国家情報院(国情院)がテロ防止法の条項を活用し、出入国情報約3千件などを収集していたことが分かった。テロ防止法は、国情院が「テロ危険人物」と判断した人の出入国情報や金融取引、通信情報、個人情報、位置情報などの収集を認めており、法制定当時野党だった共に民主党がフィリバスター(議事妨害)までして激しく反対した法だ。しかし、共に民主党は政権党になってから、テロ防止法の改正と関連して何の動きも示していない。
■国情院、テロ危険人物の出入国記録など3214件の情報を収集
23日、ハンギョレが入手した国家情報院テロ防止法活用現況資料によると、国情院は2016年3月にテロ防止法が制定されてから先月24日まで、同法第9条を活用し、3214件の情報を収集した。
同条項は、国情院がテロ危険人物の出入国情報や、金融取引、通信情報、個人情報、位置情報などを収集する手続きなどを規定している。特に第9条4項は「対テロ活動に必要な情報や資料を収集するため、対テロ調査及びテロ危険人物に対する追跡を行うことができる」と定めているが、この条項に基づき、特定の人に対して「位置追跡」をしたのも61件あった。
テロ防止法は国情院の傍受権限も拡大した。既存の通信秘密保護法は「国家の安全保障にかなりの危険が予想される場合」に限り、国情院に傍受を認めていた。しかし、テロ防止法により、通信秘密保護法の該当条項に「対テロ活動に必要な場合」が傍受理由として加えられた。国情院がこの条項を活用して傍受をしたのも23件にのぼった。国情院は「傍受の対象は全員外国人だった」とし、「外国人に対する傍受は裁判所の許可がなくても、大統領の書面承認だけで可能だ」述べた。
■国情院の恣意的な運用可能な情報
照会件数が照会した人の数を意味するわけではないが、3千件以上照会したことから、国情院の監視対象になった人の数もかなりのものに達するものと推測される。
問題は、テロ防止法がテロ危険人物の概念を定義しているだけで、どのような手続きを経て特定人物をテロ危険人物に指定するかなどは規定していない点だ。国情院がどんな人物を、どのような理由でテロ危険人物と見なしたかを、他の機関では把握できないという意味だ。法制定当時、野党だった共に民主党もこのような点を憂慮し、当時院内代表だったイ・ジョンゴル議員は本会議で修正案を発議した。
しかし、民主党は与党になってから、テロ防止法の改正に関連していかなる動きも示していない。現在国会にはユン・ジョンオ元民衆党議員とパク・ソンスク正しい未来党議員がそれぞれ発議したテロ防止法廃止案や改正案が一件ずつ上程されている。共に民主党関係者は「国情院改革のため、対共捜査権と国内情報パートの廃止など、大きな枠組みで改革案をまとめているが、こうした状況でテロ防止法は比較的小さな問題であるため、関心が薄いのが事実だ」と述べた。
参与連帯行政監視センターのキム・ヒョソン幹事は「国情院による国内情報収集の禁止や対共捜査権の廃止などが行われるとしても、国情院が恣意的にテロ防止法を悪用する余地は依然として残っている」とし、「与党の共に民主党自ら法廃止に乗り出すべきだ」と述べた。
国情院は「法令と指針に従って審査委の審査手続きを経てテロ危険人物に指定しているため、内国人の査察に悪用される可能性はない。現在まで内国人が指定されたケースはない」という立場だ。