今月17日からメディアアートの個展を開いている文在寅(ムン・ジェイン)大統領の息子ムン・ジュニョン氏(38)が、新型コロナウイルス感染症拡大により被害を受けた芸術家のためのソウル文化財団の公共支援金を受け取った事実をめぐり、政界では特別恩恵ではないかとの論議が起こっている。財団側は「公正な審査を通じての支援にすぎない」と一蹴し、ムン氏も「支援金は作家の収益ではなく作品の制作・展示に使われる資金」と反論した。
朝鮮日報は21日、ムン氏が今年4月にソウル市傘下のソウル文化財団に「新型コロナ被害緊急芸術支援」を申請し、個展準備の名目で最高額1400万ウォン(約132万円)の支援を受けていた事実が明らかになったと報道した。野党の国民の力は「貧しい芸術家のことを考えて申請しないということはできなかったのか。恥もなく」(キム・ミエ非常対策委員)、「ほかの作家に譲歩するのが正常だ」(キム・グンシク党協委員長)と非難した。これに先立つ20日には、展示そのものを批判し「この時局に模範を示してこそ国民も従うのではないか」という党の論評も出ている。
しかし、ハンギョレが財団側の資料を入手して確認した結果、「新型コロナ被害緊急芸術支援」は創作活動に限定される。急に取り消されたり、長期計画を立てていたものの中止された展示・事業の創作人件費と貸館料が主な支援対象だ。財団が公開したムン氏の申請書には「今年2~4月に予定されていたアジアホテルアートフェアと九龍浦芸術工場個展、ヨルダンメディアアートフェスティバルの3つの展示がキャンセルされたため、作品販売の機会が失われ、出品作の制作費用の回収が不可能になった」という理由が記載されている。ムン氏が申請した視覚芸術分野では281件が受け付けられ、4月末に46人(チーム)に6億561万ウォンが分配されている。作家1人当たりの支援金額は最低600万ウォン(約57万円)、最高1400万ウォンで、ムン氏など36人は最高金額を受け取り、来年2月末までに事業と精算の手続きを終えるスケジュールだった。
ソウル文化財団側は「申請作家の大半は、財団が通知した上限額に合わせて申請するため、選定されれば当然最高額を受け取ることになる」と明らかにした。審査委員として参加した評論家のA氏は「支援金を通じて事業を迅速に遂行できるかが、重点を置いた検討対象だった。財産、家族関係は審査基準に入っていない」と説明した。
ムン氏もこの日午後、自身のフェイスブックに書き込みをした。ムン氏は公共支援金の受け取りを非難する政界に向け「勘違いしているようだが、コロナ支援金は作家に収益として与えるお金ではなく、展示・作品制作に使用される金だ」とし「支援金は別途の通帳に入れて作家が手をつけられないようにしてあり、領収証のチェックも徹底的に行い、一部少額は作家の人件費として執行される」と反論した。
美術界内外では「政界が正当な過程を経て受けた支援まで非難するのは荒唐無稽だ」という反応も出ている。美術評論家であるパク・ヨンテク京畿大教授は「コロナ時局といっても多くの作家があちこちで情熱をかけて展示をしているのに、創作行為である展示自体をひっくるめて非難するなどもってのほかだ」と指摘した。8年ぶりに開かれたムン氏の個展は、ソウル中区会賢洞(チュング・フェヒョンドン)の錦山ギャラリーで23日まで行われる。AR(拡張現実)技術を活用したメディアアートの新作5点が公開されている。