
ロシア外務省も13日(現地時間)、マリア・ザハロワ報道官名義の論評で「日本が提供した公式情報は不十分だ」とし「深刻な憂慮」を表明した。
台湾政府は、より具体的な対応方針を明らかにした。15日の「自由時報」などによると、行政院農業委員会の陳吉仲主任(長官)は「日本の放出した『核廃水』の影響を実際に台湾の漁業が受けたら、日本政府を相手取って求償権を行使する」と述べた。陳主任は、汚染水が放出されれば、損害額は影響圏にある25の魚種で年間140億台湾ドル(約5500億ウォン、約533億円)に達すると説明した。
太平洋諸島フォーラム(PIF)の16カ国の加盟国も日本の汚染水放出発表の直後、「深い懸念」を表明する声明を発表した。メグ・テイラー事務局長は「日本政府が太平洋諸島フォーラムの加盟国と追加協議を行い、加盟国すべてが満足できる独立の専門家による検討が行われるまで、多核種除去設備(ALPS)の処理水の排出行為を保留することを緊急に求める」と述べた。日本の周辺国を中心として憂慮が示されてはいるものの、まだ個々の国または地域レベルの動きにとどまる。このほか、国連人権理事会(UNHRC)に所属する3人の特別報告者も、15日(現地時間)に「多くの人の命と環境全般に及ぼす影響についての警告を考慮すると、日本政府の決定は非常に憂慮される」との声明を発表している。
一方、日本による汚染水の放出過程を検証することになるIAEAは「日本の発表を歓迎」した。IAEAのラファエル・グロッシー事務局長は13日(現地時間)の声明で「IAEAはこの計画の安全かつ透明な履行を追跡観察し、確認する技術的支援を提供する準備ができている」、「日本が選択した水の処理方法は技術的にも実現可能で、国際的慣行に則ったものでもある」と述べている。この声明では、放射性物質に汚染された水ではなく「処理水(treated water)」、「制御された水(controlled water)」、「水(water)」という用語が使われている。
米国のジョー・バイデン政権も、「処理水」という表現を使いつつ、日本政府がIAEAと緊密に協議することを「確信」している。韓国政府の協力要請に対しては、介入する意思はないということも米国は明確にしている。「処理水」とは、「汚染水」をALPSで浄化すれば、トリチウム(三重水素)などを除く放射性物質は除去されるという理由で日本政府が使用している用語だ。米国の立場について、チョン長官はこの日、「日本政府による原発汚染水の放出問題はIAEAの適合性判定を受けなければならないという基本原則は、米国政府も韓国と同じだ」としつつも、「(日本の)放出決定後の米国の発表内容は政府と異なる部分が多いため、政府も様々なルートを通じて米国側に韓国の立場を確実に説明」していると述べた。
ドイツ政府は、汚染水の放出についての政府の立場をただす13日(現地時間)の質問に対し、17日に書面で回答し、「日本はドイツ環境省に対し、これについての説明のための対話を提案」してきたとし、「この機会を利用して、今後の進め方とありうる影響についてただす計画」と明かした。