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「国民雇用保険」の口火を切った大統領府、波及力の大きさにまずは世論をうかがう

登録:2020-05-04 07:01 修正:2020-05-04 08:19
新型コロナによる失業のきっかけに“セーフティネット”の議論を開始 

カン首席「国民健康保険のように 
国民雇用保険が課題」と持ち出す 
イ院内代表「雇用保険法の改正が必ず必要」 
企財部次官も改善の必要性に言及 
 
労働者の半分の1352万人だけが雇用保険に加入 
死角地帯のセーフティネットの拡充が必要 
専門家「放置すればさらにさらに財政負担増える」 
 
第21代国会で十分な論議した後 
財源案など具体案をまとめるべき

大統領府のカン・ギジョン政務首席が今月1日、ソウル龍山区白凡金九記念館コンベンションホールで開かれた「ポストコロナ時代の政治地形の変化:韓国とG2」政策セミナーで祝辞を述べている//ハンギョレ新聞社

 大統領府が「ポストコロナ時代」の議題として「雇用保険の全国民への拡大」を打ち出した。180議席を持つ巨大与党が立法化に積極的に乗り出した場合、韓国社会は「雇用福祉システム」を立て直す新たな局面に突入するとみられる。

■「雇用セーフティネット」の強化に向けて動き出した大統領府

 大統領府のカン・ギジョン政務首席は1日、大統領直属の政策企画委員会が開いた「ポストコロナ時代の政治地形の変化」いう政策セミナーで、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を克服する過程で、全国民の健康保険が隠れた功労者であることは周知の事実だ」としたうえで、「健康保険のように全国民に雇用保険を適用することがポストコロナの課題ではないかと考えるようになった」と述べた。COVID-19事態で大量失業などが現実化しているが、自営業者や特殊雇用労働者、フリーランスなど雇用保険の恩恵を受けられない人が1千万人を上回っており、彼らのためのセーフティネットの拡大が急がれるという意味だ。雇用保険加入者数は昨年8月基準1352万8000人で、労働者(約2735万人)の約半数に過ぎない。政府からも後押しの声があがった。カン首席の発言の翌日の2日、企画財政部のキム・ヨンボム第1次官はフェイスブックに「危機は革新をもたらす。そして(これまで)不可能と思われてきた大妥協の時期でもある」とし、「韓国もまもなく押し寄せる雇用ショックに備え、一日も早く制度の城壁を補修しなければならない」として、制度改善の必要性に言及した。

■第20代国会では関連法案が廃棄されるが…第21代国会は違う

 雇用セーフティネットの強化は、文在寅(ムン・ジェイン)政府の重点課題だ。文在寅政府発足直後に発表された100大国政課題には、芸術家と労災保険の適用対象である特殊雇用労働者から段階的に雇用保険の加入対象を拡大すべきという内容が含まれている。共に民主党のハン・ジョンエ議員が2018年11月に「プラットフォーム労働者」をはじめ、特殊雇用労働者も雇用保険に加入できるようにする雇用保険法改正案などを発議したのも、そのためだ。イ・イニョン院内代表も3日、記者懇談会で「失業危機に対処する雇用維持関連法案が必ず必要だ」とし、「法と制度の外にいる社会的弱者層の労働者を法制度の枠内で保護するためには、雇用保険法の改正案を成立させ、特殊雇用労働者やプラットフォーム労働者などを(保険の適用対象に)含めるべきだ」と述べた。

 ハン議員が発議した法案は、野党の反対で該当常任委で議論すらできず、まもなく廃棄されるが、第21代国会では民主党に意志があるなら、雇用保険の適用対象をさらに広げる法案はいくらでも可決できる。民主党のある議員は「第21代国会では社会構造の長期的変化に向けた“革新インフラ”の構築に集中しなければならない。雇用保険の拡大は社会的弱者に与える恩恵ではなく、社会的基本権に関する問題であるだけに、他の課題より優先的に推進する必要がある」と強調した。淑明女子大学のクォン・スンウォン教授は、「特殊雇用労働者は経済ショックを受けた際、社会的セーフティネットがない。状況を放置し、問題が生じた時に解決しようとすれば、むしろさらに多くの財政投入が必要となる。現在としては社会保険システムを整えるのが国の財政負担を減らす方法だ」と述べた。

■まずは“慎重モード”の与党

 大統領府と民主党は、雇用保険の全国民の拡大を短期課題として推し進めるよりは、ひとまず慎重な態度を取るものと見られる。最近の全国民緊急災難支援金の支給事例からも分かるように、特定の政策問題を推し進めるためには世論の支持が重要であるからだ。イ・イニョン院内代表は、ハンギョレとの電話インタビューで、「全国民に雇用保険を適用するのは誤解の余地がある。働く人、働く意思のある人を対象に雇用保険を設計しようということだ」と説明した。大統領府関係者も「雇用保険の拡大が現実化するためには所得源泉徴収システムなどシステムを大幅に見直さなければならない。政労使の合意を取り付け、それを基に法を作るなど、大手術が必要だ」と述べた。「中長期的課題」であることを強調しているものの、大統領府が社会的な波及力が大きい事案について口火を切っただけに、第21代国会が始まると同時に、世論戦が本格化するものとみられる。

ソ・ヨンジ、ファン・グムビ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/943492.html韓国語原文入力:2020-05-04 02:41
訳H.J

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