ソ・フン大統領府国家安保室長が就任後初めて訪問した米国での3泊4日の日程を終え、16日に帰国の途についたことから、ソ室長の「手土産」に関心が集まっている。
ソ室長は今回の訪米で、ロバート・オブライエン国家安保担当大統領補佐官やマイク・ポンペオ国務長官など米国の外交・安全保障分野のすべての要人と会談し、韓米間の様々な懸案について協議した。特に終戦宣言に関してソ室長は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がこれを提起した背景や構想などを説明し、議論したとみられる。
ソ室長は15日(米国時間)のワシントンでのメディアのインタビューでも、終戦宣言についての見解を率直に明らかにした。ソ室長は「終戦宣言の問題は常に交渉のテーブルの上にあった問題であり、その部分で韓米間に異なる考えはあり得ない」と述べた。ポンペオ長官との面談で、終戦宣言に関する論議はあったのかという質問に対する答えだった。ソ室長は「ただ問題は、終戦宣言が非核化の過程で前後関係がどうなるのか、また非核化とどの程度関係づけるのかという問題であって、終戦宣言を(非核化とは)別個に行うことはできないということは常識」と述べた。
そもそも終戦宣言は、文大統領が任期序盤から朝鮮半島平和プロセスの「入口」として提示していたカードだ。朝米間の相互信頼がない状況において、北朝鮮の非核化を引き出すには「終戦宣言」を呼び水として活用すべきというのが、文大統領と大統領府参謀陣の判断だった。文大統領は、2018年4月の第1回南北首脳会談の板門店(パンムンジョム)宣言で金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を説得し、「年内の終戦宣言」を明示した。終戦宣言は、同年6月の朝米首脳会談のテーブルにも上ったと、ジョン・ボルトン前国家安保担当大統領補佐官が回顧録で明らかにしている。その後、北朝鮮は7月初めにポンペオ国務長官の訪朝の際、終戦宣言の日程を論議できるものと期待していたものの、ポンペオ長官が「非核化がなければ終戦宣言は難しい」と拒否したため、実現しなかったという。
文大統領が先月の国連総会での演説で再び終戦宣言カードを切ったのには、最近は動力を失っている南北、朝米の関係をなんとしてでも修復しようという切迫した思いが反映されていると見られる。終戦宣言を対話回復への入口とし、朝鮮半島の硬直した局面を解く糸口にするための布石だ。
しかし、終戦宣言カードにどれほどの実効性があるかは、依然として速断が難しい。米国は「まず非核化が実現しなければ終戦宣言は論議できない」との立場だという。「出口論」に近いものだ。米国は、終戦宣言がややもすれば北朝鮮に、韓米同盟の解体、在韓米軍の撤退、国連軍司令部の解体などを主張する大義名分を与えるだけとなることを懸念しているという。
一方、北朝鮮は米国の「まず非核化してから終戦宣言」という主張に対し、「いつでも紙くずに変わりうる終戦宣言のために、先に譲歩することはない」との立場だ。朝米は非核化と終戦宣言の順序をめぐって鋭く対立しているわけだ。
ソ室長はこの日、「(今回の訪米で)終戦宣言について特別に深く話し合ってはいない」と述べ、一歩後退した姿勢を示した。米国が来月に大統領選挙を控えた微妙な局面であるため、直ちに終戦宣言を真剣に論議する雰囲気ではないということを示唆したものだ。北朝鮮には「終戦宣言によって南北間の緊張を緩和し、非核化へと進もう」と言い、米国に対しては「終戦宣言は政治的宣言にすぎず、法的拘束力はない」と説得する政府の努力が、今回はまともに効果を発揮できるか注目される。