10日の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の就任3周年の特別演説では、南北関係の膠着を「人間の安全保障」という枠組みで突破すると述べた部分も注目される。先月、4・27板門店(パンムンジョム)宣言2周年で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する防疫協力を提案したことの延長線上にあるものとみられる。人間の安全保障とは、軍事的脅威に備える伝統的軍事安保の枠組みを超えて、災害、疾病、環境危機などの生活全般の安全を脅かすあらゆる要因に対処する安保概念だ。
文大統領はこの日「今日の安保は伝統的な軍事安保から人間の安全保障へと拡張され、すべての国家が連帯と協力により力を合わせてこそ対処できる」とし「南と北も人間の安全保障に協力して一つの生命共同体となり、平和共同体へと進んでいくことを希望する」と述べた。文大統領が人間の安全保障に基づく南北協力の例として挙げたのは、COVID-19、マラリア、アフリカ豚コレラなどに対する共同防疫だ。文大統領はこのほかに、南北の鉄道の接続▽個別観光▽非武装地帯の国際平和地帯化▽離散家族再会▽失郷民の故郷訪問▽遺体の共同発掘などの従来の提案もすべて「有効」とし、北朝鮮の呼応を求めた。
大統領府関係者は「文大統領は、人間の安全保障の枠組みで南北協力を広げていけば、国連安保理の制裁から脱して南北がより広範囲に協力事業を行えるようになるとともに、生命・平和共同体へと進んでいくことができるという考えが強い」と述べた。カギは北朝鮮が応じるかどうかだ。文大統領もこれを意識してか、「(北朝鮮も)COVID-19状況のため、様々な困難があるだろう。コロナ禍が収まり次第、我々の提案が北朝鮮に受け入れられるよう、話し合いを続け、説得していく予定」と述べた。