「大韓民国の公職者として憲法精神と法治主義を守るために最善を尽くすことを約束する」
韓国の裁判所が1日、ユン・ソクヨル検察総長の職務復帰を決定した直後の午後5時13分ごろ、最高検察庁に姿を現したユン総長は、復帰の感想を尋ねる記者団に、このように語った。ユン総長は「このように業務に早く復帰できるよう迅速な決定を下してくれた司法府に感謝する」と述べた。職務排除から7日ぶりに業務に復帰したユン総長は直ちに、全国の検察職員あてに送った電子メールで、「検察が憲法の価値と政治的中立を守り、“公正かつ平等な刑事法執行”を通じて“国民の検察”になるよう、みんなで努力しよう」とし、「皆さんの正義に満ちた情熱の下支えになる」と述べた。ユン総長は同日夜、執務室で最高検察庁幹部たちからこの1週間の出来事について簡単に報告を受け、業務を再開した。
裁判所の決定でひとまず山場を越えたが、ユン総長が完全に危機を脱したわけではない。チュ・ミエ法務部長官を含む与党は、ユン総長に対する攻勢をさらに強化する構えだ。4日に延期された法務部検事懲戒委員会も、ユン総長にとってはもう一つの山場になると見られる。
ソウル行政裁判所行政4部(チョ・ミヨン裁判長)は同日、ユン総長がチュ・ミエ法務部長官に対して起こした職務執行停止命令に対する執行停止申立ての件で、ユン総長に軍配を上げた。当初、ユン総長側は「本案事件である職務執行停止処分の取り消し訴訟の判決が確定するまで、効力を停止してほしい」と申請したが、裁判所は本案事件の一審判決後、30日まで職務排除の効力を停止した。この日の裁判所の決定は、ユン総長への懲戒そのものが適法かどうかを判断したわけではない。「判事査察」疑惑など懲戒事由に対する判断は本案訴訟で行われる。
前日午前に開かれた審問で、法務部は「職務執行停止命令は(法務部検事懲戒委が開かれる)2日になれば、懲戒議決がどのようなものであれ効力を失い、ユン総長に回復しがたい損害を与える心配もなく、緊急な必要性もない」と強調したが、裁判所はこれを認めなかった。裁判所は「ユン総長は職務執行停止の間、検察総長としての職務をこれ以上遂行できなくなる」とし、職務排除でユン総長に「回復しがたい損害」が発生したと判断した。また、「職務執行停止命令の効果は、検察総長の職務遂行権限を完全に排除することで、事実上、解任・停職などの重い懲戒処分と同じ効果をもたらす」とし、緊急な執行停止の必要性も認めた。法務部の主張どおり懲戒処分が予定されていても、懲戒手続きが最終的にいつ終わるか予測し難い状況で、ユン総長の法的地位を不確定な状態に置くことはできないという判断だ。
検察総長に対する法務部長官の人事提請権と指揮・監督権については、「検察が独立性を強調しすぎると、自ら政治的中立性と公正性を失う危険性も排除できないため、検察に対する民主的統制装置としての意味を持つ」としながらも、「法務部長官の検察、特に検察総長に対する具体的な指揮・監督権の行使は、法秩序の守護と人権保護、民主的統制という目的を達成するために必要最小限にとどめる必要がある」と判断した。職務排除の権限がチュ長官の裁量だとしても、一定の限界を置いて例外的かつ厳格な要件によって行われなければならないという趣旨だ。さらに「職務執行停止が続いた場合、任期満了(2021年7月24日)までに職務から排除され、事実上解任するのと同じ結果に至る」とし、検察の独立性と政治的中立性を保障するために検察総長の任期を2年に定め二期を務めることを禁じた検察庁法の趣旨を強調した。
双方が激しく対立した職務排除事由についても、裁判所は「検察懲戒委の開催が予定されており、懲戒手続きで出席権や陳述権、特別弁護人選任権など防御権が保障されている」とし、「少なくとも職務排除は懲戒手続きで懲戒事由に関してユン総長に防御権が与えられるなどの手続きを経て十分審理された後に行われるのが妥当とみられる」と指摘した。裁判所の認容決定で懲戒手続きにブレーキがかかった法務部は、「十分な手続き上の権利と防御権保障のため」ユン総長の懲戒の件を議論する懲戒委を4日に延期することにした。法務部は「裁判所の決定は職務停止という臨時措置に関する判断に限定されたもので、決定を尊重し、今後の懲戒容疑の認定と懲戒量は、検事懲戒委で法と手続きに従い充実した審議を通じて行われる予定」と明らかにした。