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サムスン半導体工場労働者の希少疾患、16年経てようやく労災認定

登録:2020-09-16 02:15 修正:2020-09-16 08:08
ウェハー膜洗浄作業…「視神経脊髄炎」発症 
裁判所「労災の証明責任、労働者に不利であってはならない」
パンオルリムのメンバーがソウル勤労福祉公団前で記者会見を開き、サムスン半導体の被害労働者に対する労災認定を要求している=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 サムスン電子の半導体工場で希少疾患にかかった労働者が、退職して約16年を経てようやく労働災害として認定されることになった。

 ソウル行政裁判所5単独のソン・ソンヒ判事は15日、サムスン半導体工場での勤務で視神経脊髄炎にかかったAさんが、療養不承認処分の取り消しを求めて勤労福祉公団を相手取って起こした訴訟で、原告勝訴の判決を言い渡した。

 Aさんは1997年からサムスン電子の器興(キフン)半導体工場に勤務。約7年後の2004年に「急性横断性脊髄炎」を発症し、最終的には視神経脊髄炎との診断を受けた。視神経脊髄炎は、視神経と脊髄に炎症が生じ、それが視力の低下をもたらす希少疾患だ。当時、三交代勤務で働いていたAさんは、硫酸の入った水槽に半導体集積回路の基板であるウェハー膜を直接浸して洗浄し、水槽内の化学物質を入れ替える作業を担当していた。2005年に退職したAさんは、2017年に勤労福祉公団に労災を申請したものの、公団はAさんの病気と業務との因果関係が認められないとして労災を認めなかった。

 Aさんは行政訴訟を起こし、法廷で「有害化学物質にさらされ続けるとともに、交代勤務などで免疫系が悪化して発症したか、自然経過以上に悪化した」と主張した。裁判所も、因果関係を明確に究明できないからといってこれを否定することはできないとし、Aさん側を支持した。裁判所は「有害化学物質の問題点についての認識が高まり、作業環境管理が強化されてきたことなどを考慮すると、Aさんの勤務期間中の有害化学物質への曝露とその程度は、関連諸研究によって確認されている程度より重大だったはず」との判断を示した。また、交代勤務や残業による「不規則な睡眠などが免疫力の低下に影響を及ぼし、発症や進行を促進する原因として作用した可能性も排除できない」とも判断した。そして「公的保険を通じて産業と社会全体がこれを分担するという労災補償保険制度の目的を考慮すれば、証明責任において劣悪な地位にある労働者に不利な判断をするのは妥当ではない」と付け加えた。

 半導体労働者の健康と人権を守る会「パンオルリム」で活動するチョ・スンギュさんは「発症原因などについての研究がほとんど行われていない希少疾患についても、発症に影響を及ぼし得る様々な可能性を考慮して因果関係を判断すべきとの判断を裁判所は下した。労働者に過酷な証明責任を負わせる現行のあり方の改善が必要だという宣言でもある」と説明した。

チョ・ユニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/962301.html韓国語原文入力:2020-09-15 19:00
訳D.K

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