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サムスン電子、“労働者の権利侵害”フランスで起訴

登録:2019-07-03 21:30 修正:2019-07-04 07:45
パリ地方裁判所、サムスン電子フランス法人を予備起訴 
韓国、中国、ベトナム工場で労働者の人権侵害の疑い 
直接的容疑は消費者法の欺瞞的商業行為 
労働環境問題で欧州で起訴されたのは今回が初めて
ハンギョレは4月からサムスン電子アジア主要生産工場労働者の人権および健康、団結権保障の有無を調査してきた。写真はサムスン電子ベトナム・バクニン工場の全景=チョ・ソヨン<ハンギョレTV>ディレクター//ハンギョレ新聞社

 フランスの裁判所の捜査を受けていたサムスン電子が、ついに起訴された。サムスン電子がアジア工場で労働者の権利を侵害していながら、そうではないと偽って広報した疑惑だ。欧州の捜査機関が、サムスンの労働環境全般を問題にして起訴したのはこれが初めてだ。正式裁判に進むことになれば、サムスンは“無対応”で一貫してきた化学物質への露出と労働災害の隠蔽、超過勤務の強要などの疑惑について直接説明しなければならない。

 フランス市民団体シェルパ(Sherpa)とアクション・エイド・フランス(ActionAid France)は3日、報道資料を出し、フランスのパリ地方裁判所が最近、サムスン電子のフランス法人を消費者法違反(欺瞞的商業行為)の疑いで予備起訴したと明らかにした。予備起訴は予審に付する行為を指す。予審とは、裁判所に所属している捜査判事が公訴権行使を前提に犯罪行為者を特定し、当該犯罪の状況と結果を確定する手続きをいう。フランスでは重要な事件の場合、検事は捜査判事に捜査を依頼し、捜査判事が捜査と起訴を受け持つ。予備起訴段階でも控訴をすることはできるが、予審開始決定が下されれば相当数が起訴と正式裁判につながるのが普通だ。ルノー・ヴァン・ルインベーケ捜査判事は予備起訴決定を下し、「サムスン工場で労働者の人権が尊重されていないという疑いが強い」と述べたと伝えられた。

 シェルパとアクション・エイド・フランスは昨年、裁判所にサムスン電子フランス法人と韓国本社を告発した。サムスンの中国工場では児童労働がなされ、韓国やベトナムの工場では労働災害問題が絶えないのに、サムスンが「労働権と人権を保護・増進している」として消費者を欺いたとの趣旨だ。

 これらの団体は告発状で「サムスンはホームページや持続可能経営報告書を通して『すべての労働者の人権を尊重している』『国際基準と国内法を遵守している』と言っている」として「だが、サムスンの労働者の基本権と尊厳が侵害されているという事実は、多くの国際市民団体の報告書やマスコミの報道を通じて証明された」と話した。これらの団体は、このような報告書とマスコミ記事など計87件の資料を裁判所に証拠として提出した。シェルパのサンドラ・コサル事務局長は「最近のサムスンのアジア工場における労働実態に対するハンギョレ報道も裁判所に追加で提出する計画」と話した。

 フランスの裁判所が、多国籍企業の国外工場の労働環境を正式に捜査するのは今回が初めてだ。裁判所の今回の決定について、現地でも「記念碑的な事件」という評価が出ている。シェルパとアクション・エイド・フランスは、2013年と2016年にもサムスンを告発したが、すべて容疑なしで終わるか棄却された。シェルパの活動家のクララ・ゴンザレス氏は「今までは労働者の人権と商業行為とは別個に扱うべきで、もし問題があるとしても韓国本社の責任という理由で棄却された」として「だが、労働人権に対する国内消費者の関心が高まり、今後はそのようには見られないと判断した」と話した。ただし、管轄問題でサムスン韓国本社は今回の起訴対象から除外された。

 フランスの裁判所がサムスンに適用した欺瞞的商業行為の疑惑は、フランス消費者法第112条に該当する。この条項は、消費者が誤解しかねない内容の広告やマーケティングを禁止している。コサル事務局長は「フランスは2017年に大企業の人権実践点検義務を法制化したが、国内雇用規模が5000人以上の企業だけに適用されるので、サムスンのフランス法人は対象でない。そのため一種の迂回方式を探した」と説明した。

 フランスの裁判所は、サムスンのアジア工場の労働環境実態に対する本格捜査に入る展望だ。裁判で有罪判決が下されれば、2年以下の懲役、または30万ユーロ(約36百万円)以下の罰金刑を受けることになる。裁判所が、サムスンがこうした欺瞞的行為で利益を得たと判断すれば、平均年間売上高の10%まで罰金を引き上げることもできる。サムスン電子は2017年にフランスで30億ドルの売上を上げた。 コサル事務局長は「サムスンをめぐる疑惑を一つずつ事実で立証していく過程になるだろう」とし、「サムスンも今回は責任を負うことになると思う」と話した。

 これに対してサムスン電子は、予備起訴された事実自体を否定している。サムスン電子の関係者は「シェルパは3回も告発してこれまで検察が棄却し、昨年末、捜査判事に渡った。その後は変わっていない」と話した。 これに対してシェルパの活動家は「私たちは虚偽の事実を発表しない。サムスンが嘘をついている。彼らのマスコミ対応戦略のようだ」と話した。

イ・ジェヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/900304.html韓国語原文入力:2019-07-03 20:00
訳J.S

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