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みんな背を向けた…借金を抱えて親になった10代の「生存育児」

登録:2020-01-13 10:03 修正:2020-01-14 14:01
青少年父母に対する初の実態報告書(上) 
10代の父母315人を面接・アンケート 
家族に無視され、国家支援は受けられず 
養育費のために違法な金融、貸付業にも 
 
「行く所なく、日々食べることの心配ばかり」 
サウナや安ホテル、24時間カフェに寝泊り 
妊娠中に5回以上入院 
携帯電話の小口決済使い果たし、高利貸金を利用
青少年未自立家庭支援団体「キングメーカー」にベビー用品が置かれている。スンウン(仮名)夫婦もたびたびここに来て二人目の子どもの面倒を見る//ハンギョレ新聞社

 うずく腰の痛みにイ・スンウン(仮名・20)は目が覚めた。「24時間カフェ」とはいうものの、従業員の視線をうかがわずにはいられなかった。一歳年下の夫、キム・ジフン(仮名・19)がスンウンを不憫そうに見た。妊娠4カ月を迎えた昨年3月、首都圏郊外のあるカフェの椅子の上で夜を明かしたスンウンは、ふと悲しみがこみ上げた。つわりは止まったが、体がむくんで腰が痛くなった。目を覚ましたスンウンは、再びカフェのテーブルに伏せた。1カ月食べ続けているハンバーガーでさえ、今日は食べられるか分からなかった。いつまでこんなふうに過ごせるのか。

 ゆっくり横になれるチムジルバン(サウナ)や安ホテルにでも行きたかった。しかし、出産に対する家族の反対で街頭をさまようことになった二人の「10代の父母」のポケットはからっぽで、携帯電話の小口決済まで使い果たした後だった。お腹の中の赤ちゃんのために胎教をするどころか、家出した後のスンウンは、毎朝ただ一日食べ凌ぐだけの心配をしなければならない境遇になった。何よりも借金の督促をする人らの脅迫がスンウンの心を圧迫した。同年代の知人から借りた10万ウォン(約9500円)は利子とともに雪だるま式に膨らんだ。ニュースで見られた「取り立て」脅迫は、お腹に子どもがいるスンウンを恐怖に陥れるのに十分だった。家族も、国も、友達も手を差し伸べないところで、新しい生命を生んで育てることに決めたという理由だけで「10代の父母」は絶望の底に向き合わなければならなかった。

借金を負っている青少年父母//ハンギョレ新聞社

 ジフンとスンウン夫婦だけではない。幼い年齢で子どもを持った多くの「青少年父母」が家族に見捨てられ、社会的に放置された状態で、違法な消費者金融や個人貸金業者などを利用していることが調査で分かった。ハンギョレは12日、美しい財団と韓国未婚の母支援ネットワークなどが「青少年父母」315人(満24歳以下)を対象に面接とアンケート調査を行った内容をもとに出版した「青少年父母の実態調査研究報告書」を単独入手した。「青少年父母」の実態を書いた事実上初の報告書だ。

 実態調査で、10代や20代前半で子どもを生んだ青少年父母の3人のうち1人は、養育費のため生じた借金を抱えて暮らしていることが分かった。現行法上、子どもがいる青少年を支援する制度は、一人親家族を支援する「一人親家族支援法」だけだ。頼るところのない青少年父母たちが崖っぷちに追い込まれている理由だ。2018年の一年間で、全新生児32万6822人のうち19歳以下の母親を持つ赤ちゃんは1300人、24歳以下の母親を持つ赤ちゃんは1万4600人に上ることを考えれば、国が積極的に乗り出して青少年父母を支援しなければならないという指摘が出ている。

 妊娠がわかった時、ジフンは高校2年生だった。高校1年生の時に高卒認定試験を受けたスンウンには、すでに娘がいた。スンウンは10代の親が子どもを育てるのがどれほど難しいかよくわかっていた。子どもを生んで育てようという決定を主導したのはジフンだった。「『子どもができたから無条件で育てなきゃ』と思ったんです」。8日、ハンギョレと会った10代の父親のジフンは、淡々とした表情で話した。

