韓国で満15~44歳の女性10人のうち7.5人は、人工妊娠中絶をした女性と医療陣を処罰する刑法第269条・270条に対し、改正が必要だと考えていることが分かった。女性だけを処罰するのは不当であり、人工妊娠中絶の処罰によって女性が安全でない環境にさらされるという理由だった。妊娠経験のある女性10人のうち2人は妊娠中絶を行ったことがあり、妊娠中絶手術が可能な医療機関や費用、副作用・後遺症に関する情報が必要だったと答えた。
14日、韓国保健社会研究院(保社研)は、保健福祉部の委託を受けて行なった「人工妊娠中絶実態調査結果」を発表した。2018年9月20日から10月30日まで満15~44歳の女性1万人を対象にしたオンラインアンケートの結果であり、2011年以降7年ぶりに出た実態調査だ。2017年11月、大統領府は「堕胎罪の廃止と自然流産誘導薬の合法化」国民請願の参加者が20万人を超えると、実態調査を行うと発表した。現在、憲法裁判所は人工妊娠中絶をした女性と医療陣を処罰する刑法条項が違憲かどうかを審理している。
回答者1万人のうち、妊娠経験のある女性は3792人(38%)で、756人が人工妊娠中絶をしたことがあると答えた。妊娠経験者全体の19.9%だった。研究陣はこの数値を基に、2017年の人工妊娠中絶の件数を約5万件と推定したが、2010年の推定件数である16万8738件に比べ、大幅に減少した。保社研のイ・ソヨン研究委員は「コンドームの使用率は2011年の37.5%から昨年は74.2%へと上がるなど避妊率が上昇し、救急(事後)避妊薬の処方件数の増加や満15~44歳の女性の人口減少のため」と説明した。しかし、人工妊娠中絶に否定的な見方が多い社会の雰囲気を考慮すると、実際より少なく集計されただろうというのが専門家らの予想だ。正確な実態把握のためには、処罰を免れる条件で産婦人科の全数調査などを考慮してみなければならないという提案も出ている。
人工妊娠中絶を行った理由(複数回答)としては、学業・職場など社会活動に支障を来すため(33.4%)▽経済事情から子育てが厳しいため(32.9%)▽希望していなかったり、(きょうだいの)年の差の調整など家族計画(31.2%)などが挙げられた。現在、このような社会経済的要因による妊娠中絶はすべて違法だ。母子保健法は妊娠24週間以内に優生学的・遺伝学的な精神障害や身体疾患、強姦・近親相姦による妊娠など極めて制限的な理由でのみ本人・配偶者の同意を前提とした妊娠中絶を認める。このような母子保健法の改正が必要だと回答した人は48.9%だった。
妊娠中絶をした756人のうち、手術を受けたケースは682人(90.2%)、ミフェジンなど自然流産誘導薬や子宮収縮誘発薬物使用者は74人(9.8%)だった。薬物を使った74人のうち53人は、医療機関で追加の手術を受けたことが分かった。人道主義実践医師協議会のユン・ジョンウォン女性委員長は「現在、ミフェジンなど薬物を利用した人工妊娠中絶が違法であるため、陰で確認されていない薬物を使用したり、正確な服用量を案内されず健康を害している可能性がある」と指摘した。
「みんなのための堕胎罪廃止共同行動」はこの日、「人工妊娠中絶を犯罪とするために、女性たちが医療機関に接したり医療情報の提供を受けることに深刻な困難を負っている」とし、「堕胎罪の廃止は妊娠中止を望む判断を誰も審判できないという宣言であるだけでなく、究極的に人工妊娠中絶率を下げることに貢献するだろう」との立場を明らかにした。