韓国政府は、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了により安保態勢に支障が出るのではないかという懸念に対し、2014年に韓米日が締結した情報共有に関する取り決め(TISA)を活用すれば良いと強調する。軍事分野の専門家と政府内外の消息筋はTISAとGSOMIAの間に差はあるものの、GSOMIAの不在により安保に大きな支障が生じることはないと口をそろえる。
キム・ヒョンジョン大統領府国家安保室2次長は23日、「韓日GSOMIAが終了することによって、安保に関連した軍事情報の交流が不足するのではという問題について懸念されるかもしれない」とし、「これに対しては、2014年12月に締結された韓米日3国間の情報共有に関する取り決めを通じて、米国を媒介とした3国間の情報共有チャンネルを積極的に活用していくだろう」と明らかにした。TISAは、2013年2月12日の北朝鮮による3回目の核実験後に北朝鮮核脅威が現実化され、情報共有を目的に3国が2014年12月29日に締結したというのが当局の説明だ。だが、2012年に市民の反対で韓日GSOMIAの締結が失敗に終わった後、米国が窮余の策として出した代案と評価される。TISAを通じて、韓国や日本が米日・韓米間で共有された情報を受け取ろうとする時には当該両国の同意が必要であり、共有された秘密情報は国際法的に保護が可能だ。TISAとGSOMIAは共に2級以下の秘密まで共有でき、共有可能な情報の水準にも差がない。
ただし、TISAは米国の仲介および承認の手続きが必要で、GSOMIAよりは情報共有に時間がかかることがありうる。国防当局間の取り決めであるTISAと、国家間の協定であるGSOMIAの重量感が違うのも事実だ。TISAを通じて共有する情報は北朝鮮の核・ミサイル威嚇が該当するが、GSOMIAの場合にはこれと関連した直・間接的な情報までが共有範囲に入るという差もある。例えば、ヒューミット(人的情報)のような対北朝鮮情報が代表的だ。だが、ヒューミットの収集能力は韓国が優勢と知られている。
2016年の締結以降、現在までに韓日がGSOMIAで情報を共有した回数は、北朝鮮が6回目の核実験を敢行した2017年には19件だったが、朝鮮半島の雪溶けムードが醸成された2018年には2件のみだった。GSOMIAを通じて北朝鮮の核・ミサイル威嚇関連情報を主に共有するだけに、威嚇が減れば協定の実効性も下がるわけだ。最近、北朝鮮が5~8月に8回にわたり短距離発射体を発射したが、この場合には韓米の情報当局がリアルタイムで情報を共有するので問題がなく、日本の情報が必要な場合にはTISAを活用すれば良いという意見が多い。
政府関係者は「GSOMIAの終了が、韓国の安保に及ぼす影響は大きくない」としつつも「ただし、米国の要請でGSOMIAが締結されたのにそれを韓国が終了したので、今後影響があるのではないかと憂慮している」と話した。国家安保戦略研究院のチョ・ソンニョル諮問研究委員は「北朝鮮のミサイルと関連した早期探知は韓国の方が優勢であり、むしろ日本がこうした情報を要求する」として「GSOMIAの終了は決して韓国にとって損害ではない。一方では、GSOMIAの終了で米日が願う中国を狙った韓米日地域同盟の可能性を戦略的に遮断したという点で意味がある」と話した。
チョン・ギョンドゥ国防部長官は23日午前、マーク・エスパー米国防総省長官と30分余り電話通話をして、GSOMIAを終了することに決めた背景を説明した。エスパー長官は、情報制限などに憂慮を表わし、韓米日安保協力維持のために継続的に協議し、緊密に疎通する必要性を強調したと伝えられる。