政府が人道的目的の対北朝鮮食糧支援を本格的に推進するため、連日、民間団体や宗教界など各界各層の意見収集に拍車をかけている。政府は今週に続き来週、さらには再来週まで、対北朝鮮人道支援に対する必要性をはじめ、時期や方式、品目、規模などに対する市民社会の意見をくまなく聴取し、政府レベルの推進方向を決める方針だという。
統一部当局者は15日、「国連世界食糧計画(WFP)が報告書で5~9月を支援が必要な時期だと指摘した」としながらも、「国民的合意や支持、共感が必要なだけに、国民の意見を集約していく」と述べた。キム・ヨンチョル統一部長官は14日、民間・宗教団体の関係者たちと懇談会を開いたのに続き、同日午前、統一部の人道協力分科政策諮問委員たちとも懇談会を行った。来週までに3、4カ所の大規模教会の牧師らにも会い、対北朝鮮食糧支援に対する意見を聞く計画だ。
政府が当初予定されていた今週以外に意見収集期間を1~2週間ほど伸ばした背景には、北朝鮮が今月9日、短距離ミサイルなどを実験発射するなど“突発要因”が生じたためだという。人道支援に対する世論が悪化したことを考慮し、さらなる世論集約が必要だという判断だ。
これに従い、北朝鮮に対する人道支援の方式をめぐり、政府の悩みも深まっている。方式は大きく分けて、政府の直接支援▽国際機関などを通じた支援▽民間団体に基金の支援の三つだ。政府の直接支援と国際機関・民間団体に基金を供与する方式を並行する可能性もあるが、世論の推移によって直接支援の代わりに国際機関を通じた支援に重きを置くことも考えられる。
当局レベルの直接支援方式は相対的に早く、容易だという長所がある。北朝鮮が韓国政府の食糧支援を受け入れた場合、実際の執行まで通常で1~2カ月ほどかかるというのが政府関係者の説明だ。まず、統一部を中心に関係省庁の協議が終われば、世論集約や国会説明、南北交流協力推進協議会の議決を経なければならない。輸送手段や食料調達方式などを決めれば、陸路や海路などを通じて物資を手渡すことになる。
国際機関や民間団体を通じて支援する道は、政府の直接支援よりも時間がさらにかかるが、北朝鮮が受け入れる可能性がより高く、分配の透明性をめぐる議論など、政府の政治的負担も減る。国連世界食糧計画の説明によると、韓国政府が国際機関に基金を送った場合、実際に食糧が届くまでは通常6カ月前後の時間がかかる。
国内の民間団体を介する場合、団体と政府が資金を共同で出資する「マッチングファンド」の方法がある。政府が民間団体の募金額に連動して支援する方式だ。2006年7月、北朝鮮のミサイル発射で政府がコメと肥料支援の論議を留保するという立場を示した直後、北朝鮮に大きな水害が発生した前例がある。当時、北朝鮮は外部支援に対して消極的な態度を示しながらも、韓国の民間団体と接触して支援を望んでいるという意思を明らかにした。政府は、ミサイル問題とは別に、人道レベルで緊急支援に乗り出すことにし、民間団体を通じてマッチングファンド方式で100億ウォン(約9億2千万円)相当の緊急救援物資を支援した。
国連食糧農業機関と世界食糧計画が共同調査し、今月3日に発表した「北朝鮮の食糧安保評価」報告書によると、ほかの季節より配給量が少ない7~9月には食糧難のさらなる悪化が懸念されるという。7月まで2カ月を切った状況を考えると、直接支援の方式が効果的とも言える。
直接支援品目としては、まずトウモロコシが選ばれる可能性が高く、コメが検討されるかどうかにも関心が集まっている。政府は国内外から調達したコメとトウモロコシを北朝鮮に直接支援したことがある。世界食糧計画などの報告書が北朝鮮の食糧不足の原因の一つとして肥料不足を指摘しただけに、肥料や民間団体が地道に支援してきた小麦粉などが支援品目に含まれるかどうかも注目される。
統一部の2019年度南北協力基金運用計画によると、今年策定された対北朝鮮支援規模は815億3900万ウォン(約75億円)で、コメ10万トンと緊急救護キット8万ボックスで構成されている。政府は毎年、対北朝鮮救護支援のためにコメや肥料などに対する予算を策定してきた。北朝鮮の食糧難などの人道的危機や洪水などの自然災害が発生した場合、復旧と防疫を支援するためだ。規模は予断し難いが、歴代の事例からして、無償支援の場合、国産米0.5万トン(2010年)~15万トン(1995年)規模で支援した前例がある。借款の形を活用した場合は、これまでの最大値は2005年の国産米40万トン、外国産米10万トンだった。