日本の安倍政権の対韓“輸出規制措置”で全面化した韓日対立に、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はどのように対処するだろうか。二通りの道がある。一つは民族共助・南北連帯、もう一つは韓日対立から朝日関係正常化の糸口を探る道だ。
北朝鮮は反日・反米・統一を国のアイデンティティの中心に据えてきただけでなく、いつも韓国に「我が民族同士」(6・15南北共同宣言)、「民族の利益を優先し、それにすべてを合わせる原則」(「労働新聞」7月16日付)を強調してきた。ならば、「反日民族協力と南北連帯」は北朝鮮の選択ではなく、必須経路に近い。ただし、これは「金日成(キム・イルソン)・金正日(キム・ジョンイル)・金正恩」に続く最高権力を神話化する統治イデオロギーであり、現実政策そのものではない。北朝鮮は常に「抗日」を叫びながらも、金日成主席の時代から日本との関係正常化の道を模索してきた。外交の孤立からの脱皮と経済再建の物的基盤づくりという体制の切実な課題につながっているためだ。
“金正恩の選択”を推測する糸口は北朝鮮メディアの報道にある。労働党中央委員会機関紙で最高権威の“必読メディア”である「労働新聞」と、代表的な対外メディアである「朝鮮中央通信」は連日、安倍政権の行動を批判し、不買運動など韓国社会の動向を詳細に報じている。「労働新聞」は7月10日付で、安倍政権の「輸出規制措置」を北朝鮮メディアでは初めて取り上げており、「わが民族は千年宿敵の日本の罪悪を必ず千百倍に清算していくだろう」として攻撃を始めた。安倍政権の意図に対する分析は「朝鮮中央通信」の論評(7月19日付)によくまとめられている。第一に「朝鮮半島の平和気流の破壊」と「軍国主義の野望の実現に有利な政治環境作り」、第二に「南朝鮮(韓国)経済への打撃」と「親日賦役派勢力の政権創出の道を開くこと」、第三に「主人(米国)を刺激し、朝鮮半島問題で排除された自分(日本)の利益を重視してもらおうという打算」、第四に「右翼勢力の結束、憲法改正など宿望(長年の願い)の実現」などだ。そして「日本は謝罪し、賠償しなければならず、それなしには絶対に平壌行きの切符を手にすることはできない」と強調した。
強硬な対日姿勢といえる。ただし、注目すべき部分がある。北朝鮮は外務省報道官の談話やインタビューなど、同問題と関連した当局レベルの公式見解を出していない。北朝鮮は韓国に当局レベルの協力も提案しなかった。要するに、韓日の対立局面で金委員長の立ち場は“行為者”ではなく、“論評者”に近い。安倍政権の行動を激しく非難するものの、南北当局レベルの協力は推進しない「金正恩流の二重軌道(ツートラック)戦略」だ。
北朝鮮事情に詳しい元高官は「北朝鮮は労働新聞などで日本を強く批判しながらも、時が来れば日本と首脳会談を推進する可能性がある」と指摘した。しかし「近いうちに朝-日の間に何かが行われる可能性はない」と述べた。金委員長は3回目の朝米首脳会談の早期実現に外交資源を“集中”させており、他の所に目を向ける余裕がない。北東アジアの力学構図から、朝米関係が進展しない限り、朝日関係の改善の試みが成功するのは難しいという歴史の教訓も無視できない。
朝-日は「朝鮮労働党・自由民主党・日本社会党の3党共同宣言」(1990年9月28日)、金正日総書記と小泉純一郎首相の史上初の朝-日首脳会談と「朝日平壌(ピョンヤン)宣言」(2002年9月17日)で、関係正常化を試みたが、それぞれいわゆる「第1次北朝鮮核危機」と「第2次北朝鮮核危機」の勃発で白紙化された。当時、日本外務省幹部が「日本が動くと、米国が必ず制止にかかるような気がする」と嘆いたのも、そのためだ。金委員長時代に「拉致問題の再調査」と「制裁の一部解除」を交換する「ストックホルム合意」(2014年5月29日)で再び関係正常化を図ったが、やはり朝米対立の激化で失敗に終わった。「対北朝鮮制裁の強化」が口癖の安倍首相が「拉致問題の協議」という前提条件を取り下げ、「無条件の日朝会談」を提案(5月2日付の産経新聞とのインタビュー)したが、金委員長は全く反応を示していない。