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大雨で田に流れ込んだ地雷…鉄原の農家、稲刈りできず地団太

登録:2020-09-18 02:14 修正:2020-09-18 07:12
台風や集中豪雨で地雷が流れ込んできた境界地域 
爆発事故の恐れ、収穫を延ばし政府に対策を要求 
「軍、被害甘受覚書を出せば探知してやるとは」 憤り
鉄原郡の民統線内に位置する水害被災村で、陸軍第5工兵旅団の将兵たちが、流れ込んだ可能性のある地雷を探している=陸軍第5軍団提供//ハンギョレ新聞社

 「鉄原(チョルウォン)は稲の品種が早生種なので、もう収穫していなければならないのに、地雷が怖くて稲刈りができずにいます」

 民間人立入統制線(民統線)内に位置する江原道鉄原郡東松邑江山里(トンソンウプ・カンサンリ)で稲作をしているソ・ギョンヨンさん(60)は16日「命がけで危険な稲刈りをしなければならないのが実情」とし「軍が地雷探索をしてくれると言うが、探索の過程で発生する稲の被害は誰が補償してくれるのか」と訴えた。

 ソさんら境界地域の農業者が黄金色に実って首を垂れた稲を見ても地団太を踏むばかりなのは、8月に降った記録的な豪雨により、非武装地帯(DMZ)などの民統線内に埋められていた地雷が流されてきたためだ。現在までに境界地域の田畑で発見された地雷だけで150発あまりにのぼるが、江原道高城(コソン)の海岸で発見された空の木箱地雷を除けば、大半が韓国軍地雷のM14対人地雷だ。M14対人地雷は、缶詰状の円筒形のプラスチックで、水にもよく浮くため、豪雨に見舞われれば広範囲に広がってしまう。

 実際に今月10日には麟蹄郡(インジェグン)の民統線内で水害復旧作業をしていた副士官(23)が、地雷の爆発と推定される事故に遭い、足首を怪我している。

 軍当局は民統線地域を中心として流失地雷の探索に乗り出しているが、民家や畦などを除いた水田では探索作業ができずにいる。地雷の探索過程で稲が踏まれるなどの被害への対策がないからだ。軍当局は地雷探索の条件として「被害を受け入れる」ことを内容とする覚書の提出を求めたが、農家は反発している。

 江山里の農家のチェ・ジョンスさん(52)は8日、大統領府の噴水前で「大雨で流れてきた境界地域の地雷対策」を求める1人デモを行った。チェさんは「水田から地雷が発見され、鉄原郡や軍部隊などに全数調査と被害への対策を求めたが、法的根拠がなく難しいという返事が返ってきた。秋夕(チュソク。旧暦8月15日の節日)を目前に控えているだけに、大統領に懸案を解決してほしいという思いで大統領府までやって来た」と訴えた。

 江原道と鉄原郡、農業者らは11日に流失地雷についての対策会議を開いたが、損失補償金の支給については合意に至らなかった。その代わり、地雷に対して比較的安全な大型コンバインを農家に援助することとした。これを受け、江原道は特別交付金3億ウォン(約2680万円)を鉄原郡に支給し、大型コンバインを購入して農家に貸し出すことにした。しかし、3億ウォンで買える大型コンバインは2台に過ぎないため、収穫への支障は避けられない。

江原道議会が16日午後、道議会セミナー室で、境界地域の地雷流失に伴う農業者の安全保障と被害対策を求める建議文を発表している=江原道議会提供//ハンギョレ新聞社

 江原道議会は17日、境界地域の地雷流失に伴う農業者の命と安全の保障、再発防止対策▽農作物の被害に対する現実的な水準での補償▽地雷被害への補償などの境界地域に対する保障特約の風水害保険への新設、などを盛り込んだ建議文を発表した。江原道議会のクァク・トヨン議長は「自然災害で大きな被害を受けた農家に、流れ込んだ地雷の探索の過程で発生する被害まで負えというのは過酷だ。政府レベルの対策が急がれる」と述べた。

パク・スヒョク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/gangwon/962553.html?_fr=st1韓国語原文入力:2020-09-17 14:56
訳D.K

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