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ウェブデザイナー「過労自殺」労災認定

登録:2019-10-26 02:43 修正:2019-10-26 07:49
STユニタス勤務の故チャン・ミンスンさん労災認定 
妹失った姉、1年10カ月間の闘いで 
「遺族が被害事実を立証しなければならない制度は改善すべき」
チャン・ミンスンさんの姉、チャン・ヒャンミさんが昨年4月、ソウル江南区の「STユニタス」本社前で会社の謝罪を要求する1人デモをしている。チャン・ミンスンさんは同社のウェブデザイナーとして働いていたが、過労自殺した=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 姉は知りたかった。1カ月前「仕事が多すぎて大変だ」と泣きながら寝入ってしまった妹が自ら命を絶たなければならなかった理由を。葬儀が終わった翌日から妹の職場の同僚や退職者30人あまりを訪ねて歩いた。「しょっちゅうひっくり返る企画が確定するまで待たなければならず、残業が増えた」「会社のストレスで思わず泣いてしまうことも多く、以前にはなかった不眠症になった」。 同僚や退職者たちは自分たちの経験を吐きだした。妹が死んだのは「弱い個人のせい」ではなかった。責任は長時間・夜間労働を指示した会社にあった。いわゆる「過労自殺」だった。

 「公短期(公務員短期学校)」、「資短期(資格証短期学校)」として知られるオンライン講義会社「STユニタス」で働いていたウェブデザイナー、チャン・ミンスンさん(36)が過労に苦しみ、昨年1月に自ら命を絶った事件について、勤労福祉公団は今月16日、業務上の災害による死亡と認めた。ソウル業務上疾病判定委員会は、急速に成長したインターネット業者においてウェブデザイナーとして多大な業務負担があったこと、入社前に治療を受けたうつ病が慢性的な過労と上司の侮辱的言辞などで悪化するなど、チャン氏の業務と死亡の因果関係が相当あると判断した。

 チャンさんの交通ICカードの使用記録を分析した結果によると、正式な勤務時間は午前10時~夕方7時だったが、2017年11月の1カ月間、チャンさんが夜10時過ぎまで働いた日は10日で、会社を出るのが午前0時を過ぎていたのも5日あった。1日12時間以上働いた日は6日だった。チャンさんの姉チャン・ヒャンミさん(40)は、妹がつらさを訴えた2017年12月2日に雇用労働部ホームページに妹の会社に対する勤労監督を請願したが、ソウル江南(カンナム)雇用労働支庁は4カ月が経ってようやく監督に着手した。

 残業・夜間勤務に苦しんでいたのはチャンさんだけではなかった。「STユニタス」の勤労監督にあたったソウル江南雇用労働支庁は昨年11月、前・現職の労働者759人に対し1週間に12時間を超える残業をさせるなどの同社の勤労基準法違反を大挙摘発し、起訴意見を付けて事件を検察に送致したが、検察は今年4月に同社の「労働条件の改善努力」などの情状を酌量し起訴猶予処分とした。

 昨年12月に妹の労災を申請し、10カ月を経て認められたチャン・ヒャンミさんは24日、ハンギョレの電話取材に対し「妹の死が個人の過ちではなく会社の責任ということが認められ、よかった」としながらも、「労災申請の過程で被害事実の立証責任を遺族に過度に負わせているのがもっとも大変だった。こうした制度が必ず改善されることを望む」と述べた。

 過労自殺の労災認定率は年々上がっている。勤労福祉公団が国会環境労働委員会に所属するチョン・ヒョンヒ議員(共に民主党)に提出した資料によると、最近5年間(2014~2018年)に職場が原因の精神疾患により労災認定された522人中、死亡した人の割合は33.7%(176人)で、このうち約80%は「業務上の過労とストレス」により自ら命を絶ったことが分かった。

 今回の決定について、韓国労働安全保健研究所のチェ・ミン常任活動家(職業環境医学専門医)は「長時間労働などにより職場で人が死んでいく韓国社会に警鐘を鳴らした判断」だとし、「絶対的な労働時間だけでなく、最近論議されている弾力勤労制(裁量労働制)のように1日の勤労時間を制限しない労働形態は過労自殺に否定的な影響を及ぼすため、これに対する社会的認識が必要だ」と指摘した。

ソン・ダムン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/914572.html韓国語原文入力:2019-10-25 10:57
訳D.K

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