インフルエンザワクチンの常温露出事故で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対応に力を注いでいた疾病管理庁が、“庁への昇格”から10日あまりで思いもよらない「信頼の試験台」にあげられた。無料接種用ワクチンをめぐって高まる不信感は、チョン・ウンギョン疾病庁長が築いてきた信頼イメージだけでは解消できないという懸念の声が上がっている。
疾病管理庁は24日、シンソン薬品の流通過程で常温に露出した可能性が高いワクチン750ドーズ(1回分)を一次回収し、食品医薬品安全処(食薬処)が品質検査を行っていると発表した。これとは別に、疾病庁は食薬処、京畿道金浦市(キンポシ)とともに、前日からシンソン薬品を対象に現場調査を行っている。
”事実確認”とは別に、政府はインフルエンザワクチンが常温にさらされたとしても安全に大きな問題はないと強調している。保健福祉部と疾病庁は「世界保健機関(WHO)が作成した許可されたワクチンの安全性試験資料には、インフルエンザ不活化ワクチン(ウイルスの能力を失わせた原材料で製造したワクチン)が25度では2~4週間、37度では24時間安全だとされている」という説明を提示した。高麗大学安山病院のチェ・ウォンソク教授(感染内科)は「低温維持の原則に反したのは明らかに問題だが、不活化ワクチンは常温露出の影響が少ないというのは事実。製造段階から維持可能な常温露出時間を考慮して安全性の検証をする」とし「検査結果が出る前に500万ドーズを使えないと断定するのは難しい」と説明した。
しかし、「無料接種ワクチンは信じられない」として有料接種を選択する人が続出するなど、不安と不信は続いている。野党や一部の医師は、検査結果に関わらず「廃棄攻勢」を繰り広げている。「国民の力」のカン・ギユン議員は「たとえ問題がなくても廃棄すべきだ」と主張し、大韓開院医協議会も声明を出し「どの医師が安心して接種できるか」とし、廃棄を要求した。
医療界内外ではこうした状況に置かれている疾病庁の行政力・政務能力不足を懸念している。主要構成員は医師や研究者などで専門性は高いが、直接事故に対処したり悪化した世論を収拾した経験があまりないからだ。医療界の関係者は「ワクチン無料接種事業が信頼を回復するには、ワクチンの調達・供給体系まで大きく手を入れる案を同時に出さなければならないが、既存の体系に製薬会社、卸売業者、開業医界など多くの利害当事者が絡んでいるため容易ではない」とし「突然ワクチン問題が発生したことで、疾病庁の弱点とされていた行政力・政務能力不足が問題になる可能性がある」と話した。