2021年の政治の行方には二度の分かれ道がある。上半期には4月7日にソウル市長、釜山市長の補欠選挙がある。下半期には9月の共に民主党大統領選候補の党内選挙と、11月の国民の力の大統領選候補の党内選挙がある。
これから4月7日までは「補欠選挙政局」、その後9月と11月までは「予備選挙政局」、その後は「大統領選政局」が展開されるだろう。
今回のソウル市長補欠選挙は、様々な面で2011年のソウル市長補欠選挙と似ている。与野党が入れ替わっただけだ。
第一に、与党の過ちにより行われる補欠選挙だということ。第二に、野党候補選出をめぐる政治状況が非常に複雑だということ。第三に、およそ1年後に大統領選挙があるということ。
2011年8月24日に行われたソウル市の給食無償化に関する住民投票では、投票率が33.3%に達しなかったことから、8月26日にオ・セフン市長が辞任した。補欠選挙の日程が10月26日に確定した。
ソウル大学融合科学技術大学院のアン・チョルス院長が出馬の意思を明らかにしたことで、彼の人気は跳ね上がった。ところがアン・チョルス院長は9月6日、希望製作所のパク・ウォンスン常任理事と会って出馬を放棄し、パク・ウォンスン理事の支持を宣言した。アン・チョルス院長をバックにパク・ウォンスン弁護士がリードし始めた。
民主党からはチョン・ジョンベ最高委員、パク・ヨンソン政策委議長、チュ・ミエ議員、シン・ゲリュン前議員の4人が立った。9月25日の党内予備選挙でパク・ヨンソン議員が候補に選ばれた。
パク・ウォンスン弁護士とパク・ヨンソン議員が両者とも出馬すれば、勝算はなかった。野党は候補の一本化を進めた。民主党のパク・ヨンソン候補、民主労働党のチェ・ギュヨプ候補、無所属のパク・ウォンスン候補が統合予備選挙を戦った。10月3日、パク・ウォンスン候補が野党統一候補に選出された。10月26日の選挙の結果、得票率はパク・ウォンスン候補が53.4%、ハンナラ党のナ・ギョンウォン候補が46.2%だった。
今度のソウル市長補欠選挙はどうなるだろうか。まず、国民の力は勝算が高いと見ているようだ。多くの人々が積極的に名乗りをあげているのがその証拠だ。
これまでに出馬の意思を明らかにしているのは、キム・グンシク党協委員長、キム・ソンドン前議員、パク・チュンヒ前松坡区長、オ・シンファン前議員、イ・ジョング前議員、イ・ヘフン前議員、チョ・ウンヒ元ソウル市政務副市長などだ。ナ・ギョンウォン前議員、オ・セフン元ソウル市長は、出馬するかどうか様子を見ている。
こうした中、国民の党のアン・チョルス代表が出馬宣言したことで、構図は大きく揺らいでいる。共に民主党を離党したクム・テソプ前議員も出馬の意思を明らかにしている。
いわゆる保守勢力は、2011年の民主党-民主労働党-市民社会団体の候補一本化方式を「ベンチマーキング」しようという考えのようだ。うまくいくだろうか。
アン・チョルス代表が国民の力に入党するかしないかが、まず整理されなければならない。そうでなければ党内予備選挙であれ、統合予備選挙であれ、予備選挙の規則を定めることができない。
しばらくは綱引きが続くだろう。2月12日の旧正月を挟んだ連休以降に、ようやく交通整理が実現する可能性もある。
共に民主党は構図が単純だ。ウ・サンホ議員が出馬の意思を明らかにし、パク・ヨンソン中小ベンチャー企業部長官、パク・ジュミン議員が出馬を検討している。旧正月の連休後に党内予備選挙を行う可能性が高い。開かれた民主党のキム・ジネ議員も出馬を宣言している。
政治を皮相的に見る人は、4月7日のソウル市長補欠選挙で勝利した方が、2022年3月9日の大統領選にも簡単に勝つという。しかしそうではない。韓国政治において11カ月という時間は非常に長い。それくらいあれば状況が2、3回はひっくり返る。
