「ライム資産運用事件」の中心人物であるスターモビリティのキム・ボンヒョン元会長の自筆の手紙の公開後、チュ・ミエ法務部長官とユン・ソクヨル検察総長の対立が再び激しくなっている。今回の衝突が両方の“チキンレース”の様相を呈することもありうるという懸念まで出ている状況だ。
法務部は18日に発表した立場文で、直接ユン総長を指摘し、キム元会長に対する監察捜査とは別に捜査する意向であることを示した。16日に公開されたキム元会長の直筆の文書「事件概要まとめ」によると、検察出身のA弁護士が「ユン・ソクヨル検察総長に力を添えるには強力な一発が必要だが、大統領府の行政官では足りず、大統領府首席程度は押さえておかなければならない。君が助かるためにはキ・ドンミン(議員)もいいが、必ずカン(・ギジョン)大統領府首席程度は押さえておくべきだ」と語ったという場面が登場する。法務部が立場文で「(ユン総長が野党政治家および検察官の不正に対しては)与党の要人とは異なり徹底的に捜査するよう指揮しなかったという疑惑など、その関連性を排除することはできない」と明らかにしたのは、これを根拠としたものとみられる。ユン総長が野党政治家に関する陳述もあわせて報告を受けたにも関わらず、与党関連の捜査だけ指示を出したのではないかということだ。
法務部は、ソウル南部地検が野党政治家関連の内容を最高検察庁の反腐敗部を通さず、ユン総長にだけ別途報告した可能性を疑っている。これに対し、当時の南部地検長は「総長に対面報告する際に、野党政治家関連の内容も報告した。総長は常に徹底的に捜査せよと指示した」と述べた。最高検察庁も「ユン総長が『野党政治家の疑惑』の報告を受けた後、徹底的な捜査を指示した」と反論した。捜査チームから報告を受けてすぐに関連の指示を出したということだ。最高検察庁は「総長に対するデマ」だという表現まで使って法務部の発表に強く反発した。
チュ長官とユン総長は、1月にチュ長官が法務部長官に就任した後、事あるごとに衝突している。最も強く衝突したのは、ユン総長の最側近のハン・ドンフン検事長(法務研修院研究委員)が関わった「検察とメディアの癒着疑惑」事件だ。チュ長官は、ユン総長がこの事件で専門捜査諮問団の審議を推進すると、7月2日にユン総長を捜査から排除する内容の捜査指揮権を発動した。この対立は最高検察庁が「捜査指揮権発動は形成的処分で、すでに(ユン総長の)指揮権は失われた状態」だと明らかにし、一段落した。
しかし、今回はさらに深刻だという懸念が出ている。ある検事長出身の弁護士は「事実上、検察総長が『チュ長官が自分に対するデマを流している』という公の立場を打ち出したことで、過去10カ月の対立を振り返っても例を見ないレベルの反発」だとし、「キム・ボンヒョンの手紙が事実だと明らかになれば、検察は致命傷を負うことになるが、その手紙が虚偽だと明らかになった場合、実体も十分に把握できなかった状況で総長に対する捜査まで示唆した法務部は致命傷を避けられない」とした。