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和田春樹教授「安倍の『韓国を相手にせず』は平和国家日本の終焉」

登録:2019-08-26 22:22 修正:2019-08-27 08:23
ソウル大学日本研究所「韓日関係:反日と嫌韓を越えて」学術会議で基調講演 
慰安婦合意の締結過程と朝鮮半島平和プロセスに対する安倍の反感を指摘 
キム・ヒョンチョル所長「部品・材料分野の技術開発と
新南方政策で禍転じて福とすべき」
26日ソウルの明洞にある銀行会館で開かれたソウル大学日本研究所の「韓日関係:反日と嫌韓を越えて」学術会議で、和田春樹・東大名誉教授が基調講演をしている//ハンギョレ新聞社

 和田春樹・東大名誉教授が、安倍晋三首相の「韓国を相手にせず」政策を強く批判した。

 和田教授は、ソウル大学日本研究所が26日にソウルの銀行会館国際会議室で開催した冠廷日本研究学術会議で基調講演をし、「最近、日本の専門家と政府関係者の口からは『38度線が東海に下りてきている』として、韓国を排除し韓国との関係を切ることを覚悟しようという議論が出ている」とし、「北東アジアの結合を捨て、中国・ロシア・韓国、北朝鮮という大陸ブロックに対抗して米国・日本・台湾の海洋ブロックで結束するという意味で、こうした安倍首相の『韓国を相手にせず』政策は平和国家日本の終焉」と憂慮した。

 和田教授は、安倍首相が韓国に対して貿易報復をはじめとする攻撃的政策に進むようになったことと関連して、米国オバマ行政府の“圧力”の中で韓日慰安婦合意を締結したことに対する反感と、文在寅(ムン・ジェイン)政府で推進された朝鮮半島平和プロセスの衝撃を指摘した。

 安倍首相は2012年12月26日、二回目の首相就任をし、河野談話に代わる新たな談話を出すと表明した。しかしその後、米国のオバマ行政府は日本政府が慰安婦問題に対する措置を取ることを要求し、2014年末から安倍政権は韓日間で慰安婦問題の秘密交渉を始めざるをえなかった。その過程で、安倍首相は韓国に対する反感を育てたのだろうと和田教授は指摘した。2015年の日本の外交青書の韓国関連記述からは「自由、民主主義、基本的人権などの価値を共有」という表現が削除された。2015年12月28日、ソウルで韓日の外交長官が「韓日慰安婦合意」を発表したが、安倍首相は「この措置に多くのトゲを付け、それを飲み込んだ韓国政府が出血するようにさせた」と和田教授は話した。首相の行為という記録を残さない一方で、“最終解決”と主張して、国際会議に持ち出すなと固く約束を取り付けようとし、一切の謝罪メッセージを送ることを拒否した。

 和田教授は「2018年南北首脳会談と、相次ぐ朝米首脳会談は安倍晋三首相に二重の衝撃を与えた」として「文在寅大統領がドナルド・トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の出会いを仲介し、トランプは安倍と相談なしで首脳会談をすると即答したため」と指摘した。続けて「こうした文大統領の行動は、日本人拉致問題で引き続き北朝鮮に圧力を加えてきた安倍首相の態度と対立するものだった」として「北側が拉致問題の交渉を受け入れず、韓・米とは対話を継続するのを見て、安倍首相は前例のない窮地に追い込まれることになった」と分析した。結局、安倍首相のこうした変化に対する反感が、韓国に対する経済報復措置につながったということだ。

 和田教授は、最近日本の一部から出ている、「韓国との関係を断つ」や「韓国は重要でないので米国との同盟を強化し中日関係を安定的に維持しよう」という主張を、日本の世論が受け入れたり成し遂げるはずがないと強調した。

 和田教授は、日本政府が韓国をホワイト国(戦略物資輸出簡素化対象国、現在は「グループA」)リストから除外する方針を発表する直前の先月25日、日本の進歩的知識人など78人と共に「韓国は『敵』なのか」という声明を発表もした。

