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「過労自殺は会社の暴力」…姉はあきらめなかった

登録:2018-07-14 09:59 修正:2018-07-14 10:45
「ウェブデザイナーの妹の死」6カ月後に公式謝罪を受け 
 
「妹の悲劇的な選択」理由を探し  
職場の同僚・退職者30人あまりを訪ね  
「企画が覆されコンファームまで残業…  
ストレスで不眠症」証言相次ぎ 
 
会社側、遺族に「反省」公式謝罪  
「妹はもう帰って来ないのに…虚しい  
企業は残業なくし労働法を守って」
インターネット講義会社エスティユニタスのウェブデザイナーとして働き「過労自殺」したチャン・ミンスンさんの姉チャン・ヒャンミさんが4月17日午前、エスティユニタスが入居するソウル江南区のあるビルの前で会社の謝罪を要求し1人デモをしている=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 今年4月のハンギョレ報道で初めて知られたインターネット講義会社エスティユニタスのウェブデザイナー・チャン・ミンスンさんの「過労自殺」と関連して、会社が責任を認め公式謝罪した。また、会社は生前チャンさんが願った「残業慣行の根絶」を約束した。チャンさんが死亡してから丸6カ月がたってのことだ。

 エスティユニタス公認短期・スコーレウェブデザイナー過労自殺対策委員会(対策委)は、エスティユニタスのユン・ソンヒョク代表取締役が12日午後、チャンさんの遺族らに会って公式謝罪したと13日、明らかにした。会社で講義サービスの改編作業を担当したチャンさんは、頻繁な残業と業務の過程で上司から受けた侮蔑感などを訴え、1月に自ら命を絶った。遺族らは過労と職場内のいじめによるうつ病の悪化がチャンさんの自殺原因だと主張し、会社の謝罪と残業の根絶を要求した。会社はチャンさんの死が会社とは関連がないという態度を見せてきたが、6カ月たって態度を変え、謝罪するに至った。

 対策委が公開したユン代表取締役名義の文によると、「短期間に急激に成長する過程でもたらされた残業文化と業務コミュニケーションや人事管理の問題点など、誤った企業文化を認知し改善しなければならなかったが、私の会社は細心の努力を傾けなかった」とし、「これによって故人が負った苦痛に対して深く反省する」と書かれている。会社は遺族と対策委の要求の大半を受け入れ、▽法定労働時間の遵守▽業務時間外業務指示・課外業務の禁止▽職員を対象に心理相談および治療を支援▽勤務環境や苦情処理のための苦情処理センターの運営などを約束した。会社が態度を変えたのには、チャンさんの3歳違いの姉のチャン・ヒャンミさん(39)の至難の努力があった。ヒャンミさんは「妹がなぜ死んだのかを知りたい」という一心で、充分に悲しむ暇もなく、葬儀が終わった次の日から妹の職場の同僚や退職者30人あまりを訪ねて回った。同僚や退職者たちは「企画が頻繁に変わり、コンファームが出るまで待たなければならず残業が増えた」、「会社から受けたストレスのせいで自分でも気づかぬうちに泣いている時が多く、今までなかった不眠症も出てきた」と証言した。チャンさんが経験した状況と同じだった。このような証言が、会社の責任を認める主な要因となった。ヒャンミさんは13日、ハンギョレとの通話で「証言をしてくださった方々のおかげで妹が会社で負った問題が何なのか、なぜそのような問題が発生したのかを知ることができた」と話した。

今月12日、ソウル良才洞のインターネット講義会社エスティユニタスの社屋でユン・ソンヒョク代表取締役をはじめ経営陣(右)が1月に過労と職場内のいじめを訴え命を絶ったチャン・ミンスンさんの遺族に謝罪している=エスティユニタス提供//ハンギョレ新聞社

 妹の労災申請を準備中のヒャンミさんは、過労自殺に対する社会的認識と労災認定システムが改善されなければならないと話した。現在、自殺は労災の承認率がきわめて低く、過労自殺の明確な概念もない状態だ。彼女は「過労自殺を『弱い個人のせい』にすることは、加害者から一方的に殴られている被害者に『あなたが弱いからに殴られて怪我した』と言うのと同じだ」とし、「過労自殺は会社が個人に加えた暴力であり、被害者のせいにするのではなく会社に責任を問わなければならない」と話した。

 ヒャンミさんは、ゲーム業者「ネットマーブル」の職員でもある。ネットマーブルも同様に昨年の長時間労働と過労死疑惑で雇用労働部から労働監督を受け、その後、残業慣行をはじめとする会社の組織文化がかなり改善されたという評価を受けている。労働監督の前と後の生活の違いを知ったヒャンミさんは、妹が死亡する前の昨年12月に「仕事が多すぎてつらい」と泣きながら眠る姿を見て、雇用労働部のホームページにこの会社に対する労働監督請願を上げた。しかし、雇用部は今日明日と労働監督を遅らせ、ヒャンミさんは一カ月後に妹の死に直面しなければならなかった。雇用部は4月にハンギョレの報道がされてから、会社を家宅捜索するなど強力な労働監督を進行中だ。

 ヒャンミさんは「終わりではなく始まり」と言った。彼女は「謝罪を受けなければならない私の妹はもうこの世にいない。数千回謝罪をしても私の妹はもう帰ってこない。代表取締役の謝罪を受けたが、空しい思いが先に立った」と言いながらも、「すべての企業が妹の生前の願いどおり、残業せず、労働基準法を守り、働く人が尊重される会社へと変わってほしい」と話した。

パク・テウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/853238.html韓国語原文入力:2018-07-13 22:54
訳M.C

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