「コロナ以降、コリアはどのような方向に進むべきか」
全南大学のパク・クヨン教授(哲学科)は先月30日、光州(クァンジュ)教育研修院で開かれた市民自由大学の講座に参加した市民に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は戦争か、非常事態か」という問いを投げかけた。トランプ米大統領は、新型コロナウイルスとの戦いを戦争状況と見なしている。しかしパク教授は「『コロナ=戦争』と規定するフレームは市民主権を破壊する可能性が高い。戦争は行政主権の過剰と市民主権の過少を容易に正当化し得る」と指摘した。
パク教授はCOVID-19を「非常事態」と見る。ユヴァル・ハラリは「非常事態の短期対策は長期にわたってその後の世界を形成するだろう」と述べている。そしてパク教授は「『COVID-19=非常事態』を行政権力の全体主義的な監視を通じて克服するか、それとも市民主権と議会主権、行政主権の調和とバランスを通じて克服するか」と問う。パク教授はこの部分で功利主義哲学者ジェレミ・ベンサムが囚人を監視するために設計した円形監獄「パノプティコン(Panopticon)」を挙げ、「行政権力の過度な監視メカニズム」の状況を警戒した。COVID-19が触発した非常事態は、COVID-19から得た教訓を通じて解決策を見出さなければならないだろう。パク教授は「COVID-19が提示した未来の基準は公開性、公正性、公共性」と要約する。「5・18のように憲法が完全に停止した状況において主権者が取った姿こそ、今後の民主主義の質を決定する」。パク教授は「非常状況において作動する主権が一般状況における市民主権の役割を規定する」と述べたカール・シュミットの言葉を引用して「健全な主権者行動が重要だ」と述べた。
パク教授は、COVID-19の主犯は新自由主義だと規定する。「新自由主義は人間による自然破壊、自然による人間破壊、国家による社会の破壊、個人と個人の相互破壊を深めた。自然のうめきに耳を傾ける人間性の回復(ホルクハイマー)と、個人-社会-国家の調和とバランスを見いだすことが重要だ」と強調した。またパク教授は「新自由主義式の資本主義は滅亡したのに新しいイデオロギーが出て来ず、既に死んでいるイデオロギーが徘徊している状況(ゾンビ資本主義)だ。世界はCOVID-19によって新しい時代精神の不在という空白期(インターレグナム・Interregnum)に置かれている」と診断した。
COVID-19以降にコリアが浮上する理由としては、科学力や技術力の最高保有国ではないが、医学や生命技術を市民が日常的に享受できる国であること▽世界最高の経済力と行政力の保有国ではないが、最大の消費国家でありそれらを活用している国であること▽労働運動、市民運動、地域運動の調和とバランスなどを挙げた。パク教授は「COVID-19は不動産投機国家、不確実な市場国家、夕方のない国家、閉鎖的民族主義国家と決別する機会を韓国に与えてくれた。一人であっても国民を保護するとともに国際連帯を実践する国にならなければならない」と述べた。
COVID-19以後の代案としてパク教授は「自然と人間との新たな関係構築」を提案した。「市民主権-議会主権-行政主権の調和とバランスが重要だ」ということだ。パク教授は「すべての立法と政策樹立の過程で力量のある団体などの『自然の代弁者』が参加できるようにすべきで、市民の生活世界が国家行政と資本市場によって植民地化(ハーバーマス)されないように社会的活動、遊び、研究などの多様な形態の社会が構成されなければならない」と述べた。また「国会は、国民に委任された立法権限を政府に白紙委任せぬよう政治を活性化するとともに、市民と政党の間では議論が活発化されなければならない」とも強調した。
市民自由大学は7月25日まで、毎週土曜日午前10時から「市民のためのコロナワクチン」というテーマで8回にわたって専門家を招いた講演を行う。