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新型コロナで後回しにされた「一般救急患者」の指針はどこへ

登録:2020-05-22 07:33 修正:2020-05-23 10:52
「社会経済危機に対応する市民社会対策委」討論会・懇談会 
 
高熱で病院を訪れたが、治療を受けられず死亡した17歳 
死後、新型コロナ検査で“陰性”判定 
父親「5分の距離の選別診療所に案内してもらえれば…」 
専門家「一般患者のための医療機関内の施設確保が必要」
ソウル鐘路区の参与連帯で今月21日、「医療現場の証言による教訓-第2派に備えて私たちは何を準備すべきか」というテーマで緊急討論会が開かれている//ハンギョレ新聞社

 今年1月20日、韓国国内で初めて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が発生してから4カ月が過ぎた。政府は成功した防疫を語っているが、COVID-19ではない患者の診療など、COVID-19第2派に備えた医療対応システムは不十分であると指摘されている。

 21日、保健・医療市民団体で構成された「COVID-19社会経済危機に対応する市民社会対策委員会」がソウル鐘路区(チョンノグ)の参与連帯で討論会を開き、こうした国内の医療対応システムを補完する方法について議論した。

 この場には3月18日に亡くなったJ君(17)の両親が出席し、COVID-19ではない患者が経験した医療空白問題を訴えた。J君の家族の話によると、J君は3月12日午後7時30分、41度を超える高熱症状で慶尚北道慶山市(キョンサンシ)の慶山中央病院を訪れたが、選別診療所は閉まっていた。その後、救急室に向かったが、抗生物質と解熱剤の処方と翌日COVID-19検査を受けるよう勧められただけで、帰宅しなければならなかった。翌13日の朝、慶山中央病院を訪れ、肺のレントゲン撮影とインフルエンザやCOVID-19の検査などを受けた結果、担当医師から「肺に炎症が見られる」という所見を聞き、さらに強い薬を処方されて帰宅した。その後、40度を超える高熱と呼吸困難に苦しんできたが、「COVID-19が疑われる患者」という理由で点滴も自家用車の中で受けなければならなかった。

 これ以上検査結果を待っているわけにはいかないと思ったJ君の両親は慶山中央病院に連絡したが、医療スタッフから突然「今晩は越せないかもしれない」と言われた。急いで大邱嶺南大学病院に移動した後、隔離室で血液透析とECMO(体外式膜型人工肺)治療を受けたが、18日に亡くなった。J君はCOVID-19患者と疑われ、数回にわたりCOVID-19検査を受けたが、19日に最終的に陰性判定を受けた。

 J君の家族と保健医療の市民団体は、J君が病院を訪れた12日から命を失った18日まで“医療空白”があったとみている。J君の父親は同日の討論会前の懇談会で「当時、慶山中央病院から5分の距離にある、夜10時まで診療するほかの病院の選別診療所を紹介すべきだったが、翌日病院に来るように指示し、ゴールデンタイムを逃してしまった」とし、「COVID-19ではなく一般救急患者の指針がなかったため、このような事態になった」と指摘した。

 研究共同体「健康と代案」のイ・サンユン責任研究委員は討論会で「J君の事例は呼吸器や発熱症状で来た患者が、COVID-19流行時期に陽性か陰性かが確定するまでどの医療機関にも行けなかった状況で発生した悲しい事故」だとし、「当時、地域社会の選別診療所は24時間運営もしなかった」と指摘した。また「COVID-19が大流行した地域や公共病院しか医療資源のないところでは、呼吸器や発熱症状の患者、出産を控えた妊婦などを受け入れることができない」とし、国民安心病院を含む地域社会医療機関内の治療のための空間と施設を確保する必要性を主張した。

 この日、現場で患者を診療する看護師や保護装備などが追加で必要だという指摘もあった。人道主義実践医師協議会のチョン・ジンハン政策局長は「経済協力開発機構(OECD)の大半は病院の看護師1人が平均6~8人の患者を看護するのに対し、韓国の病院の看護師たちは平均15~20人の患者を看護する」とし、「看護師たちは1日に10-12時間働いているのに、そのうち食事とトイレに使う時間は平均21分に過ぎない」と指摘した。代案として「COVID-19治療看護師の配置基準を作って看護人材を拡充し、国公立感染症専門病院を設立して感染病を治療できる看護師を教育して訓練すべきだ」と述べた。今年3月の1カ月間、啓明大学大邱東山病院の集中治療室に勤めたキム・スリョン看護師は「保護服が支給されず、過労に苦しむ劣悪な労働環境で、3~5年目の看護師たちが辞めていく」とし、「天使、英雄という抽象的なイメージの下にこうした問題が隠されている」と指摘した。

 また、市民団体は第2のJ君の事例が出ないよう、早めに患者を選別し診療できる政府の「治療コントロールタワー」が必要だと口をそろえた。防疫とは別に治療を行うためには、医療現場で病床を調整し、人員や装備を必要なところに配分できる役割が必要だという。保健医療団体連合のチョン・ヒョンジュン政策委員長は「疾病管理本部を疾病管理庁に昇格し、公共保健医療庁を作って防疫と治療に対応するそれぞれのコントロールタワーを作らなければならない」とし、「公共保健医療システムを作れば、公共大学病院は教育部が、地方の公共医療院は自治体が分けて管理している現在の医療システムを統合して、効率的に運営することができる」と強調した。

クォン・ジダム記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/945989.html韓国語原文入力:2020-05-21 20:55
訳H.J

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