日本軍「慰安婦」被害者のハルモニ(おばあさん)たちが暮らす京畿道広州市(クァンジュシ)の「ナヌムの家」の運営に関連して、社会福祉法人「大韓仏教曹渓宗ナヌムの家」の理事らが、2年前からハルモニたちの死後に後援金で「ホテル式療養院」を作るという計画を立てていたことが明らかになった。ナヌムの家の法人口座に後援金として貯められている保有金は、昨年12月時点で64億3000万ウォン(約5億6300万円)にのぼるが、理事らはそのような目的のため、ナヌムの家の施設管理者に後援金を節約して使うように頼みもした。
18日、ハンギョレが入手した昨年2月26日の大韓仏教曹渓宗ナヌムの家理事会の録音記録によると、理事のA僧侶は「慰安婦のハルモニの入所者たちは、今後さらに増えるとしても1~2人程度だ。この施設(ナヌムの家)を完全に撤去してホテル式療養施設を作り80人程度の高齢者を迎えれば、きちんと運営して、今後利潤も生み出すことができる」と明らかにした。さらに「ホテル式で作らなければ(他の療養施設との)競争力がない」とし、「後援金の使用を少し節約して、細心の注意を傾けてほしい」との要請まで残した。
これに先立ち2018年2月28日の理事会でも、当時理事だったB僧侶は「(後援金を)100億ウォン(約8億7600万円)ほどかけて100人余りを収容できる療養院を作るとしても、後発の参入者だからうまく作らなければならない」と語った。ナヌムの家法人は定款に「理事の3分の2は曹渓宗の僧籍を有する者とする」と定めている。ナヌムの家は1992年、仏教界を中心とした募金運動により設立された。
実際にナヌムの家は今年2月、法人の事業種類を「無料養老施設・無料専門療養施設」から「高齢者養老施設・高齢者療養施設」に変更する内容を加えた定款改正案を、所管の地方自治体である京畿道広州市に提出した。これについて社会福祉の専門家は「高齢者療養施設に変わると、高齢者長期療養保険からは施設利用料を、利用する高齢者からは食事代などを受け取ることができる」とし「長期療養等級判定を受ければ誰でも入って来られるため、入所対象層を広げて事業を拡張しようとする意図が見える」と述べた。
これに対してナヌムの家の理事として参加しているファピョン僧侶は「療養院を作るというのは確定したことではなく、後援金だけで可能なことでもない」と釈明した。ただし彼は「ハルモニが全員亡くなると事業が無条件で終了するので、その時どうするのか悩むことはあり得ると思う」とし、「療養院を作ってハルモニたちのおかげで他の方々が恩恵を受ければ、それがハルモニの功徳になるだろう」と語った。
しかし、ナヌムの家の内部でも反発が起きている。ナヌムの家歴史館のキム・デウォル学芸室長は「第二次世界大戦の被害者が共同生活をする空間は、世界的にナヌムの家が唯一だ」とし、「学界でも『ハルモニたちの部屋は必ず博物館にしなければならない』と評価している」と述べた。崇実サイバー大学のチョ・ムンギ教授(高齢者福祉学)も「歴史的被害者の高齢者の特殊なニーズと一般の高齢者のニーズが共存する療養院を作るという構想を、どのようにしてするようになったのか疑問」だと語った。
ナヌムの家に入ってくる後援金は2015年の「12・28韓日慰安婦合意」以後、「慰安婦」問題解決に対する社会的関心が高まり急激に増えた。2013年と2014年まではそれぞれ5億3000万ウォン(約4600万円)と8億2000万ウォン(約7200万円)程度だった後援金は、2016~2018年には約17億ウォン(約1億5000万円)ずつ入ってきて、昨年は26億ウォン(約2億3000万円)に増えた。しかし、ナヌムの家の施設が法人から受け取った転入金は、2015~2019年に年間2400万ウォン(約210万円)~6400万ウォン(約560万円)に留まっている。2015年に10人だったハルモニが亡くなり、現在6人に減ったという点を考慮しても、後援支援金に比べると極めて少ない水準だ。職員たちは「ハルモニの通院費などがちゃんと支給されないなど、後援金がハルモニのために十分に使われずにいる」と主張した。