 しかし、新しい生命の前で家族の反応は冷たかった。昨年2月、ジフンとのスンウンは「子どもができた」と家族たちに“告白”した。ジフンのシングルマザーである母親とスンウンの祖父母は、ともに断固として中絶手術を勧めた。スンウンの母親も21歳の時にスンウンを生んだが、祖父母は孫娘が同じ道を歩むようで怖かった。スンウンとジフンは家族の決定に従うことができず、家を出た。知人の家に泊まりながら食堂のホールの配膳のアルバイトをした。「二人で赤ちゃん育てながら暮らせる」という希望が見えそうだった。

 ジフンの家族が職場に訪れたことから、二人の希望は2週間で水の泡となった。ジフンの母親と叔母は、スンウンを産婦人科病院に呼び、一枚の書類を差し出した。「中絶同意書」だった。遅れて知ったジフンが、スンウンの手を取って病院を飛び出した。こうして青少年父母の「養育絶望期」が始まった。

■誰も助けてくれなかった

 10代の父母を助けてくれた知人が引っ越し、ジフンとのスンウンは言葉通り路頭に迷うことになった。二人は携帯電話の少額決済で安ホテルやサウナを転々とした。安ホテルでは、青少年父母の事情を心配した社長が退室時間を延ばしてくれたが、サウナでは「青少年利用制限時間」があり、夜10時になれば街頭に出なければならなかった。そういう時は24時間カフェに行って一日中時間を過ごした。十分な栄養の摂取が必要な妊婦だったが、スンウンは1カ月間ハンバーガーで食事を済ませた。「肉も食べたいと思っていました。でもすごく高いでしょ。食べられるものは限られていました」

 そうして過ごしているうちに、30万~50万ウォン(約2万8千~4万7千円)だった携帯電話の小口決済の1カ月限度まで使い果たした。二人は同年代の知人に10万ウォンを借りた。知人は「1カ月以内に利子20万ウォンを含め計30万ウォンを返す」という内容の覚書を書くよう言った。すぐに“アルバイト代”をもらえると思い、それほど心配していなかった。二人は気が急いて慌てて覚書を書いた。バイト代が入ってくるとすぐに元金を返した。

 しかし、「利子を返していない」といって借金の督促が始まった。知人はフェイスブックの公開書き込みに「借金を返さない」として実名とともにスンウンの一人目の子どもの写真をアップし、「殺す」と書いた。コメント欄には二人に対する悪口と性的な侮辱があふれた。「あいつら中絶しに行ったから通報しようぜ」という嘘も書かれていた。返済できなかった携帯電話の小口決済と借りたお金まで合わせ、借金は150万ウォン(約14万2千円)まで増えた。「本当にひどかった。(深刻さを)の数字で表すなら、1から10までのうちで10でした。でも疲れきった状態だったので、申告もできませんでした」と、ジフンがいまだにその地獄を忘れることができないかのようにいたましい表情で話した。

 スンウンは借金の督促と不安定な住居のためか、子どもを生む前まで5、6回入院を繰り返していた。下血がひどく救急室に運ばれもした。子宮の胎盤が剥がれる「胎盤早期剥離」の症状だった。病院ではストレスが原因だという。二人とも絶望の中でさまようしかなかった。

 経済的な能力のない青少年父母の多くは、スンウン夫婦のような生活を送る。青少年父母の実態調査研究報告書によると、平均妊娠年齢が満18.7歳の青少年父母315人のうち、37.8%(119人)が「借金がある」と答えた。借金の規模は「1千万ウォン以上5千万ウォン未満」が37.8%(45人)で最も多く、「500万ウォンから1千万ウォンの間」も29.4%(35人)だった。「1億ウォン以上」借金をした青少年父母も4.2%(5人)だった。

 青少年父母がお金を借りる理由は、子どもの養育費と住居費のための場合がほとんどだ。住居費や養育費、生計費のためにお金を借りたと答えた人(複数回答)は77.2%に上った。その次が通信費(15.2%)と学業費(6.1%)の順だった。青少年父母の半分以上(57.6%)が銀行からお金を借りたが、違法な貸付を受ける場合も少なくなかった。家族や知人にお金を借りる人(15.2%)より、個人貸金業者、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の個人融資を利用する人(17.6%)の方が多かった。

