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「フェイクニュースとの戦争」…過剰処罰の懸念を超える立法は可能か

登録:2021-02-05 01:44 修正:2021-02-05 06:56
共に民主党のノ・ウンネ議員(前列左から2人目)、ヤン・ギデ議員(前列左から3人目)らが昨年10月、国会疎通館で共に民主党メディア・言論共存TF発足の記者会見を行っている=共同取材写真団//ハンギョレ新聞社

 共に民主党が、悪意ある誤報とフェイクニュースによる被害を救済する「言論改革」法案の2月の臨時国会での処理を公言したことで、実効性ある対策を講じられるかに関心が集まっている。イ・ナギョン代表など指導部が強い意志を示しているため、法案処理を急ぐとみられるが、「表現の自由」の侵害と過剰処罰に対する懸念を超えることが課題となっている。

 イ代表は3日、「事実に基づかない悪意ある報道とフェイクニュースは、社会の混乱と不信を拡散させる反社会的犯罪」と強調しつつ、言論改革法案を2月の臨時国会で処理する考えを明らかにした。

 民主党がいわゆる「フェイクニュースとの戦争」を宣言して立法による対策に取り組むのは、今回が初めてではない。すでに2018年のイ・ヘチャン代表時代から、虚偽操作情報対策特別委員会(パク・クァンオン委員長)を設置し、各種法案を準備するとともに、党内に「フェイクニュース申告センター」を設置し運営している。しかし「フェイクニュース」を規定する段階から表現の自由を脅かすとの懸念に阻まれ、これといった進展は見られなかった。故意ではないメディアの「結果的誤報」と悪意を持った「フェイクニュース」を明確に区分することは容易でないということも影響を与えた。

 このためイ・ナギョン代表体制で発足した民主党メディアTF(タスクフォース)は、まず「実質的な被害の救済」に集中することへと方向性を定めた。メディアTF団長のノ・ウンネ民主党議員は4日、本紙の電話取材に対し、「フェイクニュースを取り締まる法案は、フェイクニュースの定義からして合意できていないため、時間がかかる」とし「2月の臨時国会は(ソウルと釜山の市長の)補欠選挙局面前の最後の立法機会であるだけに、一般市民の被害救済に焦点を絞る」と述べた。

 報道機関が訂正報道を行う際に、最初の報道と同じ時間、分量、扱いの大きさにするよう強制する言論仲裁法改正案(キム・ヨンホ議員による発議)、ポータルサイトのコメントによって心理的に重大な侵害を受けた際に、被害者がその掲示板の運営の中止を要請できるようにする情報通信網法案(ヤン・ギデ議員による発議)などが主な法案だ。波及力の強いオンライン記事に対して、言論仲裁委員会による調停の段階で被害者に「閲覧遮断請求権」を与える言論仲裁法改正案(シン・ヒョニョン議員による発議)も成立を目指す。いずれも報道による被害の救済を強化する内容となっている。

イ・ナギョン民主党代表(右)が4日の国会本会議で、裁判官弾劾訴追案の投票を前に、議員たちと言葉を交わしている/聯合ニュース

 しかし、民主党の言論改革法案をめぐっては、「表現の自由」の侵害、過剰処罰に対する懸念も提起されている。巨大メディアではないユーチューブのユーザーやオンライン上の書き込みの作成者に対する懲罰的な損害賠償制を導入し、処罰を強化する情報通信網法改正案(ユン・ヨンチャン議員による発議)が代表的だ。これは、インターネットの利用者が故意に虚偽・違法情報を生産・流通させ、他人に損害を与えた場合に、最大で損害額の3倍の懲罰的な損害賠償責任を負わせる内容が骨子となっている。

 国会科学技術情報放送通信委員会所属の首席専門委員は、昨年9月の検討報告書で、ユン議員の法案について過剰処罰の懸念を表明している。同検討報告書は「民法上の損害賠償制度や刑法上の刑事処罰制度と重なり、憲法上の過剰禁止原則に違反する素地がある」とし「すでに情報通信網法上の名誉毀損罪は、刑法に比べて加重処罰となっており、特に虚偽事実提示による名誉毀損は、他の違反行為と比べても重い処罰となっている」との意見を述べている。

 専門家も、現行法でも処罰が可能なのにもかかわらず、処罰の水準を高める別の法を作れば、表現の自由を萎縮させかねないと指摘する。報道機関ではなくオンラインユーザー個人の立場からは、「嘘」の情報をすべて判別するのは難しいことから、過剰処罰の懸念を払拭するための精巧な立法を求めている。

 淑明女子大学のホン・ソンス教授(法学)は「通常、懲罰的な損害賠償は、専門性を持つ企業や団体などに対して組織的な責任を問う際に使われてきた制度だ。個人に課すのに適した加重処罰なのか真剣に考える必要がある」とし「現行制度で規制されていない死角地帯がどこなのか、何を防ぐためなのかなど、議論が成熟しないまま法を作れば、実効性もなく法が管轄する領域ばかりが増えることになる」と述べた。

イ・ジヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/981884.html韓国語原文入力:2021-02-04 17:21
訳D.K

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