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労働者を自殺に追い込んだ日本の裁量労働制の波紋

登録:2018-03-06 08:28 修正:2018-03-06 10:25
裁量労働制を適用した不動産会社の社員が自殺 
残業しても事前に合意して時間外手当てはつかず 
安倍政府の働き方改革にも打撃 
働き方の多様化を名分にしたが 
労働者に代価のない残業を強要していると批判
安倍晋三首相//ハンギョレ新聞社

 2016年9月、日本の大手不動産会社の野村不動産で働いていた50代の男性社員が過労のために自殺した。この男性の悲劇は、安倍晋三政権の労働改革の方式に根本的な問いを投げかけている。彼を死に追いやった背景には、日本政府が推進した「裁量労働制」があるからだ。

 裁量労働制は、労使があらかじめ総労働時間を合意し、その時間内で通勤時間を弾力的に調整できる制度だ。賃金は合意した労働時間の分だけ支給され、超過勤務をしても残業手当はつかない。

 4日付の朝日新聞によると、自殺した男性は、マンションの入居者を募集し家主と借主の間の契約と契約解約などを仲介する仕事をしてきた。日本では不動産管理会社を通じて住宅賃貸借をする場合が多い。野村不動産は元々は企画業務をする人にだけ適用しなければならない「企画業務型裁量労働制」を導入したが、規定に違反して営業職まで含ませ、社員1900人のうち600人に裁量労働制を適用した。自殺した社員は、家主と借主の間に衝突が起これば休日にも働いた。残業時間が月180時間以上の時もあった。健康が悪化し、2016年春に休職したが、その後復職し極端な選択を取った。厚生労働省は昨年末、野村不動産に対し、異例の特別指導に出たが、この事件がきっかけだったという事実は当時明らかにされなかった。

 安倍首相は、既存の記者や研究職、企画業務担当者などだけに適用することのできる裁量労働制を一定範囲の営業職と管理職にも拡大適用できるようにする法案を、「働き方改革案」の一つとして今年の通常国会で通過させようとした。だが、厚生労働省が作成した裁量労働制に関連する資料がでたらめだったという事実が明らかになり、窮地に追い込まれた。厚生労働省がアンケート調査を土台に作った資料では、裁量労働制の適用労働者が一般労働者より勤務時間が短いとなっているが、両側に投げかけた質問自体が違うことが分かった。また、裁量労働制の拡大に有利なように誤って記載されたデータが400件以上発見された。安倍首相はでたらめな資料に基づいた国会答弁について謝罪した。拡大法案の提出も延期することにした。

 野党は、安倍首相が導入を推進する別の制度である「高度プロフェッショナル制度」の撤回も要求している。この制度は年収1075万円(1億1044万ウォン)以上の専門職労働者は年104日の休暇を保障する代わり、残業手当を支給しないというのが骨子だ。

 安倍政府の「働き方改革案」は、人口減少による労働力不足と長時間労働を解決することを目標と謳っている。高度成長期のように一律的に会社に集まって長時間労働をしないという趣旨で、残業時間は原則的に年360時間以下に定め、違反した場合は処罰できる法案も推進する。しかし、同時に労働規制緩和も推進している。名分は働く方式の多様化だが、現場では弱者である労働者に代価のない長時間労働を強要する形になっている。

東京/チョ・ギウォン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/834676.html韓国語原文入力:2018-03-05 20:59
訳M.C