民主党は2011年の10・26ソウル市長補欠選挙で勝利したが、わずか6カ月後の2012年4・11第19代国会議員選挙で敗れた。14カ月後の12・19大統領選挙でも敗れた。
4月7日のソウル市長補欠選挙の結果は、直ちに後に続く各党の大統領選候補を選ぶ党内選挙政局に強い影響を及ぼすだろう。共に民主党は投票日の180日前までに、国民の力は投票日の120日前までに大統領選候補を選出することを党規約に定めている。
2017年の大統領選挙は朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾後、60日以内に次期大統領を選ばなければならない「ショートトラック」選挙だったが、今回は全く異なる。まさに長丁場だ。
共に民主党は、イ・ナギョン代表とイ・ジェミョン京畿道知事の二強対決だ。両者は次期大統領選候補の好感度調査で1位となったり、それを競ったりしている強力な候補だ。キム・ブギョム元長官、パク・ヨンジン議員ら、新たな候補が党内予備選挙に挑戦する可能性はあるが、2人に追いつくことは容易ではなさそうだ。
誰が勝つだろうか。終盤になれば「親文在寅(ムン・ジェイン)」対「非文在寅」論争ではなく、結局は大統領選挙の本選での競争力によって決着がつく可能性が高い。共に民主党の中心的な支持層も、政権が変わればどうなるかよく知っているからだ。
野党の大統領選候補は予測が不可能だ。ソウル市長補欠選挙の結果によっては、全く異なる状況が展開されるだろう。
ホン・ジュンピョ議員とユ・スンミン前議員は2017年に続いて再度挑戦するだろう。韓国の大統領選挙は「再挑戦者の方が強い」といわれている。党内予備選挙から数えれば、金泳三(キム・ヨンサム)大統領は3回、金大中(キム・デジュン)大統領は4回の挑戦の末に大統領に当選した。朴槿恵(パク・クネ)大統領と文在寅大統領も大統領選挙の再挑戦者だった。
国民の力ではウォン・ヒリョン済州道知事、オ・セフン元ソウル市長も党内選挙に出馬するだろう。
アン・チョルス代表は、どう出るだろうか。ソウル市長選挙の結果とは関係なしに、大統領選挙には出馬すると見られる。ソウル市長に当選すれば、その瞬間から彼は野党の有力な大統領選候補となる。失敗しても大統領選挙に再び出馬するだろう。
キム・ジョンイン委員長の可能性はないだろうか。ある。一言で言って、キム・ジョンインは消えた火ではない。ソウル市長補選で国民の力が勝利すれば、キム・ジョンイン委員長の可能性は大きく開かれる。彼が次期大統領を作る「キングメーカー」としての役割にとどまるのか、それとも自ら大統領選候補となる「最後の選択」をするのかは分からない。政治において不可能はない。
7月に退任するユン・ソクヨル検察総長は、常識的には出馬しないと見られている。しかし、検察総長の新年の辞を読むと、彼に政治への意欲がないと断定することも難しい。
検察総長が新型コロナウイルス感染症や国民生活経済を心配して「国民の検察」を強調したのは少々おかしなことだ。文在寅大統領が訴えた省察の痕跡は見当たらない。本当に恐ろしい人物だ。
各党の大統領選候補が決定する9~11月は、大統領選政局の始まりにすぎない。まさにその時から来年3月9日の大統領選挙まで、一度も経験したことのない新たな荒波が押し寄せるだろう。
韓国の政治家や党員は、自らが選んだ大統領選候補が敗れそうだったら、他の政党と候補の一本化を図ったり、集団離党して全く新しい政党を作ったりしてきた。1987年の大統領選挙から2017年の大統領選挙まで、毎回そうだった。2022年の大統領選挙でもそうなるだろう。終わるまでは終わっていないのだ。