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韓国政府、テロ防止法による特殊部隊の民間投入に不明瞭な釈明

登録:2016-04-19 23:15 修正:2016-04-20 07:12
「テロ防止法施行令」めぐり広がる波紋
2月にテロ防止法成立を阻止するため野党が行ったフィリバスターが国民の関心を集め、国会傍聴席が埋め尽くされた=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

国務調整室、違憲の余地があるとの批判に対応

「対策本部長の指揮は多層的な統制装置」
人権保護官の権限には「議論が必要」

市民団体「戒厳軍の投入とどこが違うのか」
「立法・司法で牽制できる条項もない」

 政府が、テロ防止法施行令に戒厳令のもとでなければ不可能な「軍兵力の民間施設への投入」など、違憲的な内容を盛り込んだとの批判に対し、積極的に釈明に乗り出した。しかし、「国防部所属の対テロ特殊部隊の投入は、一般的な軍の投入とは性格が異なる」とか「大規模なテロが発生した場合、ゴールデンタイム以内に迅速に対応するためには、避けられない措置」とするなど、批判の的にされていることとはかけ離れた回答だと指摘されている。市民社会団体では、「『(政府が)異なるといえば異なる』、『十分といえば十分』と言い張っているような釈明」だと反論した。

 国務調整室は18日、報道資料を通し「国防部所属の対テロ特殊部隊も確かに軍人ではあるが、一般的な軍の投入や郷土予備軍の動員とは性格が異なる」と主張した。「対テロ特殊部隊は一般の軍とは異なり、特別に訓練された専門担当組織であり、現場指揮本部長が指揮権を持つ」というのが主な理由だ。

 しかし、警察と国民安全処(庁)は、すでに治安部隊に当たる対テロ特殊部隊を設けており、特殊な状況を前提に軍の対テロ特殊部隊を投入するのは、それ自体が戒厳に準ずる軍の投入と見なされるべきだと言うのが市民団体側の主張だ。参与連帯のイ・テホ運営委員長は「施行令は、明らかに国防部対テロ特殊部隊を他の対テロ特殊部隊と区分しており、戒厳に準ずる軍の投入と見なさざるを得ない。さらに、軍の民間施設への投入の際に、立法府などの牽制を受けるようにした憲法に反する部分について、政府は(今回も)全く説明しなかった」と反論した。

 政府は説明資料で、対テロ特殊部隊が現場指揮本部長の指揮を受けるようにしたことを「多層的な制御装置」と表現した。現場指揮本部長は長官級の対策本部長が「指名する者」が務める。「民主社会のための弁護士の会」のイ・グァンチョル弁護士は、「行政府に属す長官が『指名する者』に過ぎない現場指揮本部長の制御を多層的な制御と表現したのは、市民社会が指摘した立法・司法の制御の意味を誤って解釈したものであり、実際に軍統制が現場指揮本部長レベルで可能なのかも疑問だ」と指摘した。

 政府はまた、「人権保護官」の権限が十分ではないという指摘に対して「人権保護管の『是正勧告』の権限は国家テロ対策委員長である首相に報告して行われるため、実効性が十分だと判断する」と釈明しただけだ。これと関連し、国務調整室の関係者は、「人権保護管の調査権限と情報アクセス権を具体的にどのように保障するのか」とのハンギョレの質問に、「法的な問題があるため検討している」とし「もう少し議論が必要な事項」だと答えた。施行令が不十分であることを事実上認めたのだ。参与連帯と進歩ネットなどの市民社会団体は19日、論評を出し、「(人権保護管に)人権侵害を調査できる実質的権限がなく、苦情処理の手続きと方法に関する規定もない状況で、是正勧告だけで実効性を確保できるというのは話にならない」と批判した。

パン・ジュンホ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-04-19 19:58

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/740429.html 訳H.J

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