■奇跡のように差し伸べられた社会の手

 幸い、スンウンとジフンには奇跡のように手を差し伸べてくれた人びとがいた。スンウンが知り合いのボーカルの先生を通じて人づてに韓国未婚の母支援ネットワークを紹介され、相次いで青少年未自立家庭支援団体である「キングメーカー」とつながった。妊娠5カ月目に入った時だった。二人はキングメーカーが仁川(インチョン)で運営する施設の中にある「119救急ハウス」に滞在できるようになった。施設付帯の狭いスペースだったが、二人にとってはこの上なく大切な場所だった。ジフンはこれまで行けなかった学校に再び出席できるようになった。仁川から京畿道広州まで、朝5時の始発に乗って登校し、後には転校して製パンや木工などの仕事を習った。

 キングメーカーの「119救急ハウス」は、家族や社会から見捨てられた二人の保護膜になってくれた。未成年者で父親になったという理由で学校がジフンを懲戒処分にしようとした時、キングメーカーが「校則にない規定」だと抗議し、懲戒処分を免れた。二人に家計簿をつけさせるなど経済教育も行った。何より同団体は、十匙一飯(助け合い)資金を集め、二人に部屋2つの借家を与えて保証金と家賃50万ウォンを支援した。スンウンはこれまで祖母に預けていた長女も連れてきて、一緒に育てることができるようになった。小さな垣根を持つようになったスンウン夫婦は、自分たちのような青少年父母には住居支援が不可欠だと口をそろえた。「住む所がないから仕事もできないし、学校に行くこともできなかったんです。それで『どうしてここまでして生きなきゃならないのか。全部あきらめてしまおうか』とも思ったけれど、また考え直しました」

 そのように少しは安定した状態で、スンウンは昨年8月、二人の赤ちゃんを産んだ。18歳だったジフンは生まれたばかりの泣いている子どものへその緒を切りながら、手をぶるぶる震わせた。「手の汗のせいで手袋もちゃんとはめられなかった。とてもかわいくて、小さすぎて壊れそうで怖かったんです」

スンウン(仮名)とジフン(仮名)夫婦が手を取り合っている姿。彼らは「私たちのようにちゃんと生活している幼い親もいるので、青少年父母をあたたかい目で見てほしい」と語った//ハンギョレ新聞社

■「青少年父母には住居が一番必要」

 スンウンとジフンは、そうして一人前の親になった。しかし、二人が受けられる政府の支援はいまだに不十分だ。スンウンは「一人親家族支援」を申請し、一人目の子どものために毎週20万ウォンずつもらっているが、一人目の子どもが離乳食を始めてからは1カ月の食費だけで50万~60万ウォンがかかっている。二人とも有料予防接種は受けられずにいる。頼みの「一人親家族支援」さえもすぐに打ち切られるかもしれない状況だ。町の住民センター側が「事実婚関係のため、もう一人親の受給は難しい。基礎生活(日本の生活保護にあたる)受給者の支援を調べてみる」と知らせてきたからだ。

 まだ満18歳のジフンは、親が同意してくれないためスンウンと婚姻届を出すことができない。青少年父母が韓国土地住宅公社(LH)の伝貰(チョンセ、家主に保証金を預けて別途家賃なしに住む賃貸)の賃貸住宅や青年対象の賃貸住宅を申請するには、法的に夫婦として認められるか、一定の保証金を用意しなければならない。基礎生活受給者として生計給与を受けようとしても、扶養義務者であるジフンの親の同意が必要だ。一人親家族の支援でなければ、このような「青少年父母」がサポートを受けられる道は、韓国社会にはまだない。青少年未自立家庭支援団体であるキングメーカーのペ・ボウン代表は「銀行の融資が受けられない10代の未成年の父母は、違法な金融や高利貸金業者に手を出すしかない」とし、「そのようにして生活苦が繰り返され、夫婦関係が断絶すると子どもが放置されたり、虐待される悪循環が生じる」と話した。

 最近数日の間にも、スンウンは交互にインフルエンザにかかった子ども二人をおぶって病院を行き来し、悲しみを堪えた。それでも二人の子どもはこの「幼い親」たちの唯一の希望だ。「子どもを『お日さま』と呼んでいるんです。もともとは丸いからお月さまって呼んでいたんですが、お月さまは暗いでしょ。お日さまのように明るく輝いてほしい」。スンウンが5カ月になった二人目の子どもをぎゅっと抱きしめながら語った。

ペ・ジヒョン、カン・ジェグ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/924159.html韓国語原文入力:2020-01-13 07:35
訳C.M

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