「1学期当たり420万ウォン(約36万7000円)にのぼる授業料を納めても、それに見合うサービスを提供してもらえない状況なのに、教育当局と大学は若者の被害に知らん振りで一貫している」
仁荷大学新素材工学科4年に在学中のイ・ダフンさん(25)は先月24日、「授業料減額の法的根拠がないのは違憲」として憲法訴願を提起した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により大学のオンライン講義が長期化し、「授業料返還」を求める声が高まる中、教育部と大学は法的根拠がないとして責任を押しつけ合っている。これに対し「『大学授業料に関する規則』第3条(授業料の免除・減額)に、大学が納付された授業料に見合う水準の教育サービスなどを提供できなかった場合、授業料を減額しなければならないという規定がないのは立法不作為」として憲法訴願審判を請求したもの。
27日、仁荷大学の学生会館でハンギョレのインタビューに応じたイさんは、「オンライン授業を始めた最初の週からサーバーが『ダウン』し、正常な進行ができなかった。その後も教授との直接的なコミュニケーションが不可能だったりと、講義の質が大きく落ちた」と述べた。実験授業科目についてもこれまで告知がなかったが、数日前になってようやく「5月初めからオンラインで理論授業を先行実施する」という方針を伝えてきた。卒業を控えたイさんは、主に大学の図書館で弁理士の試験勉強をしてきたが、コロナ禍で図書館への立ち入りが出来なくなったため一日中家で勉強しており、時々オンライン講義を聞いている状況だという。
現行の大学授業料に関する規則には、「天災地変等により授業料の納入が困難であると認められるときは授業料を免除、または減額することができる」「休みでないのに休業した場合は、当該学期または当該月の授業料を免除する」等の規定がある。しかしCOVID-19の流行は「天災地変」に当たらず、各大学がオンライン授業で学事運営を続けているというのが教育当局と大学側の立場だ。
イさんは憲法訴願請求で「平等権と財産権の侵害」を問題視した。サイバー大学と一般大学の授業料の差は、大きい場合は10倍ほどあるが、一般大学がサイバー大学のようにオンラインでのみ授業を行いながら、授業料をすべて受け取るのは財産権の侵害だという主張だ。イさんは「韓国放送通信大学は年平均授業料が75万ウォン(約6万5600円)、ソウルサイバー大学は270万ウォン(約23万6000円)程度だ。一般大学がオンライン授業のみを実施する期間中は、授業料を少なくとも3分の1ほどに減額しないことには妥当性がない」と述べた。もし3週間オンライン授業だけを行ったとすると、すでに納付した授業料420万ウォン(約36万7000円)のうち56万ウォン(約4万9000円)ほどの損害を被ったことになるというのが、イさんの主張だ。
何よりイさんは「学位を取るための費用が高すぎることこそ根本的な問題」と強調した。韓国社会に学閥主義・学歴主義が蔓延しているために、大学は教育の質を高めることなく、単に就職のための看板を提供しているだけなのに、高すぎる対価を懐に入れているというのだ。先に韓国大学教育協議会は、大学ごとに経済的に厳しい学生に対して「特別奨学金」を支給することを代案として提示している。しかしイさんは「大半の大学がオンライン授業に投じた費用を透明に公開していない状況で、あたかも大学が施しをするかのように特別奨学金を代案とするのは利己的な態度」と批判した。
韓国私立大学総長協議会の調査結果によると、全国の193の大学のうち89校が5月11日までに対面授業を始めることを明らかにしているが、学生たちの不満は簡単には収まりそうにない。とりあえず1学期はすべてオンライン授業で進めるとした大学は33校に達する。梨花女子大学は、外部からの募金で調達した財源から、所得分位第8階級以下の学生などに約50万ウォン(約4万3700円)の特別奨学金を支給することにしているが、総学生会が約1200人を対象に実施したアンケート調査では、93%が「適切でない」という意見を表明している。梨花女子大のオ・ヒア総学生会長は「教育の質の低下による被害を授業料から返還する形ではないので、『ごまかそうとしてばかりいる』という認識が多い」と述べた。