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7年ぶりに審判受ける堕胎罪…韓国国民は「廃止」に傾いた

登録:2019-04-09 08:20 修正:2019-04-12 10:03
[堕胎罪、存廃論争を超えて] 
 
憲法裁、11日に違憲かどうか宣告 
2012年の合憲決定後、二度目の審判 
 
2010年には「堕胎反対」53%だった世論 
2017年には「堕胎罪廃止すべき」52% 
社会認識・裁判官の交代で結果に注目
先月30日午後、ソウルファイナンスセンターの前で開かれた堕胎罪廃止を求める集会「カウントダウン!私たちが作る堕胎罪廃止後の世界」に参加した市民社会団体のメンバーらが集会を終え行進している=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 堕胎罪が憲法の審判台に再び立つ。憲法裁判所は11日に妊婦の人工妊娠中絶を禁止した刑法269条1項(自己堕胎罪)と医師等の妊娠中絶手術を禁止した270条1項(医師等堕胎罪)に対し、違憲か否かを宣告すると8日、明らかにした。2012年当時、4(合憲)対4(違憲)で合憲の決定が下されてからこの7年間、堕胎罪の処罰が女性の健康権と自己決定権を侵害するという議論は続いてきた。

 特にここ数年熱くなったフェミニズムの波の中で、堕胎罪は女性の身体を国家が統制する象徴的な法条項になった。女性たちは昨年から続く集会で「堕胎が罪なら犯人は国家だ」などを叫んできた。2012年、憲法裁は「自己堕胎罪条項で制限される私益である妊婦の自己決定権が、(当該)条項を通じて達成しようとする胎児の生命権保護という公益に比べて重いとは見られない」とし、合憲だと判断した。

 社会的な流れも7年前とはかなり変わった。世論調査機関リアルメーターが2017年に堕胎罪廃止の賛否について尋ねた結果、「廃止することが望ましい」という回答が51.9%で、「維持することが望ましい」という回答(36.2%)より高かった。2010年にリアルメーターが「堕胎を許容するか」を尋ねた結果、「許容してはならない」という回答が53.1%だったのとは相反する。韓国保健社会研究院が2月に発表した調査では、満15~44歳の女性10人のうち7.5人が堕胎罪条項の改正が必要だと答えた。

 堕胎罪の廃止を巡り、賛成する側も反対する側も合憲が出る可能性は大きくないと見ている。その代わり、違憲性を認めつつ、国会が一定期間までに法律を見直すことを求める「憲法不合致」決定が出る可能性が高いと見ている。刑法上の堕胎罪を完全に廃止する「単純違憲」や「限定違憲」もありうる。

 憲法裁判所の雰囲気も変わった。憲法裁は2012年の決定文で母子保健法について、「妊娠初期の堕胎や社会的・経済的事由による堕胎を認めていないことが、妊婦の自己決定権に対する過度な制限と見ることはできない」と明らかにしたが、ユ・ナムソク憲法裁所長は、昨年9月に国会の人事聴聞会で「妊娠初期の社会・経済的事由による妊娠中絶を許可するよう立法を考慮すべきだ」と話した。このとき社会・経済的事由に挙げられる事項は、子女数、妊婦の年齢、経済的状況、養育条件、親の疾病で、主に妊娠した未成年者や非婚母の妊娠中絶を認めるために取り上げられてきた。

 憲法裁の決定が迫り、堕胎罪廃止の声はさらに高まった。議論の地形も進化した。先月30日に開かれた堕胎罪廃止を求める集会や100日以上続いた憲法裁判所前での1人デモで「(国家の)処罰も許諾も拒絶する」という主張が出た。「胎児の生命権」対「女性の選択権」に二分されたフレームを超えて、女性の体を「統制可能な道具」として見る見方自体を変えなければならないという話だ。妊娠中絶の許容範囲を拡大する「一部の変化」ではなく、処罰条項を廃止する「完全な非犯罪化」、さらには「安全な妊娠中止」への方向転換が必要だという主張が広がった。女性界は「女性の健康と再生産権、市民権など社会的基本権の面から妊娠中絶を全面的に再議論しなければならない」と話す。刑法の処罰条項を前提にした母子保健法の改正も避けられないとみられる。

 「みんなのための堕胎罪廃止共同行動」のナ・ヨン共同執行委員長は「2010年から妊娠中絶をする女性を処罰するなと要求してきた。2016年からは『刑法上の堕胎罪廃止』要求が前面に登場し、『母子保健法』も国家による人口統制の歴史を含む法と認識して、内容と枠組み自体を全面的に変えなければならないという要求へと変化した」と振り返った。

 国連女性差別撤廃委員会も、昨年3月、すべての妊娠中絶の非犯罪化▽処罰条項削除▽妊娠中絶をした女性に良質の医療アクセス権提供を韓国政府に求めた経緯がある。

 女性界は、憲法裁判所が堕胎罪条項の違憲性を認めるとしても、妊娠中絶を認める範囲を一部拡げるやり方に論議が狭まれば、さらなる“レッテル貼り”行為になりかねないと懸念している。「子どもを産み育てられる資格」を女性が自ら証明しなければならず、これを審査し決定する主体は結局国家になるからだ。

 胎児の生命権も「選択的に主張される」という指摘が出ている。刑法は、暴行によって流産が発生した場合、殺人罪、嬰児殺害罪とはみなさない。不妊手術のため体外受精で作られた胚芽にも生命権は認められない。堕胎罪が廃止されれば人口妊娠中絶が増えるという懸念もあるが、ほかの国の現実は違う。世界的な医学学術誌「ランセット」などによると、カナダは人工妊娠中絶に事由や期間の制限はないが、中絶率は可妊女性1000人当たり14件で、世界的に低い水準だ。一方、妊娠中絶を積極的に制限する中南米の中絶率は1000人当たり44件に上る。

 堕胎罪の廃止は、世界的な流れに即している。妊娠中絶を禁止する代表的国家だったアイルランドは昨年5月、堕胎罪を明示した修正憲法第8条を国民投票に付し、35年ぶりに廃止した。国民の大多数がカトリック信者であるアイルランドは、妊娠中絶をした女性に最長14年の懲役刑を下すことができたが、今年からは妊娠12週間以内の中絶手術には制限を置いていない。妊娠中止に関する医療サービスも、国家保険の適用を受けほとんどが無料となっている。

 妊娠中絶誘導薬物の導入国も増えている。すでに世界67カ国が認めたが、現在、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち、これを導入していない国はスロバキア、日本、ポーランド、チリ、韓国だけだ。

パク・ダヘ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/889271.html韓国語原文入力:2019-04-09 07:07
訳M.C

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