昨年、京畿道広州(クァンジュ)の「ナヌムの家」の生活館の2階建て増築工事の過程で、被害者女性たちの遺品や物品が毀損された事実が明らかになった。運営陣の無理解により歴史的価値のある史料が毀損されたとの批判が出ている。
戦時暴力の被害者であると同時に「慰安婦」被害者の運動の先頭に立った活動家であるハルモニ(おばあさん)たちが生前に使ったり、現在使っている物品は、ささいな物でも保存する価値が十分にある歴史遺産として評価される。しかし、昨年の工事によりハルモニたちが「慰安婦」被害の証言などの功労で受けた人権賞牌が壊れ、勲章(故キム・クンジャさん)と写真(故キム・スノクさん)、市民から受け取った手紙の一部などが雨で湿ってしまった。職員らは、自分たちの引き留めにもかかわらずアン・シングォン所長などの運営陣がハルモニたちの部屋から荷物を全て出し、梅雨の季節の屋外に放置したためだと主張した。
20日、ナヌムの家歴史館のキム・デウォル学芸室長は「工事の前、ハルモニの部屋は歴史的価値が高いため下手にいじってはいけないとはっきり運営陣に伝えた。初めは『分かった』と答えた運営陣は、その後工事業者側から部屋を空けてほしいと要求されると、職員やボランティアの知らない間にハルモニたちの荷物を取り出してしまった」と語った。困難な環境にある学生に学費を支援するなど「寄付天使」としてよく知られた故キム・クンジャさんの部屋の場合、ドアに鍵がかかっていたが鍵が見つからず、ドアを壊してまで中に入って物を片付けたというのが職員らの主張だ。
そのように片付けられた荷物は、生活館の外に一度に移された。キム学芸室長は「雨が降っているのに荷物の上にビニール1枚だけをかぶせていて、全部湿ってしまい、ガラス製のものは新聞紙で包まずに箱に入れたために割れてしまった」と語った。当時の写真を見ると、ビニールの上に雨水が溜まり、所々ビニールが破れて雨水が入り込んでいるのを確認できる。キム学芸室長は「どのハルモニの物品かも確認せずいっぺんに荷物を梱包してしまい、写真すら撮っておらず、その後職員たちの記憶に頼って物品を分類しなければならなかった」と付け加えた。
「慰安婦」研究者や記録専門家らは「人類史的な史料の価値を無視するとんでもないことが起きた」と強く批判した。明知大学記録情報科学専門大学院のキム・イクハン教授は「ハルモニが使ったカップやペン一つ、塗り絵の練習をした紙一枚にも、戦時暴力被害者の心が凝縮されている」として、「『負の遺産』(繰り返されてはならない過去の過ちを象徴する遺産)を毀損した重大な行為」と指摘した。キム教授は「単純にナヌムの家の運営陣を批判して終わることではなく、関連行政機関や政府はこれまでハルモニたちのために何をしてきたのか振り返る契機にならなければならない」と付け加えた。