本文に移動

金正恩「金剛山南側施設をすべて撤去せよ」…“先に動いて状況を揺さぶる構想”か?

登録:2019-10-23 22:41 修正:2019-10-24 07:35
南北関係揺さぶり、膠着局面の打開を念頭に置いたか 
南北9月平壌共同宣言に正面から背馳 
「南側との合意撤廃」…南北関係、破局と反転の分かれ目
金正恩・北朝鮮国務委員長が金剛山観光地区を現地指導し、金剛山に設置された南側施設の撤去を指示したと朝鮮中央通信が23日報道した//ハンギョレ新聞社

 金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長が、金剛山(クムガンサン)観光地区を訪れ「総合的な国際観光文化地区構想」を明らかにし「むさくるしい南側の施設をすべて撤去し、私たちのやり方で新たに建設しなければならない」と指示したと、23日付の労働新聞が1面で報道した。金正恩委員長は「南側の関係部門と合意して」と但し書を付けながら、一方的に撤去しはしないとの意向を明らかにした。

 金委員長のこうした指示により北側が南側との協議に出れば、その結果により南北関係が破局に進むか、劇的に反転するかという全く異なる道を進むことになる。ハノイでの朝米首脳会談合意が見送られて以後、悪化の一途をたどる南北関係が決定的な分かれ目に入った。

 韓国政府はひとまず、イ・サンミン統一部報道官を通じて「私たち国民の財産権保護、南北合意の精神、金剛山観光の再開と活性化次元でいつでも協議に臨む計画」としながら、三つの基準を強調した「統一部の立場」を出した。

 金委員長は、金剛山観光地区内の海金剛(ヘグムガン)ホテル、文化会館などの施設を見て回り「民族性がまったく感じられない、ごたまぜ式、仮設小屋、隔離病棟」のように「老朽、ボロ」で「見るだけで気分が悪くなる、むさくるしい」と猛非難した。金委員長が現地指導の時にこのように強い叱責を吐き出すことは珍しくない。

 だが、金剛山観光事業は、金委員長の父親の金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の「遺言事業」だ。すでに故人となった金正日委員長とチョン・ジュヨン現代グループ名誉会長が合意して、1998年11月18日に始まった、2000年6月、史上初の南北首脳会談の呼び水であり、南側の観光客200万人が訪れた南北和解協力の代表的象徴だ。

 金委員長の「すべて搬出しろ」という指示が衝撃的で、内外で波紋が大きくならざるをえない理由だ。金委員長は「金剛山に対する観光事業を南側を前面に出してすることは望ましくない」と話した。具体的には「簡単に観光地を差し出し、何もせず利益を得ようとした先任者たちの誤った政策」として「国力が弱い時に他人に依存しようとした先任者の依存政策が大きな誤りだった」と批判した。父親であり「無誤謬の先代首領」である金正日委員長の名前は直接口にしなかったとはいえ、事実上父親の『遺言事業』の方式を批判したわけだ。

 2012年の執権以来初の金正恩委員長の今回の金剛山現地指導は、ハノイ会談以後解けない朝米交渉など、朝鮮半島情勢の活路を開こうとする「先に動いて状況を揺さぶる」性格が強い。金委員長が白頭山(ペクトゥサン)に登って「世界が驚く雄大な作戦」を構想したという労働新聞16日付報道以後、初の対外信号の発信だ。

 金剛山観光事業自体は、国連と米国の対北朝鮮制裁対象ではない。したがって、南側施設の撤去指示は米国と国連の制裁とは直接関連がなく、ドナルド・トランプ米大統領との合意違反でもない。一方、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と「条件が整い次第、開城(ケソン)工業団地と金剛山観光事業をまず正常化」すると約束した「9月平壌共同宣言」の精神には真っ向から反する。新年挨拶で「前提条件も見返りもない金剛山観光再開用意」を強調した金委員長が「金剛山が10年余り放置され、土地がもったいない」として下した今回の指示には、朝米関係に直接影響を与えないながらも南北関係を揺さぶり長期膠着局面を打開しようとする狙いが込められているのかもしれない。実際、金剛山現地指導には対南政策を総括するチャン・クムチョル統一戦線部長、対米交渉を総括するチェ・ソンヒ外務省第1次官が異例の同行をした。

金正恩・北朝鮮国務委員長が、金剛山観光地区を現地指導して、金剛山に設置された南側施設の撤去を指示したと朝鮮中央通信が23日報道した。金委員長が4カ月近く公開の席に姿を見せなかった李雪主女史とともに歩いている/聯合ニュース

 金委員長が金剛山で発信した信号は二重に複合的なものだ。三池淵(サムジヨン)・元山葛麻(ウォンサンカルマ)・陽徳郡(ヤンドクグン)温泉地区建設からなる3大国策事業の延長線上にあるという点で“予想可能な歩み”であり、南北協力の側面では“変化”の兆候がある。金委員長が「金剛山国際観光文化地区構想」により「撤去と建設」を指示しながらも「南側関連部門と合意して」と但し書きを付けたのがそうだ。

 金剛山観光事業は、現代峨山(アサン)が南側の事業主体となり50年間独占事業権を確保している。北側は、事業の長期中断の原因になった2008年7月の観光客パク・ワンジャさん殺害事件にともなう葛藤の渦中に、南側資産の「没収・凍結」(2010年4月)と「現代独占事業権の取り消し」(2011年4月)措置を一方的に発表した。もちろん韓国政府と現代峨山はこれを認めていない。今後の南北協議の過程で、南側が建設・運営した南側施設の権利主体問題で南北葛藤がもたらされるリスクは相当に大きい。現代峨山は「観光再開を準備している状況で、突然の報道に当惑しているが落ち着いて対応していく」という一文の反応だけ出して口を閉ざしている。

 金委員長は「金剛山と元山葛麻海岸観光地区、馬息嶺(マシンニョン)スキー場が一つに連結された文化観光地区として建設されなければならない」として「金剛山観光地区総合開発計画を先に作成・審議して、3~4段階に分けて年次・段階別に建設すべき」と指示した。さらに観光飛行場・観光専用列車路線・港湾旅客ターミナル建設なども指示した。制裁解除以後の海外観光客の誘致を念頭に置いた「金剛山~元山葛麻~馬息嶺」を結ぶ野心に充ちた構想であり、2002年に指定した「元山葛麻~金剛山観光特区」計画の具体化だ。韓国政府の元高位関係者は「金委員長も言及した私たちの“合意権限”を活用して、私たちの代案を入れた逆提案でむしろ機会の入り口としなければならない」として「新しい金剛山観光事業を北側と用意・実行するには、何としても米国の説得をやり遂げる計画と意気込みが欠かせない」と話した。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/914296.html韓国語原文入力:2019-10-23 20:38
訳J.S

関連記事