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全農家の半数に農民手当・農民基本所得…農村再生に取り組む自治体

登録:2020-01-04 01:59 修正:2020-01-05 11:40
全羅南道・北道「34万」、忠清南道「16万」農家など 
新年に「農民手当」全国に拡大 

忠清北道、慶尚南道、済州道、江原道が導入推進 
京畿道では普遍的「農民基本所得」 

都市‐農村二極化・地方消滅の危機を反映 
農業者「中央政府も取り組むべき」
全羅南道康津郡の農業者たちが昨年11月11日、WTOにおける開発途上国の地位の放棄を撤回するよう要求するトラクター闘争を繰り広げている=全国農民会総連盟光州全南連盟提供//ハンギョレ新聞社

 新年に全国の多くの農家を対象とした基本所得(ベーシックインカム)実験が行われる。中央政府が事実上取り組まずにいる間に、地方自治体が農業と農村の公益的価値に注目し、社会的補償に乗り出した結果だ。ますます悪化する都市と農村の両極化を解消し、地方消滅を遅らせるための地方自治体の試みと解釈されている。

 2日までのハンギョレの取材を総合すると、今年、全国59万あまりの農家に農民手当、または農民基本所得が支給される。これは全国102万1千農家(2018年末現在)の57.7%にあたり、半数を超える。農民手当は農業者個人にではなく、農家に毎月一定額が支給される「手当」だ。一方、農民基本所得は農家ではなく、農業者個人に支給されることから、農民手当より普遍性を帯びる。

2020年 全国の農民手当と農民基本所得の支給予定状況//ハンギョレ新聞社

 まず、全羅南道が2日から22日まで道内の農漁業者24万3千世帯あまりを対象に農漁民公益手当支給の申請を受け付けることを皮切りに、全羅北道(10万2千世帯あまり)、忠清南道(16万5千世帯あまり)、慶尚北道青松郡(ソンチョングン、6千世帯あまり)が農民手当支給に乗り出す。金額は毎月5万ウォン(約4630円)、年間60万ウォン(約5万5500円)前後が支給される。支給対象は1千平方メートル以上の農地を経営または耕作しているか、農業販売額が年間120万ウォン(約11万1000円)以上、年90日以上農業に従事するなど、農林畜産食品部が定めた農漁業経営体として登録された農家だ。これには農業、畜産業、林業、園芸に従事するすべての農業者が含まれる。これは昨年、全羅南道海南郡(ヘナムグン)が農民手当として年間60万ウォンを、慶尚北道奉化郡(ポンファグン)が農業者経営安定資金として年間50万ウォンを支給した取り組みが、新年に全国的に広まったもの。

 農民基本所得も新年から始まる。京畿道が代表的だ。道は今年下半期から農民基本所得を施行する。農民手当が農地耕作などの特定の条件を満たした農家に支給されるのと違い、農民基本所得は普遍性と個別性・無条件性を志向する。農漁業経営体登録農業者のほかにも、3年以上農漁業に実際に従事したり、長期営農後に引退した農業者などがすべて含まれる。支給単位は農家ではなく農業者であり、1人当たり年間60万ウォンずつ同一額が支給される。夫婦で農業を営めば、夫婦双方に支給される。今年の参加を希望する市・郡で始めるが、3年以内に全農家約43万世帯に拡大するのが京畿道の計画だ。京畿道では、地方消滅指数が高い邑・面・洞のうち1カ所をモデル地域に選定して、同地域の全住民(3千~5千人あまり)に1人当たり年間50万ウォンを基本所得として支給する実験も今年中に行う方針だ。

 忠清北道、慶尚南道、済州道の3道では、住民自身が農民手当条例案を発議中で、江原道は今年中に農民手当を自主的に支給することを計画している。今年農民手当などに投入される地方自治体の予算は計3505億ウォン(約324億円)で、全額が地域通貨で支給される。農民手当が当該地域の町内商圏を蘇らせる「火種」になると自治体は期待している。

 このように各地域が先を争って農民手当の導入などに乗り出すのは、1995年の世界貿易機関(WTO)発足によって国内農産物市場が開放されたのに続き、最近では政府が開発途上国の地位を放棄する方針を固めたことから、農村と農業者の生存が脅かされる状況を放置できないという危機意識を感じたためと分析される。

 実際、農水産物市場の開放後、都市と農村の所得格差は拡大した。農家所得は1995年の都市労働者世帯の所得の95.7%から、2017年には64.1%となり、22年間で31.6%減少した。農村内の両極化も深まった。同期間に、農家所得上位20%と下位20%の格差は9.6倍から11.5倍に拡大している。

 農業者たちは農民手当の導入を喜びながらも、不満を隠せなかった。全国農民会総連盟全北道連盟のパク・フンシク議長は、「地方自治体が農民手当の導入に乗り出すのは歓迎すべきことだが、所得保全が可能な手当ではない。農業の公益的価値が尊重されるよう、中央政府レベルの対策が必要だ」と指摘した。

ホン・ヨンドク、アン・グァノク、パク・イムグン、ソン・インゴル、キム・イル記者

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/capital/923130.html韓国語原文入力:2020-01-03 21:54
訳D.K

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