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[ニュース分析]実務交渉直前SLBM…北朝鮮、米国に圧力をかける「強気の攻勢」

登録:2019-10-03 06:13 修正:2019-10-03 13:10
「朝米交渉の再開」発表から13時間後に 
海上で発射…北極性と推定される 

交渉を控えて強力な武力誇示 
「米国の譲歩」を引き出すための手段 
米国、「安保理決議を順守すべき」
北朝鮮が先月10日、金正恩国務委員長の指導のもと、超大型放射砲の射撃実験を再び行ったと、北朝鮮メディアが11日付で報道した。朝鮮中央テレビが公開した写真で、超大型放射砲が炎を噴きながら打ち上げられている//ハンギョレ新聞社
北朝鮮、北極星3と見られるSLBM発射//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮が米国との非核化実務交渉の再開日程を発表してから13時間後に、「北極星」系列と推定される潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。北極星は射程距離が1000キロ以上の中距離弾道ミサイルだ。北朝鮮は昨年5月以降、10日にわたり短距離飛翔体を発射したが、潜水艦発射弾道ミサイルを発射したのは初めてだ。朝米実務協議を控え、一層攻勢を強めているのだ。

 合同参謀本部は2日、「韓国軍は今日午前7時11分に北朝鮮が江原道元山(ウォンサン)北東側の海上から東に発射した不明の弾道ミサイル1発を捉えた」とし、「今回発射した弾道ミサイルは、北極星系列と推定される」と発表した。元山から北東側17キロメートルの海上から発射されたミサイルの最大高度は910キロメートル以上、射程距離は約450キロメートルだったという。北極星系列の弾道ミサイルの射程距離が1000~3000キロメートルであることから、高角で発射し、射程距離を減らしたものと推定される。合同参謀本部は「追加のデータは韓米情報当局が精密分析を行っている」と述べた。

 北朝鮮の今回の発射は「朝米が4日の予備接触に続き、5日に実務協議を進めることで合意した」というチェ・ソンヒ外務省第1次官の発表が出た翌日に行われた。北朝鮮が差し迫った朝米交渉を控え、米国に対する圧力をさらに一段階引き上げたものと見られる。核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験は行わないというドナルド・トランプ米大統領との約束を守りながらも、潜水艦発射弾道ミサイルの発射という強力な武力誇示を通じて、今回の交渉で「新たな計算法」を提示するよう、米国に圧力をかけているということだ。

 潜水艦発射弾道ミサイルは、潜水艦という投発手段の隠密性のため、短距離ミサイルとは戦略的意味が異なる。米国を実質的に脅かすには北朝鮮の潜水艦の能力やミサイルの性能に疑問が残るが、潜水艦発射弾道ミサイルは大陸間弾道ミサイル(ICBM)や戦略爆撃機とともに、米国が3大「核戦力」に挙げている敏感な兵器だ。北朝鮮と交渉して米国の安全を確保したというトランプ大統領の業績誇示に影を落としかねない。韓国政府関係者は「トランプ大統領に直接圧力をかけることで、米国の譲歩を強要している」とし、「今回の実務協議で望むものが手に入らなければ、さらに強い武力誇示に出る可能性があるというシグナルと言える」と指摘した。国家安保戦略研究院のチョ・ソンニョル諮問研究委員は、「米国が今回の交渉で新たな計算法を提示しなければ、人工衛星の発射の形で大陸間弾道ミサイルを発射することもあり得るという警告をした」と分析した。

 朝米間で今回の実務協議の議題が完全にまとまっていない状態で、北朝鮮が日程を発表したのではないかという見通しも、北朝鮮のこのような強引さを裏付ける。米国は北朝鮮との実務交渉の日程について「1週間以内」と述べ、予備接触と実務交渉の日付を具体的に示した北朝鮮と温度差をうかがわせた。チョ研究委員は「米国が慎重な態度を示しているのは、まだ北朝鮮と議題を調整していないか、予備接触という概念に同意していないことを意味する」とし、「予備接触の成果がよくない場合、北朝鮮が実務協議に乗り出さない可能性を懸念しているものとみられる」と指摘した。

 朝米非核化交渉に備えた国防力強化の意志が、今回の発射に込められているという分析もある。国家安保戦略研究院のイ・スヒョン責任研究委員は、「軍事戦略的な側面で北朝鮮独自のプログラムを進める意味もある」とし、「核廃棄を念頭に置き、安全保障のための最後の手段として潜水艦発射弾道ミサイル能力の完成を目指しているものと見られる」と分析した。さらに、「我々には確かな非核化への意志があるが、米国が躊躇すれば、我々の核能力は増強されるという武力誇示を展開し、米国が交渉にさらに積極的に乗り出すようシグナルを送っている側面もある」と指摘した。

 米国がこのような北朝鮮の圧迫にどう反応するかが注目される。今のところ、交渉の枠組みが崩れる可能性は低いという見通しが多い。米国務省公報室関係者は2日、ローマで「我々は(北朝鮮に)挑発を控え、国連安全保障理事会(安保理)決議による義務を順守すると共に、朝鮮半島の平和と安定を保障して非核化を達成する上で自身の役割を果たすため、実質的で持続的な交渉に臨むことを求める」と述べたと、ロイター通信が報道した。マイク・ポンペオ米国務長官は現在、イタリアのローマを歴訪している。国務省関係者の発言は、今回のミサイル発射は北朝鮮のすべての弾道ミサイルの発射を禁止した安保理決議に違反しているが、これを機に北朝鮮と交渉を中断することはないという意思を示したものと言える。

 朝米交渉に詳しい外交消息筋は「北朝鮮は第3回朝米首脳会談に進むための実務協議を、米国は非核化の成果を出すための実務協議を重視するという点で、重点は異なるものの、どちらも今回の実務交渉をきちんと進めたい確固たる意志はある」とし、「交渉の決裂はないだろう」と述べた。朝米実務交渉の北朝鮮側代表のキム・ミョンギル外務省巡回大使が3日午後、北京を出発し、スウェーデンのストックホルムに向かう中国国際航空旅客機航空券を予約したことが確認されたのも、実務協議が予定された日程どおりストックホルムで行われることを示している。

 米国や国連安保理で今回の発射が安保理決議に反するという点を問題視しても、朝米対話が進展する兆しを見せている最近の流れから、当面の追加制裁は行われないものとみられる。国連安保理は2016年4月、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイルを発射した時も、非難声明を採択するに止まった。

 大統領府国家安全保障会議(NSC)は同日、常任委員会緊急会議を開き、北朝鮮の今回の発射に強い懸念を示すと共に、「朝米協議が成功裏に開催され、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的平和構築に向けて実質的な進展が得られるよう、米国を含む国際社会とともに外交的な努力を傾けていくことにした」と明らかにした。

ユ・ガンムン、パク・ミンヒ、イ・ワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/911820.html韓国語原文入力:2019-10-02 21:21
訳H.J

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