本文に移動

文大統領、漁業指導員死亡事件から6日後に謝罪「不幸な出来事、大変申し訳ない」

登録:2020-09-28 23:49 修正:2020-09-29 07:21
「分断状況とはいえ、起きてはならないこと」 
金正恩委員長の謝罪と関連し 
「格別な意味として受け止めている」 
南北対話の突破口を開くことを希望
文在寅大統領が今月28日、大統領府で開かれた首席・補佐官会議に出席している/聯合ニュース

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が28日、北朝鮮軍による漁業指導員A氏射殺事件と関連し、「理由の如何を問わず、政府としては大変申し訳なく思っている」とし、遺憾の意を表した。今月22日に銃撃死亡事件が起きてから6日後、公の場で、国民の生命と安全を守れなかったことについて事実上の謝罪をしたわけだ。さらに文大統領は、今回の事件の真相究明を、凍り付いた南北対話の扉を開く「災い転じて福となす」きっかけにする考えも示した。

 文大統領は同日、大統領府で行われた首席・補佐官会議で「遺憾で不幸な出来事が発生した。分断状況とはいえ、起きてはならないこと」だとし、このように述べた。また「国民が受けた衝撃と怒りも十分察してあまりある」と付け加えた。

 文大統領はA氏の家族と親戚にも「犠牲者がどのようにして北朝鮮の海域に行ったのか、その経緯と関係なく深い哀悼の意を表するとともに、お悔やみ申し上げる」と述べた。越北の意思の有無をめぐる南北当局の釈明が食い違っているうえ、韓国政府がA氏の越北の意思を口実に犠牲を防げなかったことについて責任逃れをしているという激しい批判を意識したものと言える。同時に、同事件が越北を試みたか否かをめぐる攻防に広がった場合、反北朝鮮感情が高まると共に、陣営間の分裂にまで突き進むことを事前に防ぐ意味も含まれているとみられる。

 文大統領が公の場で「申し訳ない」と述べたのは、A氏が死亡した22日から6日が過ぎた時点だ。これまで文大統領の発言と指示は非公開会議を通じて間接的に伝えられてきた。文大統領は23日朝8時30分、安保室長と秘書室長から初めて対面報告を受けた際、「事実なら国民の憤りを買う出来事だ。北朝鮮にも確認して事実関係を把握するよう」と指示しており、翌朝9時に2回目の対面報告を受け、「国家安全保障会議を招集してから、国民に真相を知らせるよう」と指示した。同日午後には「衝撃的な事件で非常に遺憾だ。いかなる理由であれ容認できない」とし、「北朝鮮政府は責任ある答弁と措置を取らなければならない」と述べた。その間、保守野党の「国民の力」は「文在寅大統領、今どこにいるのですか」というスローガンを掲げ、場外集会を行うなど、北朝鮮軍の行為に関する文大統領の行動が消極的だとして批判を強めてきた。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が「非常に申し訳ない」とした北朝鮮当局の謝罪に関して、文大統領は「格別な意味として受け止めている」と評価した。「北朝鮮当局は韓国政府が責任ある答弁と措置を要求した翌日に通知文を送り、迅速に謝罪して、再発防止を約束した」とし、「特に金正恩委員長が韓国国民に非常に申し訳ないという意を伝えてきたことは、核別な意味として受け止められる」と述べた。さらに「北朝鮮の最高指導者として直ちに直接謝罪したのは史上初めての非常に異例の出来事」だとし、北朝鮮の最高指導者の意思を盛り込んだ迅速な謝罪を、事態を悪化させて南北関係を取り返しのつかない状況に突き進むことを望まないという北朝鮮の明確な意志表明として捉えていることを示したのだ。北朝鮮を刺激せず、さらに共同調査の道を模索しようという慎重な態度がうかがえる。

 文大統領は、今回の事件の真相究明と収拾が、足踏み状態の南北対話と関係改善の契機になることを望むという考えも示した。文大統領は「今回の事件を解決していくことから対話の火種を生かし、協力の扉を開けていくことを望んでいる」とし、「類似した事件が起きてはならないという南北の意志が言葉で終わらないよう、共同で解決策を模索していくことを望んでいる」とし、「悲劇的な事件が事件で終わらないように、対話と協力の機会を作り、南北関係を進展させるきっかけに変えていくことを期待する」と述べた。また前日には緊急安保関係閣僚会議を開き、軍通信線の復元・再稼働と南北共同調査を北朝鮮に提案した。同日も「軍事通信線を通して連絡とコミュニケーションができてこそ、偶発的軍事衝突や突発事件を防げるし、海上漂流についても救助協力を円滑に進めることができる」とし、「少なくとも軍事通信船だけはまず復旧して再稼働することを要請する」と述べた。

ソン・ヨンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/963912.html韓国語原文入力:2020-09-28 20:37
訳H.J

関連記事