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[ニュース分析]北朝鮮、レッドラインを守りながらも、同時多発的に米国を圧迫

登録:2019-07-26 06:15 修正:2019-07-26 14:23
北朝鮮の短距離ミサイル発射 
 
6・30板門店会合から1カ月も経たないうちに 
ASEAN安保フォーラムへの不参加を通知 
潜水艦の視察とミサイル発射まで 
韓米合同軍事演習を口実に圧迫攻勢 
朝米交渉の主導権を握る狙いと見られる
北朝鮮が25日、江原道元山虎島半島一帯で、新型短距離ミサイル2発を発射した。写真は今年5月9日、朝鮮中央通信が報じた北朝鮮前方及び西部戦線防衛部隊の火力打撃訓練途中、移動式ミサイル発射車両(TEL)から発射される短距離飛翔体の姿//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮のリ・ヨンホ外務相のASEAN地域安保フォーラム(ARF)への欠席通知や、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の新しい潜水艦工場の視察、77日ぶりの短距離ミサイル発射、世界食糧計画(WFP)を通じた韓国産コメ5万トン支援拒否の動きなど、8月に予定された韓米合同軍事演習を狙った北朝鮮の神経質な反発と圧迫が同時多発的に現われている。

 “全面戦”の様相ではない。6・30板門店(パンムンジョム)会合を含め、昨年初めから、文在寅(ムン・ジェイン)大統領や金正恩委員長、ドナルド・トランプ米大統領がトップダウン方式で進めてきた朝鮮半島平和プロセスの大きな枠組みは守りながらも、望みを叶えるためにレベルと強さを調節した“制限的打撃・圧迫戦略”に近い。6・30板門店会合で作られた新たな局面で、情勢と交渉の主導権を握るための動きだ。北東アジア情勢を揺るがす核・長距離ミサイルの実験・発射などといった“戦略的軍事行動”を排除するため、自分たちが先に要請したコメ支援を拒否することまで“圧迫カード”として使う無理筋まで動員されている。

北朝鮮、短距離ミサイル2発発射//ハンギョレ新聞社

 25日未明、5時34分と57分、北朝鮮の江原道元山(ウォンサン)の北側にある虎島(ホド)半島一帯で、北朝鮮の東海に向かって短距離ミサイル2発が発射された。合同参謀本部は「2発とも短距離ミサイルで、高度50キロメートル以上で、最初のものは430キロメートル、2発目は690キロメートルを飛んだ」と発表した。政府は国家安保会議(NSC)常任委員会会議の後、「新しい種類の短距離弾道ミサイルと見られる」と発表した。北朝鮮のミサイル発射は5月9日、平安北道の亀城市(クソンシ)で2発を東海に向かって打ち上げてから77日ぶりのことだ。

 今回の発射には内外の要因が広く働いたようだ。朝鮮人民軍は8月末まで2カ月間、定期軍事演習中だ。金委員長が、性能改善を目的とした今回の発射を直接参観・指導した可能性がある。消息筋は「金委員長が人民軍訓練のために慌しく動いていると聞いている」と話した。実際、金委員長は21日、元山から遠くない咸鏡南道で、人民会議代議員選挙の投票を行っており、「新しく建造された潜水艦」を直接視察した。金委員長の潜水艦建造に関する現地指導を報じた23日付「労働新聞」1面の記事には、韓米を直接狙った警告メッセージは書かれていなかった。その代わり、金委員長が「国家防衛力を増大していかなければならない」と指示したと強調した。金委員長が人民軍と軍需工業まで動員し「経済建設集中路線」を強調することに対して起こり得る内部の動揺と安保への懸念を払拭しようという意図が読み取れる。

 対米・対韓国圧迫行動の性格もある。北朝鮮外務省報道官は16日、8月の韓米合同軍事演習を「6・12朝米共同声明の基本精神に反する」とし、「米国と南朝鮮の合同軍事演習『同盟19-2』が現実化されれば、朝米実務交渉に影響を与えることになるだろう」と警告した。北朝鮮当局が直接明らかにしない本音を一部反映する在日本朝鮮人総連合会(総連)の機関紙「朝鮮新報」は23日付で、「4月22日から5月3日まで、米南(米韓)合同空中訓練が強行され、その直後に朝鮮人民軍の火力打撃訓練(5月4日、9日)が進行された」として、韓米合同軍事演習は「信頼造成の前提を大きく揺るがす朝米交渉の障害要因」だと主張した。韓米合同軍事演習が予定通り強行されれば、北朝鮮が追加軍事行動に出る可能性もあることを示唆したのだ。

 リ・ヨンホ外務相が予想を破り、ASEAN地域安保フォーラム(8月2日、タイ・バンコク)に欠席すると通知したのは、論理上、16日の外務省報道官談話の延長線上にある圧力行動と見られる。リ外務相は当初、タイのほかに周辺2カ国を歴訪する予定だったが、これもキャンセルした。6カ国協議関係国がすべて参加する域内唯一の多国間安保会議体に北朝鮮の外務相が出席しないのは、2009年以降10年ぶりのことで、異例といえる。

 外交安保分野の高官は「朝米の実務交渉と関連し、水面下の調整がうまく進んでいない証拠」だと指摘した。北朝鮮事情に詳しい元高官は「対米圧迫と対立回避の両面があると見られる」と述べた。朝米実務交渉に意味ある進展が見られない状況で、あえて対立する必要はないという判断も働いたという指摘だ。北側の本音が何であれ、6・30板門店会合で「2~3週間以内」に開くことにした実務交渉がいつ開かれるかも予測がつかない状況になったことだけは確かだ。

 韓米合同軍事演習に対する北側の問題提起に前向きに対応しなければ、朝鮮半島平和プロセスに突破口が開かれるのは難しいという懸念の声も高まっている。元高官は「人民軍や軍需工業まで動員し、経済建設に集中する“金正恩流リーダーシップ”の国内政治的正当性の基盤は、南北・朝米・朝中首脳会談による情勢安定で、最も明らかな兆候が大規模な韓米軍事演習の中止」だとし、「金委員長が韓米合同演習に敏感に反応する理由を真剣に考えなければならない」と指摘した。ある元老は「北東アジアが米国対中国・ロシアの覇権争いと韓日のあつれきで揺れ動く中で、朝鮮半島平和プロセスが道を失わないためには、文大統領が決意を持って南北関係の改善を積極的に進めるなど、バランスを取らなければならない」と述べた。

イ・ジェフン、パク・ミンヒ、ノ・ジウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/903397.html韓国語原文入力:2019-07-25 21:37
訳H.J

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