新型コロナウイルス感染症(COVID-19)事態の長期化で、不十分な遠隔授業や寮費問題など、大学でも被害が相次いでいることを受け、学生らの間では「授業料返還」の声が高まっている。COVID-19の感染拡大を防ぐため、対面授業に代わるものとして始まった遠隔授業期間が長くなり、1学期の授業全体をオンラインで進めるという大学も増えていることから、数百万ウォンにのぼる授業料を一部でも返すべきだという主張だ。これをめぐり教育部と大学は「大学の自律権を侵害するもので、法的根拠がない」という立場を示しており、学生らとの対立が予想される。
慶煕大学に通っているAさん(24)は、3月に入ってから月20万ウォン(約1万8千円)の寮費を払っているが、大田(テジョン)の実家で過ごしながらオンライン授業を受けている。Aさんは6日、ハンギョレに「寮費の払い戻しができるかどうかも分からないし、大学側から何も連絡がない」とし、「しかも、いつ対面授業が始まるかも分からないため、寮から退所することもできない状況だ」と話した。COVID-19でアルバイトも見つからず、無駄な出費が増えているわけだ。これに先立ち、ソウル大学では、退所を希望する学生たちに、寮費を一部だけ払い戻すことにして物議を醸した。「寮の近くに行くことすらなかったのに、お金を無駄にすることになった」という不満の声があがった。
全国各大学の学生たちからは、遠隔授業の内容についても批判が出ている。大学生が利用するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「竹林」にはこれに関する情報提供が相次いでいる。東国大学の学生を名乗る作成者は「リアルタイムのオンライン授業にこだわる教授が、インターネットの接続が途切れる事故が発生したにもかかわらず、補習を行わなかった」と不満を露にした。
実技授業が必要な分野の場合、オンライン講義では代替できない授業までオンラインで行われ、不満の声が高まっている。全科目の授業をオンラインで受けている建築学科の大学院生Bさんは「建築で最も重要なことは設計科目だが、フィードバックがなくて困っている。教授が最大2週間、授業を課題に代える場合もある」とし、「こんな授業にお金を払わなければならないのか、疑問に感じる」と話した。工芸科2年生のCさん(21)も「実技室の使用を含め、授業料だけで1学期に470万ウォン(約42万円)を払っているが、COVID-19以降、実技室の使用が全くできない。教授の授業なしで個人課題のドローイングなどばかりやっているのに、学校は授業料を返していない」と不満を露わにした。
学校現場の不満は具体的な要求として表れている。大学生らが立ち上げた全国大学学生会ネットワーク(全大ネット)は同日午前11時、政府ソウル庁舎前で記者会見を開き、「COVID-19大学街災難時局宣言」を発表した。全大ネットは同日、3月に大学生6261人を対象に行ったアンケート調査結果を発表したが、それによるとCOVID-19の影響で始まった遠隔授業に対する満足度は6.8%に過ぎなかった。「非常に不満」(24.2%)と「不満」(40.3%)はその10倍近い64.5%に達した。全大ネットは「政府は被害事例だけで6000件にのぼる遠隔講義対策を用意し、非常経済時局宣言に伴う大学生経済対策を提示すべき」と求めた。誠信女子大学のチョン・ダヒョン総学生会長は「学校は教育部に、教育部は学校に責任を転嫁している。対策作りのため教育部・大学・学生の3者協議会を招集すべきだ」と主張した。
教育当局と大学は「法的根拠がない」として、こうした主張を一蹴した。キム・ギュテ教育部高等教育政策室長は「授業料の策定権限は各大学の総長にある。政府が授業料返還問題に乗り出せば、大学の自律権を侵害することになる」とし、「この問題に介入する根拠がない」と述べた。大学の授業料は、各学校の教職員や学生、関連専門家などで構成される授業料審議委員会で決定するため、教育部が関与する事案ではないということだ。
「大学の授業料に関する規則」は、授業料を返還しなければならない場合を定めているが、「天災地変などで授業料の納入が困難な時」や「学校の授業を休業した場合」などに限り認められている。COVID-19は「天災地変」とは規定されておらず、現在大学はオンラインで授業を行っているため、この規則は授業料返還の根拠にならない。一部では、現場実習支援費、国際交流支援費など、オンライン講義中に使わない費用を学生に返すべきだと主張しているが、大学側は「固定的にかかる費用」だと反論している。
しかし、COVID-19の被害が深刻な大邱(テグ)地域の一部大学では、特別奨学金という形で授業料の一部を事実上返している。大邱啓明大学では全校生に20万ウォン(約1万8千円)の生活支援学業奨励費を支給することにし、大邱大学は1人当たり10万ウォンの特別奨学金を支給することにした。大学教育研究所のイム・ウンヒ研究員は「授業料の返還ではなくても、学生の学習権の被害を後で補てんする対策も考えられる」と述べた。