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[寄稿]慰安婦判決、惜しまれる韓国裁判所の「強行規範」の適用論理

登録:2021-02-16 08:41 修正:2021-02-16 12:13
パク・ドンシル|元駐モロッコ大使・米国弁護士

 聞き慣れない国際法用語や法理もいまや国民たちの常識と教養になっている。1月8日、日本政府に慰安婦被害者への賠償責任を認めたソウル中央地裁の判決とともに、「主権免除」や国家の「主権的行為」や「強行規範」といった聞き慣れない言葉が国民たちにとって身近なものになった。

 主権免除の原則上、国家は主権的行為によって強制的に他国の法廷に立たされることはない。「主権的行為」とは、国家の主権的権限を行使する行為だ。国家だけが行える国有化措置、犯罪者処罰などの行為だ。しかし1月の判決で韓国裁判所は「日本の行為は主権的行為だとしても、反人道的犯罪行為として国際強行規範に反するものであるため、主権免除は適用できない」との判決を示した。裁判権を免除することになれば、人道に反する重犯罪を犯せないようにした国際協約に違反したにもかかわらず制裁できなくなり、それによって被害者は憲法に保障された裁判を受ける権利を剥奪され、権利が救済されなくなるからだという。

 つまり、判決は日本の行為をひとまず主権的行為と認め、しかし強行規範に反するため制裁が確保されなければならないという観点から、主権免除を適用できないという論理を説いた。しかし、強行規範の性質上、より一歩進んで強行規範に反する行為が主権的行為になり得るのか分析しなければならない。

 「強行規範」とは、すべての国家で構成される国際共同体によって承認された普遍国際法であり、離脱が許されない上位の絶対規範をいう。「離脱が許されない」とは、諸国家がその普遍国際法に違反するような合意をすることができないという意味である。強行規範に違反する合意はそもそも無効だ。つまり、すべての国家が自分の主権的権限を放棄して普遍国際法が形成され、また離脱が許されない強行規範として成立しているので、国家はこれに違反する主権的権限がないということだ。主権的権限がなければ主権的行為はできない。したがって、強行規範に反する行為が実際に行われたとすれば、その行為は存在しない権限を行使したものであり、主権的行為そのものになり得ない。奴隷貿易・奴隷制やジェノサイドのような反人道的犯罪行為、侵略行為などが強行規範違反であるということに異論はない。

 国家の主権的行為、すなわち合法化により実施された奴隷貿易・奴隷制がその後禁止され、その禁止は普遍国際法として形成され、また国家の禁止義務順守とそれに対する信頼から、離脱の許されない強行規範として成立した。つまり、国家は奴隷貿易・奴隷制を再び合法化できる主権的権限を持てなくなった。主権的権限がないため主権的行為は不可能だ。したがって、これらの行為を実際に行ったのであれば、存在しない権限を行使したものであるから、その行為は主権的行為となり得ない。主権的行為にはならないので、主権免除は適用されない。日本軍慰安婦制度も、本質的にこれと同じだ。

 国際司法裁判所は2012年の「フェリーニ事件」で強行規範と主権免除の関係を扱ったが、意味のある分析を出すことができなかった。イタリアは自国民を強制労働に処したドイツ軍の行為を主権的行為と認めながらも、強行規範の性格をもつ国際法に対する深刻な違反であるため、ドイツの主権免除は認められないと主張した。裁判所はまず、深刻な国際法違反行為が主権免除を排除するという明示的な国際法規則がなく、各国の実行もほとんどないという理由で、ドイツの主権免除を認めた。続いて裁判所は「強行規範は実体規則で、主権免除は手続き規則であるため、互いに衝突せず、強行規範違反によって主権免除は影響を受けない」と述べた。強行規範に違反した行為が主権的行為に当たるかどうかを明らかにし、二つの関係を分析しなければならなかった。国家の行為が主権的行為に当たるかを十分に分析しなかったという英米圏の学者たちの批判も上がっている。

//ハンギョレ新聞社

パク・ドンシル|元駐モロッコ大使・米国弁護士 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/983103.html韓国語原文入力:2021-02-16 04:59
訳C.M

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