政府が国連傘下機構である世界食糧計画(WFP)を通じて国内産米5トンを北朝鮮に支援する。必要予算は1270億ウォン(約117億円)と推定されるが、「糧穀管理特別会計」(糧特会計)から1千億ウォン(約92億円)、南北協力基金から270億(約25億円)ウォンを充てる。
キム・ヨンチョル統一部長官は19日午後、政府ソウル庁舎で記者会見を開き、「政府は北朝鮮の食糧状況を考慮し、これまで国連世界食糧計画と緊密に協議した結果、まず国内産米5万トンを北朝鮮に支援することにした」と発表した。キム長官は「稲の状態で保管してきた政府の備蓄米のうち、“上級品”を精米し、現物供与する計画」だとし、「(5~9月の春窮期を考慮し)9月以前に届けられるよう最善を尽くす」と述べた。また「北朝鮮に対する追加の食糧支援の時期と規模は、支援結果を見て今後決める」と明らかにした。
今回の発表は、必要量に比べて136万トン(国連世界食糧計画・国連食糧農業機関の共同調査報告書)~148万トン(キム・ソン国連北朝鮮代表部大使)も不足し、「最近10年間で最も深刻な状況」だという北朝鮮の食糧難を考慮した同胞愛と人道主義精神による措置だ。ハノイでの朝米首脳会談以降、膠着局面から抜け出せない南北関係の改善の糸口をつかもうとする“善意の呼び水”だ。
また、「世界食糧計画と国連児童基金(ユニセフ)の北朝鮮への栄養支援・母子保健事業への南北協力基金800万ドルの支援」(6月11日に送金が完了)と、まだ確定されていない「国内産米の大規模な対北朝鮮直接支援」の間にあるかもしれない“長い空白期”の悪影響を減らそうとする足掛かりとも言える。
政府は内部的には「国産米の大規模な対北朝鮮直接支援」の原則を立てているという。政府は5月17日、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、「対北朝鮮食糧支援問題は国民の意見を十分に聴取し、国際機関(国連世界食糧計画)を通じた支援または直接支援など具体的な支援計画を検討していくことにした」として、「対北朝鮮直接支援」の可能性を残した。キム・ヨンチョル長官も「国内産米5万トン」の支援方針を発表する際、「とりあえず」という修飾語を前に付けた。
政府は、食糧支援が必要な理由として、「最近10年間で最も深刻な状況だという北朝鮮の食糧難▽同胞の北朝鮮住民(人民)が経験した生存の問題を無視できないこと▽南北和解協力と同質性の回復に貢献▽国際社会(対北朝鮮)制裁と無関係▽朝米間の信頼と肯定的な雰囲気づくりに寄与」を挙げた。“多目的支援”といえる。
政府が対北朝鮮直接支援ではなく、国際機構を通じた支援カードを12年ぶりに切り出した背景には、国連・米国などの強力な制裁とそれに伴う輸送の困難がある。食料支援は物量が多く、陸路ではなく海上運送が避けられないが、運送船舶と関連し、国連対北朝鮮制裁委員会の「免除決定」を取り付けなければならない。韓国政府が乗り出すより国連の人道主義機関であり、今も北朝鮮で約50人が活動している世界食糧計画が、“制裁の壁”を越えることが相対的に容易だという政策判断に基づくものだ。分配モニタリングも世界食糧計画が担当する。
相対的に価格が安いタイやベトナム、中国産のコメではなく、“国内産米5万トン”を支援することにしたのは、韓国の農民・農業の困難を減らす政策的考慮とともに、農村を地域区に置いた自由韓国党など保守野党議員たちの暗黙的支持を得るための政務的考慮もあるものと見られる。
国内産米は在庫が130万トンに達し、年間の倉庫保管料だけで4800億ウォン(約44億円)を超えるなど、財政の無駄使いが深刻なレベルであり、農民の不満も強い。国内産米5万トンの支援に必要な費用は、統一部が円滑な対北朝鮮政策の遂行に向けて管理・運用する南北協力基金から270億ウォン、国内農業・農民支援目的で農林畜産食品部が管理・運用する糧特会計から1千億ウォンを調達する。予算投入の側面を見ると、国内農業・農民支援の比重が大きい。
政府は今回の支援を足がかりに、遠くない適切な時期に「国産米の大規模な対北朝鮮直接支援」カードを取り出し、世論の影響力の大きい離散家族問題進展を含む南北関係改善の触媒として活用するものと予想される。