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[ニュース分析]民主労総の分裂で「新型コロナ政労使合意」結局座礁

登録:2020-07-02 06:13 修正:2020-07-02 23:54
強硬派の反発に政労使合意は実現せず 
「解雇対策の不備」を問題視したが、 
政派対立の延長線という分析も 
脆弱労働者層への支援をめぐる議論の場閉ざされる
今月1日午前、ソウル鍾路区の首相公館に設けられた政労使代表者協約式に協約書が置かれている。同日、民主労総が出席を取りやめたことで協約式も取り消された=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 22年ぶりに民主労総まで加わった社会的対話で期待を集めた「新型コロナ危機克服」に向けた政労使合意が、民主労総内部の強硬派の反発で結局実現しなかった。通貨危機直後の1998年、整理解雇制度と派遣勤労制度の導入を含む政労使合意案を受け入れた“傷痕”で20年以上場外闘争を続けてきた民主労総は、今回も組織内部の分裂という壁を乗り越えられなかった。結果的に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という未曾有の経済危機に見舞われた労働脆弱階層の支援などを議論する社会的対話が座礁したことで、民主労総により大きな社会的役割や責任を求める声が再び高まるものと見られる。

 全国民主労働組合総連盟(民主労総)は1日午前、全国民雇用保険制導入などのための政労使代表者らの協約式を控え、暫定合意案に対する組織内の承認手続きで臨時中央執行委員会(中執)を招集した。しかし今回の合意案に反対してきた強硬派の組合員たちは、「政労使の野合を直ちに廃棄せよ」と強く反発した。午前9時に予定された中執を控え、組合員数十人がソウル中区(チュング)の民主労総前で抗議デモを行う一方、会場内では開始10分後に大声が飛び交うなど、キム・ミョンファン委員長に協約式への欠席を求める雰囲気が続いた。会議場の外でも約100人がキム委員長と今回の合意に対する批判発言を続け、事実上、キム委員長の協約式への出席を阻止するために待機した。10時30分の協約式を控え、キム委員長や代理人(副委員長)の出席が難しいという連絡を受けた首相室は、行事15分前にマスコミに協約式の取り消しを発表した。

 今回の政労使合意に反対する人々は、政労使の暫定合意案に「解雇禁止」などの労働者保護対策が具体的に盛り込まれていない点を問題視した。韓国政府が新型コロナで打撃を受けた航空・海運業種などに40兆ウォン(約3兆6千億円)の基幹産業安定基金を支援したにもかかわらず、該当企業に「90%の雇用維持」などの条件を付けないなど、労働者のリストラを防ぐ実質的な対策が抜けているという主張だ。具体的には、企業の休業手当の削減の事実上の承認▽労働界の労働時間短縮・休業協力▽特殊形態労働従事者の雇用保険への差等適用可能性▽経済社会労働委員会(経社労委)による履行点検条項などに対する問題提起があったという。

 しかし、政労使合意に対する民主労総内の反対の声は、合意内容に対する批判よりも、政派対立の延長線上にあるという指摘もある。以前から政労使の対話を通じて得るものより失うものが多いため、“飾り物”に転落しかねないとして拒否感を示してきた強硬派が、同日の中執でキム委員長の協約式への出席を阻止する“実力行使”に出たのだ。

 キム委員長は民主労総内部で政府との交渉(対話)に積極的な「国民派」に分類される。「政労使対話の復元」は、2017年12月の民主労総委員長選挙に出馬したキム委員長の公約だった。しかし、キム委員長の就任から約1年後の昨年1月の定期代議員大会で、民主労総は大統領直属の経済社会労働委員会への参加も、出席も見送った。ある労働界の関係者は、「キム委員長が当選した当時は、“ろうそく革命”で政権を握った現政権と与党に対する労働界の期待値が高く、社会的対話への参加を公約したキム委員長に共感した代議員が多かったが、時間が経つにつれ、政府に対するこのような期待感は不信感に変わった」とし、「今年末にキム・ミョンファン委員長の任期が終わるうえ、これまでの政府の労働政策基調を見るかぎり、組織内の強硬派の声はさらに高まるとみられる」と説明した。

 民主労総執行部は2日、再び会合を開き、暫定合意案に対する同意を問う臨時代議員大会を招集する方針だ。しかし同日、キム委員長が強硬派によって5時間近く事実上監禁され、ストレスで病院に搬送されるなど“騒ぎ”が起きたことから、最終的な政労使合意が実現する可能性は低い。現民主労総指導部は今後の“去就”を掲げて合意を導き出す意志を示しているが、これを実現させる組織掌握力を備えていないことが足を引っ張っている。

 当初、今回の社会的対話は、新型コロナで雇用危機に直面した、政府政策の死角地帯にある脆弱労働者のための対策作りのため、民主労総の要求で設けられたものだった。全国民雇用保険の導入などが核心議題として論議されたのも、このような脈略からだ。このため、労働界内外では、組合員規模で第1労総になった民主労総が、今後社会的対話を通じて努力すべき課題が多いにもかかわらず、今回の事態で発言権が弱まるのではないかという懸念の声もあがっている。韓国労働研究院のペ・ギュシク院長は「民主労総が脆弱労働者層の利害と要求を代弁し、政府に対策を求めるなど、社会的対話で中心的な役割を果たすことが切実な状況なのに、そうした場を自ら閉ざしてしまったようで残念だ」と指摘した。

ソン・ダムン、キム・ヤンジン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/951867.html韓国語原文入力:2020-07-020 2:44
訳H.J

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