カトリック教会の聖堂でも多数が集まってミサを行い、仏教寺院でも法会が開かれる。なのに、プロテスタント教会で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が多く発生している理由は何か?
集合施設を運営している点では各宗教が共通しているが、その内容を詳しく見てみると、違いが存在する。韓国の宗教を説明する際、聖堂は公務員組職、寺院は公企業、プロテスタント教会は自営業に喩えられる。「法王庁-教区-聖堂」という中央集権式組織の安全弁のもとにいる司祭は、公務員同様、個人の成果にこだわらない。ミサに必ず出席するよう信者を督励したり、献金を強要することもない。曹渓宗が多数を占める仏教の場合、「総務院-教区-寺院・庵」と形式上は中央集権システムだが、カトリックのように厳格ではない。自由を追求する僧侶の特性上、縛られることを嫌うため、信者の管理も比較的緩い。一方、プロテスタント教会は数百の教団が乱立しているうえ、 それぞれの教会的特性が強い。各教会の成否が牧師の力量にかかっているため、信者の管理や宣教、献金への情熱が他の宗教よりはるかに強い。韓国政府がCOVID-19の感染拡大状況に応じて宗教施設での会合を制限するたびに、カトリックと仏教はあまり異議を唱えることなく従ってきたが、プロテスタントの牧師たちは「なぜ食堂や居酒屋、カフェは営業を続けられるのに、教会の会合は禁止するのか」と不満の声を上げてきたのも、このためだ。
特に、韓国のプロテスタント教会は他国のクリスチャンたちが驚くほど熱心だ。毎朝教会に集まって早朝の祈りを捧げ、礼拝の後は食事も共にする。他の国のプロテスタント教会では見られない風景だ。早朝の祈祷は毎朝甕置き場の上や台所に清めの水を用意して祈祷を捧げた韓国の伝統文化と類似している。食事は本来寺院で行うものだったが、プロテスタント教会にも食堂が設けられ、礼拝後に食事をする教会が増えた。客間に集まって会話を交わしてきた伝統が受け継がれたものと言える。韓国の教会でよく行われる通声祈祷(全員が声を出しながら一緒に祈ること)も米国南部のバプテスト教会やアフリカなどで一部見られるが、欧州とアジア圏では珍しい。しかもプロテスタント教会は建物の面積当たりの信者数が寺院・聖堂に比べて多いため、小規模会合でマスクを脱いで賛美歌を歌ったり、通声祈祷を行ったり、食事を共にする場合は飛沫が飛ぶ可能性が高い。特に、大規模のプロテスタント教会は10世帯前後の区域と100世帯程度の教区をまとめた点(細胞)組織で構成される。彼らは毎週数回は会合を開くため、信者間の接触頻度は他の宗教とは比べ物にならない。
今年2月、大邱(テグ)新天地イエス教会を中心としたCOVID-19の感染拡大以降、多くのプロテスタント教会が政府の防疫指針に従って、礼拝堂内の参加者を減らし「距離置き」を行い、オンライン礼拝を並行してきた。信者数56万人を持ち、単一教会としては世界最大の汝矣島純福音教会は、日曜日7部の礼拝のうち午前9時・11時の礼拝には平均1万2千人が参加してきたが、今年2月以降その数が10分の1に減った。日曜日に6部礼拝を行う京畿道の龍仁新エデン教会も、礼拝当たり4千~6千人だった出席者数が500人~1千人に減少した。このため、信者が離脱するかもしれないという懸念が教会と牧師の間で高まっている。韓国教会総連合(韓教総)が5月31日を「韓国教会礼拝回復の日」と定め、「全信者が再び以前のように教会に出席して礼拝をおこなおう」というキャンペーンを展開したのも、こうした危機感によるものだった。
韓教総所属のある牧師は「出席信者数と献金が減り教会の運営が厳しくなっていても、ほとんどの教会が防疫指針を順守して小規模会合と食事を控えているが、一部の教会が熱狂的に賛美と祈祷を行い、寝食を共にする復興会や修練会を開いて、多数の教会にまで被害を及ぼしている」と語った。プロテスタント教会がCOVID-19の感染拡大の震源地として浮上したが、「新型コロナによって最も大きな被害を被った」とし、一日も早く新型コロナ以前に戻ることを熱望しているのも、ほかでもなくプロテスタント教会である。