最近、タイのバンコク都心で民主化デモ隊の解散のために動員された放水車が、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権時代に韓国から輸出されたものだったことが確認された。
この装備を輸出した韓国企業のJ社は、放水車やバリケード車両などの治安関連の特殊装備を主に生産し、海外に輸出する会社だ。放水車の市場シェア世界1位のJ社は、アラブ首長国連邦(UAE)、シリアなど紛争の多い18カ国に放水車を輸出している。同社は2010年と2013年の2回に渡り、タイ王室の警察本部にも放水車を輸出した。地元メディア『バンコクポスト』は、タイ政府が1台当たり2400万バーツ(約8千万円)を払って放水車を購入したと伝えた。王政国家であるタイでは、首相退陣と君主制改革を要求するデモが1週間以上続いている。
これらは鉄条網と防弾ガラスを備えた車両で、デモ隊鎮圧の際に催涙液とペンキを混ぜて噴射することができる。タイ警察は16日にもこの放水車を使って催涙液と青色のペンキを混ぜてデモ隊に噴射した。韓国で2015年の民衆総決起集会の時に、警察による放水の直撃で死亡したペク・ナムギさんの事件を連想させる場面だ。タイ現地での集会参加者の話を聞くと、デモ隊の一部は放水砲に撃たれて呼吸困難の症状を訴えたという。多数のデモ参加者は「警察が放水車で撒いた催涙液を浴びて、目と肌に痛みがあった」と話した。朴槿恵政権当時、デモ鎮圧装備の販売を積極的に奨励した“治安韓流”の裏の顔といえる。この放水車生産会社は、同日から警察庁が開催する国際治安産業博覧会にも展示業者として参加している。
タイの活動家たちは、韓国は放水車などのデモ鎮圧装備の輸出をやめるべきだと声を上げている。タイで民主化運動を行い「王室冒涜罪」で起訴される危機に陥ったため韓国に亡命したチャノクナン・ルアムサップさん(27)は「韓国国民が軍部独裁に抵抗し民主化のために闘った裏で、政府が治安物資を輸出し他国の独裁と暴力を助けているというのは恐ろしい矛盾」だとし、「人命被害をもたらし、人権を弾圧する治安物資輸出産業を直ちにやめるべきだ」と話した。
J社は「ろうそく集会」によって朴槿恵政権が幕を下ろした後も、活発に放水砲車両の生産と輸出を続けている。警察の日である21日午前から始まった「国際治安産業博覧会」にも展示業者として参加し、輸出相談を受けている。昨年初めて開催され、今年で2回目を迎える同博覧会は、警察庁と仁川(インチョン)広域市が共同で主催する。展示される製品の大半は科学捜査を助ける先端装備、警察官を保護するための護身装備などだが、一部は人命被害をもたらす放水車やゴム弾、銃器類なども含まれており、問題があるという指摘が出ている。
韓国では、2015年11月に集会に参加した農業者のペク・ナムギさんが、警察による放水の直撃を受けて倒れ、翌年死亡する事故が発生し、警察は集会現場で放水車を使用していない。警察改革委員会が2017年に放水車の使用制限を勧告し、警察が勧告を受け入れて事実上放水車の使用を禁止した。
文在寅(ムン・ジェイン)政権でも警察が“治安韓流”という美名のもとに放水車両の製造会社などを宣伝していたことについて、「戦争のない世界」などの市民団体は「治安装備は、有事の際にはいつでも各国の市民たちの人権を侵害することに使われる可能性がある。こうした悲劇が治安韓流という名のもとに輸出されてはならない」と糾弾した。ペク・ナムギさんの遺族も無念の思いを示した。ペク・ナムギさんの長女ペク・トラジさんは「タイで使われた放水車が韓国製だと聞いて大きな悲しみを感じた。放水車が人命被害を誘発する可能性があるため韓国内で使用しないのならば、海外でも使用されてはならない」とし、「未解決事件の解決を助ける警察の科学捜査装備は輸出できると思うが、放水車のような装備は輸出をやめるべき」と求めた。
警察関係者は「民間業者が生産して海外に輸出する放水車については警察庁が関与することはできず、輸出内訳や輸出以降の使途について詳しい内容は分からない」と説明した。