Q&Aでまとめたインフルエンザワクチンに関する疑問
死亡事例が増えた理由とは
19~21日、高齢者330万人が殺到
肌寒い気温による脳卒中などの頻度も高い
同一製造番号のワクチン56万人接種
「スカイセルフル」、それぞれ2人ずつ4人死亡
ワクチンに問題はないか
常温露出や白色粒子とは無関係
培養方式など原因の可能性低く
疾病庁「ワクチン自体の問題ではない」
それでもワクチンを接種すべきか
高齢層・基礎疾患持つ患者の接種は必須だが
肌寒い中、長時間待機は避けるべき
インフルエンザワクチンをめぐる不安と懸念が高まっている。22日には、同じ製造番号のワクチンを接種して死亡した事例まで発生した。これまで疾病管理庁は、ワクチンの接種による死亡が疑われる事例ごとにメーカーや製造番号、接種医療機関などが異なるため、「製品自体に問題がある可能性は低い」と説明してきた。製造番号は同じ条件で製造されたワクチン製品に与えられる固有の番号だ。インフルエンザワクチンをめぐる問題について、Q&Aの形式で疑問に答えてみた。
■インフルエンザの予防接種は中止すべき?
チョン・ウンギョン疾病管理庁長は22日に開かれた国会保健福祉委員会国政監査で「同じ製造番号のワクチンの接種を受けた死亡者がさらに出れば、該当する製造番号は封印し、接種を中止すると共に、食品医薬品安全処に再検証を要請する」と述べた。これまで確認された死亡者が接種したワクチンの製造番号はすべて異なっていた。しかし、同日夜、疾病管理庁が発表した25人の死亡者のうち、同じ製造番号のワクチンの接種を受けて死亡した事例が出てきた。11人目と22人目の死亡者は「スカイセルフル4ガ」の製造番号Q022048のワクチンを、13人目と15人目の死亡者は製造番号Q022049ワクチンの接種を受けた。Q022048ワクチンの接種を受けた人は約7万4千人にのぼる。
インフルエンザワクチンの接種を続けるかどうかは、当該ワクチンの安全性をどう判断するかにかかっている。同日午前0時現在で報告された死亡事例12件と同じ製造番号のワクチンの接種を受けた人は、約56万人にのぼる。このうち、異常反応があると届け出た人は20人以下で、いずれも軽症だと疾病庁は説明した。当該ワクチンのメーカーも5社で異なる。22日には輸入ワクチンの接種をうけて死亡した事例もあった。すべてのワクチン製品で死亡の疑いがあるケースが現れているわけだ。このため、「予防接種による死亡」の因果関係は弱いと疾病庁はみている。「予防接種には適正な時期があり、一定期間中止するのは困難」という点も考慮しなければならない。
■今年のワクチンが問題?
これに先立ち、ワクチンの流通過程で常温にさらされたり、白い沈殿物が検出されたワクチンなど106万ドーズが回収されたことで、インフルエンザワクチンに対する不安が高まったのは事実だ。しかし、予防接種による死亡が疑われる事例12件はこれとは無関係というのが疾病庁の説明だ。12件中3件は、国家予防接種物量の調達を担当したシンソン薬品が1次的に流通した分だが、常温にさらされた製品ではないという。残りは2次配送または有料接種向けのものだった。
同日の国政監査では「無菌状態の卵が問題ではなかったか」などの疑惑も取り上げられた。インフルエンザワクチンは、ほとんどが有精卵にウイルスを培養する方法で生産される。このため、卵アレルギーのある人は細胞培養方式で生産されたワクチンの接種が進められる。ところが、死亡者はこれら2種類のワクチンの接種を受けた人から共に発生した。培養方式の問題ではないわけだ。
■死亡者が増える理由とは?
インフルエンザワクチンに問題がなければ、どうして例年より多くの死亡事例が報告されているのだろうか。まず、短期間に接種希望者が殺到し、待機時間が長くなったことが高齢層の健康状態に影響を与えた可能性がある。今月19日から21日まで300万人を超える高齢者(満62歳以上)が予防接種を受けた。無料接種初日の19日だけで180万人が病院や保健所を訪れた。無料接種が約298万6000人、有料接種が約30万9000人である。ワクチンが足りないかもしれないという焦りから、人々が殺到したものと見られる。天候により、脳卒中、心筋梗塞などの発生頻度が高くなる上、待機時間まで長くなり、ワクチンを接種した高齢者の健康に影響を与えた可能性がある。
死亡事例の多数が満65歳以上という点も考慮しなければならない。同日、パク・ヌンフ保健福祉部長官は国政監査で「昨年70歳以上の高齢者が20万5千人死亡したが、1日平均560人」だとし、「以前なら(死亡原因が)疾患と分類されたはずの方々の相当数がワクチンと関連があるかのように発表されることもある」と述べた。
■副作用は?予防接種が必要か?
予防接種と死亡の因果関係を考える際、重要視すべき要素が二つある。ワクチンの毒性物質のためなのかと、ワクチン接種の副作用であるアナフィラキシーやギラン・バレー症候群と関連しているかどうかだ。アナフィラキシーは接種後に免疫体系が過度に敏感に反応し、呼吸困難などの症状が現われることをいう。普通、症状が30分以内に現われるため、接種後15~30分ほど医療機関で待機することを勧める。しかし、100万人当たり0.7人に現れるなど、あまり多くはない。急性まひ性疾患のギラン・バレー症候群は感染後2~3週間後から症状が出始める。唯一、インフルエンザワクチンとの因果関係が認められ、被害補償を受けた1件(2009年接種)の死亡事例は、ギラン・バレー症候群の変形であるフィッシャー症候群が現れたケースだった。2004~2016年の間に予防接種によってギラン・バレー症候群が発症したとして被害補償審議を受けたケースは計50件だったが、このうち33件について補償が行われた。
このような副作用にもかかわらず、高齢層や慢性疾患者などは必ず予防接種を受けなければならない。インフルエンザによって基礎疾患が悪化しかねないからだ。インフルエンザにかかって肺炎などの合併症になり死亡する人は1年に3千人を超える。