26日、ソウル・明洞の銀行会館で開かれたソウル大学日本研究所の学術会議で参席者が討論している=パク・ミンヒ記者//ハンギョレ新聞社

 「韓日関係:反日と嫌韓を越えて」をテーマに開かれたこの日の学術会議で、ソウル大学日本研究所のキム・ヒョンチョル所長(元大統領府経済秘書官)は「日本の経済報復は経済産業省の誤った選択」だとし、韓国が今回の事態を契機に材料・部品技術の開発と新産業育成、新南方政策と平和経済推進などを通して禍転じて福となす機会にすることができると強調した。

 キム所長は「日本の報復措置がねらったサムスンやハイニックスは世界的大企業であり、日本の材料・部品の中堅企業に比べて優れたバイイングパワーを有している」とし、「日本企業らも韓国内工場の増設、海外工場を通じた迂回輸出など自己救済策を用意して、日本政府に対する不満を提起している」と話した。キム所長は「大企業と中小企業間の共生、企業・大学の産学研協力、政府の部品材料産業育成など、今まで議論はされてきたが実践されなかった宿題を一気に解決できる重要な機会としなければならない」とし「研究開発(R&D)政策も既存の研究費投入を超えて、特定の材料・装備品目を定め開発できるまで最後まで研究開発を継続し、それを他の分野に拡張していく方式で推進しなければならない」と話した。

 キム所長は、今回の日本の経済報復は韓・中・日が分業構造を通じて利益を得る「北東アジアの繁栄構造」を揺るがす愚を冒したとして、韓国は今後、新南方政策と南北平和プロセスを推進し今回の状況を克服しなければならないとも提案した。

 ソウル大学日本研究所のナム・キジョン教授は、現在の危機は1965年に締結された韓日基本条約と請求権協定に基づく65年体制に基づいているとしながら、不完全だった65年体制を克服し、植民支配の不法性を明確にすることが韓国政府の目標にならなければならないと話した。ナム教授は「韓日基本条約の解釈と関連して、韓国政府は植民支配の不法性を前提としているが、日本は植民支配が合法であったという解釈に立っていて、その間隙を狭めることができずに『合意できないということに合意』して問題をたたんだ」と話した。それと共に「日本はすでに1998年の金大中(キム・デジュン)-小渕共同宣言で植民支配に対する謝罪と反省を、2010年の菅直人談話では植民支配が韓国国民の意思に反したものと認めるに至っただけに、植民支配の不法性を文書化し韓国と日本が共有することだけが残っている」と説明した。

 ナム教授は「植民支配の不法性を文書化し、65年体制の揺らいだ基礎を強化して、新しい韓日関係に進入することができる」としつつ「合わせて韓国も、日本が努力してきた歴史問題にたいする謝罪を認識し、日本の国民と政府が植民支配の不法性を受け入れるならば、これ以上の賠償は要求しないという方法を取ることができる。これを基礎として朝日国交正常化と南北日による植民支配の最終的清算に進むこともできる」と提案した。

 ソウル大学日本研究所のキム・ヒョジン教授は最近、日本の愛知県で開幕したトリエンナーレで「平和の少女像」展示が中断されたことに対して「日本の少女像に対する反発を指摘するよりは、『表現の自由』の問題を浮き彫りにすることが、さらに訴求力のある戦略」という意見を明らかにした。キム教授は「少女像を強調すれば強調するほど、むしろ平和の少女像を口実に展示会を攻撃する日本国内の嫌韓論者に反対根拠を提供するのではないか、熟慮する必要がある」として「日本の市民社会は依然として検閲に対して強い反感を持っていて、これは重要な連帯の根幹になりうる」と強調した。

パク・ミンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/907181.html韓国語原文入力:2019-08-26 18:04
訳J.S

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