昨年の年頭記者会見以来、1年ぶりに記者団の質疑に応じた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、争点を避けず大方は明確な意見を明らかにした。以前とは変わった態度だ。このため、同日の会見は予定された100分をはるかに越えて2時間以上にわたって行われた。任期5年目に入り、これまで激しい軋轢で波紋を広げた問題についても、正面突破などで対立を増幅させるよりは、できるだけ溝を埋めようとするなど、調整者としての役割に努めようとする態度が明らかだった。しかし、文大統領は李明博(イ・ミョンバク)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)前大統領の赦免問題については「国家的に非常に不幸な事態」だとしながらも、「それでも今は(赦免を)取り上げる時期ではない」と述べ、当面の赦免については否定的な立場を示した。
文大統領は18日午前、大統領府春秋館で記者会見を開き、元・前大統領の赦免をはじめ、検察改革や新型コロナウイルスの防疫、不動産、南北関係など多様な懸案に対する考えを明らかにした。文大統領は最初の質問で受けた元・前大統領赦免から「国民が赦免に共感しなければ、統合の案にはなり得ない」とし、国民的共感が先だと答えた。文大統領は「かなり悩んだが、率直に私の考えを申し上げる」とし、「二人の前任大統領が収監されている事実は、国家的に非常に不幸な事態だ。それでも今は赦免を取り上げる時期ではない」と述べた。
ただし、文大統領は「前任大統領を支持した国民が今の状況に心を痛めている状況まで含め、赦免を通じて国民統合を成し遂げようという意見には十分耳を傾ける価値がある」としたうえで、「いつか適切な時期になれば多分もっと深く考慮しなければならない時が来ると思う」と付け加え、赦免の可能性を完全に排除しなかった。文大統領はその時期は退任前かという質問には「今後どうなるかは今はあらかじめ言うことはできない。国民の共感に基づかない一方的な赦免権の行使は難しい」と答え、国民世論を優先するという点を示唆した。
文大統領は赦免問題を除くほとんどの問題については、対立を和らげようとする姿勢を維持した。
これまで与党と対立してきたチェ・ジェヒョン監査院長とユン・ソクヨル検察総長に対しては、監査院の独立性と検察の中立性を強調し、なだめる線でまとめた。文大統領は月城(ウォルソン)原発早期閉鎖と関連した監査院の監査と、それに続く検察捜査について「政治的目的だとは思わない」と述べた。これと同じ脈絡で、与党に反旗を翻し「大統領選候補」に挙げられたユン総長について「私の評価を一言で申し上げると、彼は『文在寅政権の検察総長』だ」とし、「ユン総長が政治を念頭に置き、政治家になることを見据えていま検察総長の役目を果たしているとは思わない」と述べた。この1年半の間、大統領府と最も激しく対立したように見えるユン総長まで包容する形を取ったのだ。これによって、検察と監査院に対して非難の矛先を向けていた与党勢力の雰囲気が多少和らぐかも注目される。
文大統領はまた、防疫と不動産など国民生活問題に多くの時間を割いた。ワクチンについて無料接種の立場を改めて明らかにする一方、「副作用が発生した場合は十分に政府が補償することになる」とし、政府を信じて防疫と接種に協力するよう求めた。不動産問題については「投機防止に力点を置いたが、結局、不動産市場の安定化には成功しなかった」とし、新年の辞に続き、謙虚な態度を取った。「不動産問題には自信がある」と自信を示してきたこれまでの態度とはかなり異なる。さらに文大統領は「市場が予想する規模をはるかに上回る規模で住宅物量を増やす」と明らかにした。投機抑制基調は維持しながらも、供給を積極的に拡大するという方針を強調したのだ。
一方、文大統領は最近、慰安婦賠償判決でさらに悪化した韓日関係について「歴史問題は事案別に分離して解決策を講じなければならない」とし、「(判決の結果による)強制執行は、韓日両国間の関係において望ましくない」と述べ、破局を避けようとする姿勢を見せた。南北関係については北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記に「(非対面を含め)いつでもどこでも会う」と述べ、南北首脳会談に対する強い意欲を示した。