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[ニュース分析]社会的合意の道塞がったILO協約…政府が「法改正-批准」前面に

登録:2019-05-23 06:11 修正:2019-05-23 07:49
ILO核心協約の批准・立法を同時に推進する理由とは 
 
経社労委を稼動し、折衷試みたが 
労使対立で合意案見送られ 
政府、今年の通常国会で批准を目指す 
自由韓国党・経営界の反発で難航予想される
市民社会団体連帯会議や経済正義実践市民連合、「手を携えて」、参加連帯など市民社会団体の活動家らが今月22日午前、ソウル鍾路区大統領府の噴水前で記者会見を開き、国際労働機関の核心協約の批准を求めている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 国際労働機関(ILO)の核心協約の批准をめぐり、一つの難関が解決された。これまで社会的対話を通じた関連法改正の問題が解決されなければ批准できないという立場を貫いてきた政府が、22日に「批准・立法の同時推進」に転じたことで、批准が先か法改正が先かの綱引きは終わった。しかし、関連法の改正をめぐり、労使団体の意見が明らかに食い違っており、国会通過にも難航が予想される。

 イ・ジェガプ雇用労働部長官は同日、政府世宗庁舎で「国会で批准同意案を議論するには、国内法が衝突するかどうかを論議する必要があるが、国内法の整備方向や内容に何の対策もない状態では論議が進まない。(批准と立法手続きを)一緒に進めるしかない」と述べた。これからは政府が主導し、批准同意案と関連法の改正案をまとめるということだ。

 これまで議論は、法改正をめぐる労使政の社会的対話を中心に行われた。韓国が批准しなかった核心協約4件のうち、2件(第87号・98号)が結社の自由と関連したものであるが、解雇者や失業者、特殊雇用労働者、公務員・教員の労組活動を妨げる労働組合法や公務員労組法、教員労組法などにこれと衝突する内容が多いためだ。批准を経た国際条約は国内法と同じ効力があるが(憲法第6条1項)、国内法をそのままにして核心協約を批准した場合、社会的混乱を招く恐れがあり、関連法を先に改正すべきというのが政府側の論理だった。

 議論の過程は順調ではなかった。社会的対話機構である大統領所属の経済社会労働委員会(経社労委)傘下の労使関係制度・慣行改善委員会は、今年4月まで42回会議を重ねた。しかし、労働者の団結権などを保障するなら企業の防衛権も保障しなければならないという経営界の要求に阻まれ、合意案を見出すことができなかった。昨年11月と今年4月の二度にわたり、解雇者・失業者の労組加入を許可する内容の「公益委員案」が提示されたが、労使両方の反発を買った。労使副代表級などが参加した「経社労委運営委員会」でも合意を試みたが、これも失敗した。

 結局、社会的合意が見送られたことを受け、政府が批准に関する方針を変えたものと見られる。国際労働機関が先に批准を提案すると共に、欧州連合(EU)が自由貿易協定(FTA)の締結当時の核心協約批准の約束を守ることを要求し、紛争解決手続きを進めているなど、政府を持続的に圧迫する状況も方針転換に影響を与えたものと見られる。

 しかし、政府が核心協約の批准同意案と関連法の改正案を同時に国会に送ったとしても、処理は容易ではないものと予想される。なによりも経営界が、ストライキの際の代替労働の無制限許容▽不当労働行為に対する刑事処罰の廃止など、経社労委の合意が見送られる原因となった要求を掲げてる。韓国経営者総協会(経総)は同日、「団結権だけを拡大した場合に予想される悪影響と使用者側の懸念が非常に大きい。公益委員案は、経社労委レベルの合意案でないだけでなく、労働界の立場に偏った案」だとし、攻勢を予告した。一方、経社労委に参加してきた韓国労総は「使用者団体が主張してきたストライキの際の代替労働の許容など、核心協約批准と関係ない内容が含まれないよう気をつけなければならない」という立場を明らかにした。民主労総も同じ立場を確認し、「(第1回経社労委の公益委員案に基づいて)国会に提出された既存の法案を廃棄すれば、民主労総は改正案づくりに向けた協議に積極的に応じる用意がある」と発表した。

 さらに、今年の通常国会は来年の総選挙を控えて開かれる予定で、各党が核心協約の批准と関連法の改正が総選挙にどのような影響を及ぼすかをめぐり計算に走る可能性もある。特に、第1野党の自由韓国党が核心協約の批准に否定的だ。所管の国会常任委員会である環境労働委員会のキム・ハギョン委員長(自由韓国党)は同日、「政府が推進するという核心協約の内容は、韓国の労使関係においては、判断や清算が難しい内容が大半だ。『経済大コケ』の文在寅(ムン・ジェイン)政府がこのように軽く動く事案ではない」として、反対の意向をあらわにした。同党所属の環労委員らも記者会見を開き、「悪化する経済状況と最低賃金の急激な引き上げ、強硬貴族労組の横暴の中、協約批准がもたらす影響に関する十分な社会的合意もなく、政府は国際社会からの圧力を理由に、無理な批准手続きを進めようとしている」とし、「核心協約の批准は補完立法が先行される“先立法後批准”の手続きで進められるべきだ」と主張した。

チョ・ヘジョン、キム・ミナ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/894950.html韓国語原文入力:2019-05-22 19:53
訳H.J

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