#1.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最前線で8カ月にわたり勤務している疫学調査官のAさんは最近、高速道路を走っていたところ交通事故に遭った。3週連続で休みなしに働いた末に迎えた久しぶりの週末だった。Aさんは運転中も、自分が疫学調査を行った人たちのことが頭から離れなかったという。「私はあの感染者を接触者として分類したが、果たしてあの人が感染者である確率は何パーセントなのか」「私が帰した人が感染しない確率は何パーセントなのか」。このような考えが頭の中をぐるぐると回り続けた。「感染者の疫学調査を1日に5人ずつ行ったはずだから、あらゆる動線について気にかかる人もいれば、帰したのが間違いだったのではないかと思える人もいる。私のせいで、あの人は生計を断たれたのではないか、あらゆる考えが頭をめぐって、事故が起きたんです」
#2.
7カ月にわたり勤めている疫学調査官のBさんは、近ごろ自分がかなりシニカルになったと感じる。業務外の状況について、よく自嘲的になる。人と話す時、「疲れて見える」ともよく言われる。多くの人に疫学調査で接したことで、Bさんは人間不信がめっきり強くなったと言う。「感染者であれ濃厚接触者であれ、一般的な動線にいる人であれ、いくら話を聞いても客観的な証拠がなければ信じません。指針上そうなっているのではなく、ただ考え方がそういうふうに変わったんです。最近は少しピリピリしていると3回ほど言われたと思います」
コロナ拡散の長期化により、「感染症消防士」と呼ばれる疫学調査官の蓄積された疲労が極限に達し、10人に8人は情緒的消耗状態に陥っており、4人に1人は鬱憤の程度が「深刻」状態にあるという調査結果が出た。疫学調査官は感染症にかかった人を探し出し、動線を把握し、その原因を分析し、予防する役割を果たす。
ソウル大学保健大学院のユ・ミョンスン教授のチームが京畿道所属の疫学調査官20人に対しフォーカスグループインタビューを行った結果、コロナ禍で防疫の最前線に飛び込んだ疫学調査官たちが、深刻な過剰労働と、それによる感情の枯渇、冷笑、鬱憤状態に陥っていることが分かった。26日に同チームが発表した。今回の調査結果は、先月24日から今月7日までに計5回にわたって行われたインタビューをもとに導き出された。参加した疫学調査官の平均勤務期間は6.8カ月、最長勤務期間は9カ月だった。
調査の結果、疫学調査官たちは、感染者の増加期に1日の勤務が12時間以上にのぼったり、直近の1週間は帰宅時間が早朝4~5時だったり、午前7時に再び業務配置の連絡を受けたりといった、相当な超過勤務に苦しんでいた。コロナ対応勤務歴が10カ月になる疫学調査官Cさんは、インタビューで「今週を基準とすると、その日の内に眠ったことがない。いつも翌日の明け方まで働いてから眠りについた。今週いちばんの短時間勤務は昨夜で、12時に終わった」と語った。別の疫学調査官Dさんは「3カ月前から寝るたびに疫学調査をする夢を見る。しまいには、数日間休んだ時は最後の休みの日には何の夢も見ていないのに、翌日出勤して疫学調査をしたらその夜にまた疫学調査をする夢を見たこともある」と話した。
このような状況から疫学調査官たちはバーンアウトの初期症状を示していた。20人のインタビュー参加者のうち80%(16人)は感情枯渇の基準点である3.2点以上となる「情緒的消耗感」状態を示した。20人の感情枯渇の平均値は4.31点にもなった。また55%(11人)は冷笑の基準値である2.2点を上回っており、平均値は2.61点だった。また80%(16人)は個人的達成感の低下(4.0点以下)を示してもいた。
特にインタビュー参加者に対し「外傷後鬱憤障害(PTED)」の有無を調査したところ、彼らの鬱憤平均値は2.04点で「持続的鬱憤状態」であることが分かった。具体的には、鬱憤状態が「深刻な水準」(2.5点以上)だった回答者が25%(5人)、「持続的鬱憤」(1.6~2.5点)状態は45%(9人)だった。研究チームが以前に一般人を調査した際には、「深刻な水準」が10.7%、「持続的鬱憤」が32.8%だったのと比べると、疫学調査官の鬱憤状態はかなり深刻だった。
ユ・ミョンスン教授は「高強度超過勤務に比べ、疫学調査官に対する貧弱な社会的認識と経済的補償の問題は、彼らのバーンアウトと鬱憤が看過できない水準となった理由」だとし、「感染者が急増傾向を見せている今、現場の防疫人員の身体的疲労と精神的打撃を最小化する補完策なくして、積極的な疫学調査を通じた状況の好転を求めたり期待したりしてはならない」と述べた。